その38 悪妻に捧げるレクイエム

 「悪妻に捧げるレクイエム」は赤川次郎二十二作目の本。1980年に角川書店から発行され、のちに角川文庫に収録された。2007年には「赤川次郎ベストセレクション」の第3巻として改版が同文庫から刊行されている。

 ペンネーム『西公路俊一』として合作し作家活動している四人の男たち。彼らはそれぞれ妻に対して原因は違えど不満や悩みを抱えていた。そんな彼らは新作のテーマとして「妻を殺そうとする夫の話」のアイディアを考えることになる。しかし、ただの創作だったはずの妄想はいつの間にか現実へと侵食しはじめて…。


 身も蓋も無い事を言えば、ベストセレクション版に収録されている杉江松恋氏の解説が非常に的確なので、僕如きが語ることはあまりない。しかし一つ言えるのは、赤川次郎の作品をあまり知らない人に最初に勧めるべき初期作品は、「三毛猫ホームズシリーズ」でも、「セーラー服と機関銃」でもなく、この作品なのではないかという事だ。

 そのくらい、世間のイメージする赤川次郎像にピッタリと重なる内容であり、なおかつ傑作である。

 不満点としては、四人の物語を描くにはいささかページが足りなかったのではないかとか、赤川次郎らしい容赦なさや非情さが無いとかあるのだが、要するにそれらは「良く出来過ぎている」というようなレベルのいちゃもんでもある。

 初期の中では最も万人受けする作品だと思う。

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