その49 三毛猫ホームズの駆落ち
「三毛猫ホームズの駆落ち」は赤川次郎四十七作目の本、三毛猫ホームズシリーズ第六作にあたる。1982年に光文社から発行され、のちに角川文庫・光文社文庫の両方から文庫が発売された。
ある地方の大富豪、片岡家と山波家は代々犬猿の仲で知られていた。しかし、片岡家の長男義太郎と山波家の長女晴美が相思相愛の仲になり駆落ち、両家の関係はますますこじれる羽目に。それから12年、片岡家の三男と山波家の息子が殺し合い相打ちになるという事件が発生。そこから次々と事件が起こり、関係者は義太郎と晴美の行方を捜索するが…。
登場人物の名前で察せるように、シチュエーションで完全に掴みにかかる設定のお話である。レギュラーキャラである片山と晴美が駆落ちしたカップルと間違えられるという展開が何度も“天丼”されるのは、ベタではあるがやはり笑える。石津にまで誤解されイライラする片山のシーンなどはしみじみとやはり面白いのである。
だがそのシチュエーションに反して起こる事件はかなり陰惨であり、そのアンバランスさが良くも悪くもこの作品の特徴ではある。率直に言えば良くの部分より、悪くの方が多少上回ってしまっているかもしれない。コメディの部分と事件の部分がこれまでにないほど差が激しいため、赤川次郎的なものに慣れている読者ですら戸惑うのだ。
ただ、途中「このキャラ死んでほしくないなあ」と読者が無意識に思うであろう人物を容赦なく殺してしまうあたりなどはさすがだなと思う。また真犯人の邪悪さもなかなかのものなので一読の価値はある。
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