その40 こちら、団地探偵局
「こちら、団地探偵局」は赤川次郎七十三作目の本。1983年に潮出版から発行され、1986年に角川文庫、1993年に双葉文庫に収録された。
団地に住む平凡な主婦・政子は退屈な日常に飽き飽き。そんな時政子は高校時代の友人・並子に偶然再開する。政子と同じ団地に住む並子は、子供を育てながらその知性を活かし非公認の探偵として、三千円プラス必要経費で団地の小さな事件を解決しているという。並子の探偵活動に興味を持った政子は、ある疑問を解決するため依頼を持ち掛ける…。
赤川次郎は日常の中に非日常的な設定を組み込ませるのが非常に上手いが、この作品などはその最たるものだろう。団地に住む主婦が探偵を名乗り、団地の中で起こる様々な小事件を解決していく連作短編集という、非常に魅力のある設定である。
しかし、筆者の読んだところこの魅力的な設定を十分に活かした作品になっているかと言われれば、そうとは答えられないのが今作。
一話目の「見知らぬ主婦の事件」は、ストーリーの展開といい結末の意外性といいまずいい出来と言っていいのだが、その後が良くない。
二話目「救急車愛好家の事件」はまだしも、三話目「素人天文学者の事件」は登場人物たちの動きに全く共感できないし、四話目「寂しいクリスマスの事件」、五話目「優しいセールスマンの事件」も話の筋がすぐ分かってしまう。
最後の「身近なスターの事件」は話が大きいだけに読みどころがあるが、全体として赤川次郎にしては珍しくルーズというか、書き流した印象を受ける。(同じ連作内に同じような部活に所属していた登場人物が続けて出てくるのは正直手抜きと言われてもしょうがない)
設定がいいだけにかえすがえす勿体ない。
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