その37 プロメテウスの乙女

「プロメテウスの乙女」は赤川次郎四十一作目の本。1982年に角川書店から発行され、のちに角川文庫に収録、さらに94年には双葉文庫に収録された。2007年には「赤川次郎ベストセレクション」の第5巻として改版が同文庫から刊行されている。

 近未来、急速に軍国主義化する日本。少女だけで構成される私的軍事組織が存在した、その名は「プロメテウスの乙女」。銃器を持ち、独自の行動で市民の反社会的な行動を取り締まる彼女たちは畏怖の対象であったが実は…。

 物語としては「近未来ディストピア小説」という感じだろうか。と言っても1982年の時点で描かれている近未来なので、三十数年後の読後感として未来感は薄いのだが。

 ミステリ的要素は一切なく、主人公の少女がプロメテウスの乙女に入隊していく所から始まる数奇な運命や、政府への反対勢力によって体内に爆弾を埋め込まれた三人の女性の視点から、軍事国家化していく日本を描くサスペンスである。

 感想を正直に述べるのなら、つまらなくはないが数ある赤川次郎作品で率先して読むべきもの、とはとても言えない。赤川次郎の特徴である奇矯なキャラクターや予想外の展開、というものが無く、概ねこういう話だろうなと予想の付く範囲で全て物語が進んでいってしまうので、これではあまりお勧めできない。

 軍事国家を闊歩する美少女私兵集団、という設定は良いので、むしろこちらを反政府側にすべきだったのじゃないかという素人考えも浮かぶ読後の印象だった。

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