第9話 初依頼が恋愛相談?

授業が終わり帰る支度を済ませた俺は家に帰るため急いで昇降口へ向かう。最近思う存分ゲームが出来なかったため早くゲームがしたい。


「...どうして俺はここにいる」


今居るところは他でもない部室だ。運悪く帰る途中に二葉とばったりあってしまったのだ。というよりはあいつ絶対待ち伏せしてたろ。


「どうして帰ろうとするの?今日からやるって昨日いったじゃん!」


それは知っている。だけど俺にもやらなきゃいけないことはある。もちろん前買ってきたゲームだ。


「いやー、今日急に用事が入って...帰ってもいいか?」


「却下」


ですよね。


「とりあえずお姉ちゃんが来るまで暇だから何か話そっか」


俺はお前と話すより早く家に帰りたい。


「そういえば、なんでこの学校に転入したんだ?お嬢様なんだからもっといい学校なんていくらでもあるだろ」


これが最大の謎だ。こんなお嬢様がなぜこの学校にきたのか。


「あぁ、やっぱり気になる?まぁそうだよね。えぇとね、一言で言えば家の事情ってやつかな?」


「そうか」


まぁ、白鷺財閥ともなればそういうこともあるか。あまり首を突っ込まない方がいいな。めんどくさそうだし。

他に話題はないか考えていると二葉がじっと不思議そうに俺を見ていた。


「どうした?」


「気にならないの?家の事情ってなんだよ、とかさ」


「聞いて欲しいのか?」


「いや、そういう訳ではないけど普通気にならない?」


気になるかどうかって言われれば少しは気になるが、こういうのは大体重い話だ。ソースはギャルゲー。


「別にどうでもいい。話を聞いたところでどうもできないしな。話したくなったら話せばいい。俺から聞くことはないから」


きまった。ちょっとクサイことを言ってる気がするがまあいいか。よくみると二葉の体がプルプル震えていた。なんだ?


「あはははは、あらた君ちょっとその発言はクサイよ。しかもちょっとどや顔だし」


「うるせーな、別にいいだろ」


くそ、こいつ...せっかくいい感じにまとめたのに笑いやがって。


「ごめんごめん。他の人たちにも同じ質問されたけど、どうでもいいって言われたのは初めてだよ」


「そうか?」


「そうだよ。あらた君は面白いね、気に入ったよ」


「別にお前に気に入られるためにいった訳じゃないぞ」


そう。別に気に入られようといった訳じゃない。他人と深く関わりあってもいいことなんてひとつもない。中学でそんなことは嫌というほど学んだ。


「あらた君みたいな私たちに無関心な人だらけだったらいいのにね」


「ん?なんか言ったか?」


「なんでもないよ」


なんか小さい声でなにか言っていたような気がしたが気のせいか。


ガラガラガラ


二葉と一通り話し終わると一葉が部室にやってきた。


「待たせてごめんなさい、相談箱を回収して遅れたわ」


一葉の手には相談箱があった。結局相談箱は俺が作ったやつを採用したらしい。因みに一葉が作ったやつは、いらないからと押し付けられたので自分の部屋に置いてある。


「で、相談箱には入っていたのか?」


はいっていないことを願い一葉に聞く。初日だし入ってないだろう。


「もちろん、入っていたわ。改めて部活の内容を確認するわ」


相談箱に入っている内容を3人で解決するという単純な作業。意見が別れた場合多数決をとって決める。3人とも違う意見でどうしても決まらない場合は何かしらの形で決める。これはおそらくじゃんけんとかだろう。決まった場合は本人を直接この部室に呼び結果を伝える。というものらしい。


「とりあえずこの流れで行くわ。今日は一件だけだからそうね、相談はこれから二葉に読んでもらうことにするわね」


「了解!」


「あぁ、それでいい」


一葉は1枚の紙を二葉に渡し、二葉はコホンとわざとらしく咳をし読み上げる。


「1年生A組の伊藤と言います。今回は恋愛相談をしたくて投書しました。私は今好きな人がいます。その人は幼なじみで小さい頃から一緒に遊んだりして今もよく遊びます。しかし、彼は私を恋愛対象として見てくれていない気がします。どうしたらその気になってくれるでしょうか、以上!」


