第2話 普通のJKだけど停学になる
私はN県K原学園の職員室に居た。
担任であるらしい30代半ばであろうか、他の先生から斎藤先生と呼ばれる男の人が、異形の物でも見るような、信じられないと言いたげな目で私の正面に座って私をまじまじと見ている。
他の先生らも他の仕事をしているようではあるが、明らかにこちらに注意を向けている。
─ものすごく気まずい・・・
─まぁ今日やった事を考えればそれも仕方ないことかもしれない。
今日の出来事を振り返ればこうである。
昨日は学校が既に始まっていたことを知ったが、遅刻確定だったし何となく行くのが面倒でサボってしまった。
今日こそはと思い、母のふざけたボケも華麗にスルーして朝の準備をし、遅刻しないよう普通に家を出て電車に乗った。
しかし、電車でふと考えた。
─いやぁ、学校行きたくない。出だしで躓いた私は絶対浮くよ
─何かサボれる方法無いだろうか
─相変わらず負のスパイラルだな
そうやって思案を巡らせている内に、学校の最寄り駅についた。
特急も止まるこの駅は非常に大きく片田舎ではあるが人も結構多い。
どうにも学校へと足の進まない私は駅前できょろきょろしていると、駅前に汚いうらぶれたパチンコ屋があるのを見つけた。
パチンコ屋を見た時、深夜に流行の終わった芸人達がパチンコの番組をやっているのを思い出した。
父が日本にいた時、たまにパチンコから帰ってきておもちゃを買ってくれたっけ。
そして私はこう考えたわけである。
─せっかく、高校生になったわけだしパチンコでもやってみるか!
─善は急げだ、こんな腐ったパチンコ屋ではなく大きなパチンコ屋へ行こう
そう考えた私は、駅にUターンして逆方向の電車に乗った。
反対側のホームには私と同学年であろう初々しい子らや、先輩であろう慣れた感じのいかにも女子高生!って感じの人たちが電車を降りていた。
─逆方向に向かう私に目線が向いている気も若干するが気にしても仕方ない。
どこに大きなパチンコ屋があるかは通ったことがあるから知っているのでそれより、どんな風に遊ぶのか調べてみよう。
そう思い、"パチンコ 初心者"などで調べてみる。
─球を借りるの?何それ。意味わかんないんですけど、それは返さないといけないの?設定って何よ。いじれるの?5号機終わりって言われてもその前も後も知らないし・・・
などと、様々な不安がよぎる。
そんな中、とあるサイトで、
ガキはバ○リスクでも打ってろよwwwwww バ○キッズwwwwww
といった書込みを見つけた。
─シ○ルイは読んだ事あるけど、バ○リスクは読んでないな・・・
─忍者の話ってのは知ってるし、言われた通りガキだしバ○リスクをやってみよう!
そんなどうでもいい決意をしていると大きなパチンコ屋がある最寄り駅についた。
改札を出て店の前に行くとヤンキーやら汚いおっさんが並んでいた。
─いやぁ、さすがにJKとしてここに並びたくないな・・・
怖くなって行くのを躊躇ったが、ここに来て今更学校に戻る訳にもいかないので、コンビニでマンガを読み時間をつぶした。
時間をつぶして店に行くと、既に汚いおっさんらがいなくなっていたので店が開いたって事だろう。
─何もわからないけど大人になった気でバ○リスクやってみますか!
そう思い店に入った途端、けたたましい音にビックリして立ちすくんでしまった。
そうこうしているとどこからか店員がすっ飛んできた。
何歳ですか!?その制服、K原学園の高校生じゃないですよね!?身分証見せてください!
矢継ぎ早に遊んでそうな20代くらいのチャラそうな男性店員から質問される。
─15歳で身分証も何も持ってないよ・・・
─そういえば学生証まだ貰ってないや・・・
持ってないですとやかましい中答えると、この騒音の中聞こえたのだろうか店員は踵を返してどこかに行ってしまった。
何が何だかわからず怖くなった私が店を出ると目の前をパトカーが通り過ぎる。
─こうして警察に補導され、パトカーで学校に連れて来られ、現在職員室にいる訳である。
職員室で斎藤先生が重い口を開いた。
「ヤンキー学校ならともかく、うちみたいな普通の高校で入学式もオリエンテーションも来ずにパチンコ打ってたなんて女子高生は先生も初めてだぞ。」
私がすかさず反論する。
「まだやってません!やってみる前に帰りました!それに入学式もいつか知らなかったんです!」
先生がため息交じりに話す。
貧乏ゆすりをしているのはイライラしているからだろうか。
「警察の方から聞いたけど、バ○リスク打とうとしたんだって?勝つ気満々じゃないかよ・・・
それに入学式がいつか知らないってのは言ってる意味が理解できんよ。」
─バ○リスクは作品をちょっと知ってたからだけですよ、勝つとか負けるとかよく知らないですし
─入学式も母が教えてくれてたらちゃんと行ったもん
そう反論しようとしたけど、分かってもらえないだろうし余計イライラさせるだけだろうから言うのはやめた。
押し黙っていると、先生が話を続ける。
「本当は退学もんだけど、まぁ今回はとりあえずやってないってのを信じるから、停学処分でって進路指導の先生と話し合ったから。」
─は?
固まってしまう。
全くついていけてない状態で先生が続ける。
「とりあえず1週間の自宅謹慎と反省文ね。
今日のところはもう帰りなさい。先生から電話で保護者の方には話しておくから。」
そう促される。
─あー、今日も学校いけないパターンか。いや、学校は行ったな。クラスに入ってないってだけね。
そんなどうでも良いことが頭を駆け巡る。
「さ、じゃあ今日は家に帰りなさい。橘さんにも電話するからちゃんと自宅でおとなしくしてなさいよ。」
またも帰れと言われたので、もはや反論の余地なく仕方なく席を立ち出口に向かう。
どうも周りの先生からの目が気になる。
出口の扉を開けたくらいで後ろから、
「斎藤先生も大変ですね!問題児ばかりのクラスで!」
「いやー、参っちゃいますよ。」
などと、声が聞こえてきた。
─今更どうでもいいか!もうどうにでもなれ!
と思い、職員室を出た。
保健室登校でも無ければ、登校拒否でもなく、職員室登校って何なんだろうと考えながら学校を後にする。
母には何を言われるだろうとビクビクして帰ったら、母からは
「あんたが捕まった店は出ないわよ、バ○リスクなんて朝から並ばないで打てるわけないでしょ。」
と言われただけで拍子抜けしてしまった。
─そんなの知らないし、先生か警察か知らないけど遊ぼうとしたものや何処の店までかは話す必要ないじゃん・・・
─もう良いや。今日は疲れたし何だかもやもやするから、RD○2のゲームでもやって、人を縛り上げてワニに食べさせよう。
それで今日はすっきりしておしまいだ。
JKだけど学園生活が上手くいかない件 @mechashiko
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