その41 三毛猫ホームズの恐怖館
「三毛猫ホームズの恐怖館」は赤川次郎四十七作目の本、三毛猫ホームズシリーズ第六作にあたる。1982年に光文社から発行され、のちに角川文庫・光文社文庫の両方から文庫が発売された。
刑事の片山・妹の晴美・そして三毛猫のホームズは偶然巻き込まれたガス爆発事故の現場で殺害された女子高生の死体を発見する。一方、その女子高生が通っていた上志学園高校には女子禁制の怪奇クラブがあったが、そのクラブに一人の女子高生が接近する…。
赤川次郎の映画好きの側面がストーリーによく出ている作品で、全四章がそれぞれ「オペラの怪人」「ジキル博士とハイド氏」などのサブタイトルがついている。この本で初めてノスフェラトゥ(作中ではノスフェラチュ表記)という言葉を知った読者も多いのではないだろうか。怪奇クラブの面々が古い映画を見る手段がビデオではなく8ミリというのが時代を感じる。
ストーリーとあまり関係ない事を書いているのは、正直なところこの話全くの先入観無しでぜひ読んでもらいたい一作なのである。ネタバレなぞもってのほか。この駄文もこれ以上読まなくてもいいくらい。面白さは保証する。今まで読んできた赤川次郎作品でも、個人的にはトップクラスに気に入った作品だと断言しよう。
それじゃあんまりだという人のためもう少しだけ書くが、以下余計な情報を持ちたく無い人は「恐怖館」読了後に読んで欲しい。
この作品の大元にあるのは、ミステリ界隈では超有名なあるトリックである。
だが重要なのはそのトリックがどのように使われるか、でありもっと言えば「どのように明かされるか」なのである。この作品ではトリックの解明のされ方が最高に効果的なのだ。まさに赤川次郎にしか書けない。
さらに、この作品に関しては「三毛猫ホームズシリーズ」であることが必然なのである。この事件を解決するのは、宇野警部&夕子や大貫警部や三人姉妹探偵団では絶対だめで、片山刑事でなければいけない。読み終わった後ならそのことがよくわかるはずだ。
「いつものような赤川次郎らしいユーモア描写」にも実は意味があったり、作者のミステリセンスが非常に優れている事を現した一作だと言えよう。
また解決編はミステリファンであればあるほど痺れるラストなのは間違いない。
完成度などを抜きにすれば、今のところミステリ度なら赤川次郎作品トップだと思う。
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