「しょっぱな恋愛相談かよ...」


「今回はあらたに一任するわ」


「あらた君!頑張れ!」


こいつら考える気ゼロだ。


「いやいや、お前らも少しは考えろよ」


「恋愛なんてしたこともないし相談なんてされたことないわ。それにあらたこういうの得意じゃない」


「そうだよ。あらた君そういうゲーム沢山してるんだから余裕じゃない?」


「あのだな、ゲームと現実は違うんだよ。ゲームは選択肢とか色々あるから...一緒にされても困る」


恋愛ゲームっていうのは選択肢があるから楽しめるのだ。選択肢があっていれば絶対に結ばれる。バッドエンドになってもやり直せるから面白いのだ。...仕方ない。ここはあれを使うしかないか。


「...そういえば俺は部長だったよな。部長の権限でルールを追加する。依頼に対して必ず1人1つは必ず意見を言う。異論は認めない」


どうだ。俺を部長にした報いをうけるがいい。


「...あなたって卑怯ね。こういうときだけ部長だなんて」


「そうだ!そうだ!卑怯だぞー」


「俺も意見を出すんだ。卑怯ではない。これは公平なルールだ。俺は部長、だからな」


とりあえずこれで俺だけ苦労することはなくなった。


「わかったわ。じゃぁ10分後意見を言い合いましょう」




「10分経ったわ。じゃぁまずは二葉からお願い」


「はーい、私はもう告白すればいいと思うよ。あたって砕けろってやつ!」


砕けてどうする。どうやら一葉も同じことを思ったらしくため息をついていた。


「では私の意見を言うわ。私は諦めた方がいいと思うわ。話を聞く限り別の人を探した方が効率的だもの」


諦めるってお前、それじゃぁこの依頼の意味がないぞ。


「それじゃ、あらたの番よ」


「あぁ、俺の意見はだな、まず意識改革が必要だと思うんだ。要はアピールだな。恐らくこの伊藤さんって人は遊びに誘うとき、遊ぼうと言って誘っている。それではダメだ。遊ぼうではいつまでたっても友達止まりだ。そこで、"デート"にいこうとか、それが難しいなら"2人"で出掛けようとか意識させる必要があると思う。そうすれば多少なりとも意識するだろう。あとは少し強引だが二葉が言っていた通り告白するのも手だ。勿論返事は"後でいい"とかいっておく。そうすればその幼なじみも意識してくれるだろう。あとはその幼なじみ次第だな」


ギャルゲーで使えそうな部分だけを組み合わせただけだが、まぁこんなところか。


「......」


「......」


なぜ無言になる。変なこといったか?やっぱりゲームの知識は偏るのか?


「あなたって意外と考えてるのね。思ったより筋が通ってて驚いたわ」


「そうそう!あらた君って以外と乙女チックだね」


なぜか貶されてる気がする。


「いいだろ、別に。で、どうするんだ?皆意見違うからじゃんけんとかするのか?」


「いいえ、今回はあなたの意見を伝えるわ。二葉も問題ないわね」


「うん!あらた君の意見で賛成!」


「じゃぁ明日の放課後にこの意見を伝えるわ。...にしても、めんどくさがってた割にはしっかり考えてたわね」


「だよねー、ちょっと感動しちゃった!」


「うるせー、今日はもう終わりだろ。先に帰るぞ」


恥ずかしくなって足早に去ろうとすると


「お疲れ様」


「じゃあねー、あらた君」


「...おう」


そういえば女子とこんな風に別れたのっていつぶりだろう。たまには悪くもないな。

そう思いあらたは部屋をでるのだった。

































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とりあえず俺は平凡な人生を送りたいんだが 水城しゅう @shi_ki

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