10−1 おブンガク①

「まってホート! このままじゃあんたの魔法ゲージがゼロになっちゃうよ!」


 セリーヌは叫んだ。こんな残業になるなんて! しかも命をかけた!


「ふんぐおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 セリーヌの声は聞こえていたが、ホートは魔力をゆるめることはできなかった。

 ここで負けてしまったら、パーティー全員が死んでしまう! みんなを、家に帰してあげたい!

 守らなきゃ!

 みんなを!

 セリーヌを!

 守らなきゃあああああ!!!!!!!!


「むぁけてっとぁまるくわああああああああ!!」


 ドーーーーーーン!

 ドラゴンの炎よりの強い炎魔法!

 ぐあっしゃああああああああ!!

 ドラゴンがぎゃあああああああと雄叫びをあげた


「いまだ」


 満身創痍となり倒れていたハッコが弓矢を放った。

 矢の先には封印魔法がほどこされているのだっ!

 矢がドラゴンに刺さった。

 ドラゴンの地面が光を放つ。

 巨大な魔法陣が出現し、光がばーんとあたりを包む。


「彼方より…とうらいする…聖なる光りよ……麗しき女神の…契約をもって、その邪悪なる魂を……無に帰せ!」


 地面に這いつくばりながらゴギはとなえた。


 ごっごっごっごっ! どっしゃああああああああんんんん!!!


「ひいっ! ひいい!!」

「やりましたわ!」


 スーとナーはただ抱き合ったまま、このありさまをながめていることしかできなかった。


「ホート!」


 セリーヌがホートのもとに駆け寄った。

 ホートはまっしろになっていた。最強魔法『紅蓮大菩薩』をレベル12でありながらとなえてしまったのだ!

 命のともしびが消えかけている!

 このままではホートの命が…あぶない!


「早くスー、治療魔法を!」

「待て! ここから脱出することが先決だ!」


 リーダーであるゴギが冷静にいった。


「瞬間移動だ、このダンジョンから脱出する!」

「待ちなさいよ! すぐに助けなきゃ! スー! 脱出より治療が先よ!」

「私情を挟むな! セリーヌ!」


 このままではくずれゆくダンジョンとともに、全員がおだぶつだ。

 ゴギはリーダーとして正しい判断をしていた。


「癒しの精霊たちよ…数多の地上の生命体たちよ…」

「スー!!!」


 なんてことだ。

 自分のいのちよりも、ホートの命を選ぶのか!!

 どどどどどどどどど。

 天井が崩れ落ち出した。


「リーダー、ホートは俺たちの大事な同僚なんだ……会社がクソなんて、どうでもいい。俺たちが最高なら、それでいいんだ……」


 ハッコがくちをひらいた。


「……むむむ」

「そうですわ! みんなでここから抜け出さなくちゃ! クエスト達成の意味がないですわ! スーの回復呪文はあと十秒で完了しますですし、そのあとすぐさま移動魔法をすればわたしたちは地上へでられますわ!」


 ナーがいった。


「そんな時間があるのならな……」


 ゴギは自分が死んでしまうことを意識していた。

 そのときだ。

 ホートのからだが突然発光しだした。


「なんだこれはっ!」

「わかりません!」

「こいつ、まさか……」


 ゴギはびっくりしてしまい、つぎのことばがだせない。

 こいつ、ただの低レベルの黒魔道士だと思っていたら、魔族の生まれ変わりか??


 ぴしゅうううううううう!!!


 ナーの肩にいた小動物型魔獣「ひろっぴい」が雄叫びをあげた。

 そうだったのか!

 こいつは、ホートは永遠の命をもっている!

 自己回復しはじめている!


「セリーヌ! 回復魔法はムダだ! 今すぐ脱出だ!」


 なにがおきたのかわからず呆然としてしまったセリーヌははっとわれにかえった!


「金色の翼をもつ時間の神々よ…わたしたちにみらいの希望を…」


 スン……!


 六人は降り注ぐ金色のエナジーによって見えなくなった。


 がしゃがしゃがっしゃーーーーーーん!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る