第7話

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 長いこと走らせ続けてきた車のエンジンを止めると、俺は目の前に建つ年季の入った日本家屋を眺めた。



「相変わらず、ボロいな……」



 中学まで自分が暮らしてきた家を見つめてそう呟くと、車から降りて玄関先へと続く道を歩き始める。



 ———コツンッ



(ん……?)



 何かを蹴飛ばしたような感触に、俺は自分の足元へと視線を落とした。



(これは……)



 地面に転がっていた靴を拾い上げると、マジマジとそれを見つめる。



(……っ! やっぱり、そうだ!)



 この靴は、あの時智に井戸の中へと捨てられたもの。



(何で……これが此処に……?)



 やっぱりあの時、智は井戸になど捨てていなかったのだろうか? そう考えてみるも、それでも今になってこの場所にある事が不思議でならない。



(——! きっと、あいつらだ……っ)



 俺が帰ってくると知った司か隆史のどちらかが、また俺に嫌がらせをしているに違いない。

 


(……あの時、やっぱり井戸になんて捨てずに持ってやがったんだ)



 十年経っても変わらない関係にウンザリとしながらも、明日の告別式で恥でもかかせてやろうとほくそ笑む。


 田舎から出た俺は、母親に楽をさせたい一心で猛勉強をした。その甲斐あって、ストレートで有名大学へと進学すると、そのまま大学を卒業して一流企業へと就職をした。

 

 そう——今の俺は、昔とは違う。


 足元の高級な革靴を眺めてフッと鼻で笑うと、俺は手の中にある薄汚れた靴を遠くへと放り投げた。


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