第3項 『下調べはきちんと行ってください』
『街』というものは、人々が密集しており物資や食料で溢れているもの。
厳しい自然環境の中を生き抜くモンスターたちにとっては脆弱な人間も含め中のあらゆるものが貴重なエサになり得る、魅力的な宝箱なのだ。
しかし、宝箱というものは得てして手に入れるのに命の危険を伴うもの。
人々が密集しているところにモンスターが入っていったところで、殺されてしまうのがオチだろう。
なのでそこらの雑魚モンスターが街を襲ってこようとすることなどほとんどない。
しかし、小型のモンスターならば偶然紛れ込んでくるという可能性は大いにある。
そのため街は通常、危険なモンスターなどの侵入を防ぐために分厚い壁で囲まれており、日々点検や補修が行われている。
白くゴツゴツした石材を上手く組んで作られた立派な外壁が存在する。
ラウンドの街を真上から見たら綺麗な円形になっているそうで、職人たちの素晴らしい建築技術が垣間見える。
そんな外壁には合計12の門がついており、普通人々はそこから出入りすることになっている。
歩きの人々には制限はないのだが、馬車など大きな荷物の出入りを行う時は荷物の中身の厳重なチェックと街中で発行する入退場許可証の提示が必要になる。
これは危険物や、オーレン国特別管理物の対象に指定されているモンスターや資源などを街中に持ち込むのを防ぐためのルールで、オーレン王国が管理できている全ての街で実施されている。
食料一つ取りにいくだけでも、荷車に乗せなければならないほどの量ならば面倒な許可証発行の手続きが必要なのだ。
というわけで俺とウェイライはその面倒な手続きを済ませるため役所まできたわけなのだが。
「…思ってたより人少ないですね。『繋がりの街』なんて言われてるくらいだから役所も人だかりができてると思ったのに」
中の様子を見たウェイライが呟いた。
「お前、本部から来たんだろ。確かにここはそこそこ大きな街だがさすがに王都と比べられると霞むさ。それに今の時間帯は荷物を降ろす作業のほうで忙しい。人なら街の中に集中してるよ」
とは言ったものの、たしかに普段より人が少ない。
ここ最近異常発生している、馬車を襲うゴブリンの群れの影響で物資の行き来が滞っているのも影響しているのかもしれない。
(道中は気をつけて行かないといけないな。ドラゴンならともかくゴブリンに殺されるなんて不名誉もいいところだ)
そう考えながらふと横を向くと、俺の心配をよそにウェイライは途中で買った棒状のパンに必死でかぶりついていた。
「ふが…ふごふごふごっ!あがが!!」
「そのパンはラウンド名物『フリムグルー』って言ってな、オーレン1固くて重たいパンと称されてる。スープと一緒に食え」
「なんで買う時言ってくれなかったんですか!食べられませんよこんなの!」
とは言いつつ一生懸命にかじり続けるウェイライ。
フリムグルーを単体で食べようなどと、手に持った時点で諦めてしまう人がほとんどなのだが。
そのチャレンジ精神には感服させられる。
「全く、頼もしい後輩だよ」
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