その45 女社長に乾杯!
「女社長に乾杯!」は赤川次郎四十四作目の本。1982年に新潮社から発行され、のちに新潮文庫に上下巻で収録された。2015年には角川文庫に全一巻で改版が発売されている。
尾島(おとう)産業株式会社はある日突然倒産し、社員たちは途方に暮れる。しかもそれは社長の尾島一郎および重役たちが経費削減と人員整理のために決めた計画倒産だった。しかし倒産の協力者であるメガバンクの重鎮・大畑は倒産の直後に頭を強打してしまい錯乱。再建案としてクビ筆頭候補だった入社二年目の19歳のOL、桑田伸子を新社長に指名してしまう。お茶くみとコピー取りが日常だった伸子は、女社長として大騒動の中に巻き込まれるが、持ち前の真面目さと周囲の協力で社長業に邁進していく…。
赤川次郎は短編・長編問わず会社とサラリーマンを中心にした話を数多く発表しているが、その中でも最もエンタテインメント方面に振り切った物の一つがこの作品だろう。19歳の女性が突然社長になるだけではなく、冴えない万年係長が部長になり、元社長や重役たちは全員平社員になってしまうあたりのコメディものとしての冴えや、新社長を中心に奮闘していくお仕事ものとしての面白さ。そこに殺人事件まで絡めてくるのだから詰まらない訳がない。
尺に関しても今作は文庫版で550ページ超えとたっぷりあり、キャラ描写も赤川次郎節全開フルスロットルで詰まっている。色んな感想を持つことはあっても、退屈だけは絶対感じさせない。事件の犯人に関しては赤川作品特有の手癖が出てしまっている感じはあるが。
純粋なエンタメ作品から教訓めいたものを無理に引き出す必要はないのだが、今作をはじめ赤川次郎のサラリーマンものには、一定の共通点があるように思う。それは、会社なんて人生や命を賭ける程の物ではないという事である。
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