第2話 噂の転入生①

"キーンコーンカーンコーン"

聞き慣れた朝のホームルーム開始のチャイムが鳴り響く。号令と共に着席し、いつものようにもうそうをする。内容は"突如学校に武装集団が現れ、それを俺がシャーペン片手に蹴散らす"というものだ。男子高生なら誰もが考えたことのある設定だろう。

ちなみに俺の席は窓際の一番奥という素晴らしい席だ。俺は朝のホームルームを満喫し、ホームルームが終わると突如背後から衝撃がかかってくる。何事かと振り返る。


「よっ!」


「なんだ、お前か武」


神崎かんざきたける。こいつは中学からの付き合いで唯一俺の秘密を知っているやつだ。金髪で耳にはピアスをつけていて、如何にもバカそうなやつだがこう見えて勉強ができる。しかもモテル。いまいましい。あとお前遅刻だ。


「...お前今失礼なことかんがえたろ」


と、武は自分の席(俺の前)に座ると、


「なぁ知ってるか?噂だが、俺たちのクラスに転入生がくるってよ。なんでもあの白鷺しらさぎ財閥ざいばつのお嬢様らしいぜ。」


"白鷺財閥"と聞いて、何それ?という人はいないだろ。金融をはじめ、食品、建設、病院、鉄道など多くの事業を手掛けており、日本で白鷺財閥にお世話になってない人はいないだろう。でも一つ気になることがある。


「そんなお嬢様がなんでうちの学校に転入してくるんだ?」


俺たちの通っている鷺ノ宮高校は普通の私立高校であり、お嬢様が通うような学校ではない。しかもそんな"超"がつくほどのお嬢様が転入するなんてにわかには信じられなかった。


「まぁ噂だからな、俺だってそこまで信じてないよ」


武はそういうと、トイレ行くわといい教室をでた。あそういえばそのお嬢様とやらはいつ転入してくるんだろう。そんな事を思いながら1限目の準備にとりかかった。




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