「隠された真実」

「これは一体どういう事だ……」


あれから単独で水谷昂の生家へ立ち寄り、彼の家族から見聞きした事実に双葉は戦慄した。

彼の生家は近江町の外れにあった。

現在も彼の両親がそこに住んでいたので、詳しい話を聞く事が出来た。

鳴海柊太の話では、水谷昂は画家になる前からずっと離別に異常なまでの恐れを感じている繊細な青年だったという。

だが、彼の両親はそれを否定した。


昂は昔から少し変わった価値観を持ち、風変わりな物言いをする事もあるが、本質はとても明るく、大雑把で大胆。とてもそのような性格ではないと笑った。


話に聞いていた水谷昂と真逆の人格のようだ。


これには双葉も困惑するしかなかった。

まさか彼の両親が嘘を言っているわけではないだろう。

彼らに嘘をついて得をする事はないのだし、彼の失踪で不安な中、より混乱させる事もないだろう。


「という事は鳴海柊太が嘘をついているという事か?何故だ…」


あの時の柊太の様子は本当に心から彼を心配しているようだった。

もしかすると、双葉は何か根本的な何かを捉え間違っているのかもしれない。


「…………くそっ。はぁ。訳が分からない」


双葉は改めて今出てきた水谷家を見上げる。

彼の生家は二階建ての木造住宅だ。

白い壁に青い屋根。窓は台形の出窓が二つ。そこにはレースのカーテンの向こうで観葉植物の葉がチラリと覗く洒落た外観だ。

だが双葉はその外観を見て眉間に皺を寄せた。


「この家……何か不自然だな」


一見すると家相的には何も引っかかるものはない。

それは細かく見ると、やや欠点はあるものの、まぁその欠点を補える相もあるのでそれ程悪い家相ではない。


だが何かが引っかかる。

そう感じながらもそれが具体的に何なのかが分からない。

双葉は軽くため息を吐くと、再び表情を引き締めた。


「やはりここはもう一度鳴海柊太に会う必要があるな」


いつもだったら隣にはれむがいた。

今はそのれむはいない。

ずっとこれまでは一人でやって来たのに、今ではれむの存在が当たり前のようになっていた事に気づき、双葉は自嘲気味に視線を伏せた。


その時、歩き出した双葉の影を確認するように背後から何かが動き始めたのを彼が気付く事はなかった。


この時、気付くべきだったのだ。

水谷昂の生家に感じた違和感と彼の両親からの言葉に……。


そして双葉の影を追うように現れた不思議な気配は静かに近づいてきた。






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