その25 窓からの眺め

 「窓からの眺め」は1986年発表の作品で、赤川次郎百二十七番目の本になる。現在でも文春文庫で手に入れることが可能。文庫版のあらすじに初期の傑作サスペンス、と称されている紹介文に偽りなしの面白さである。

「窓からの眺め」は三つの中編をより合わせたような物語になっている。

 倒産寸前の会社の中で奔走するサラリーマン吉川。

 離婚し別れてしまった娘が忘れられない充子。

 大学教授の娘と婚約が決まるも、愛人との関係の清算に手を焼く医師の谷内。

 以上彼らの三人の物語が交互に語られていく。

 三つの物語にはすべて謎めいた若い女性が登場する。彼女は三人の前に姿を現し、ある時は助け、ある時は翻弄し、やがて最後には彼らをある場所へと導いていく。

 ただし、三人の関係と女性の正体はかなり分かりやすく描かれているのでミステリ的な要素は薄い。

 ラストには三者三様の結末が待っており、吉川・充子・谷内にそれぞれ衝撃的な事が起こり物語は幕を下ろす。

 意外性を狙ったというより、真正面から問答無用に叩き斬るようなサスペンス物の名作である。

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