その24 死体置場で夕食を

 「死体置場で夕食を」は1980年発表の長編、赤川次郎十九冊目の本となる。2016年に新装版が文庫で発売されており、扱いとしては初期の代表作といってもいい。

 物語は新婚の紺野洋一と芳子の夫婦が新婚旅行の最中、吹雪に巻き込まれて遭難しかけるところから始まる。すんでのところで山奥のロッジを見つけた二人はそこに駆け込む。そこにはオーナー夫婦や宿泊客たちがいたのだが…。

 今書いた部分は物語の冒頭も冒頭、ほんの数ページ分だが、もし未読の方がいればこれ以上の余計な情報は極力入れず読んで欲しい(徳間書店の紹介ページにもこれくらいしか書かれていない)。

 序盤数十ページのジェットコースターのような目まぐるしくもミステリとして魅力的な展開は、初期の赤川次郎作品でも屈指の物だろう。

 だが、中盤以降は良くも悪くも落ち着いた感じになってしまうのがかなり残念。バンバン人は死ぬし派手な展開も待ち受けているのだが、序盤に比べるとありきたりに思えてしまう。これは書かれた当時ならともかく、「赤川次郎の作品に読み慣れた」読者には特にそう思えてしまうだろう。

 キャラクターも富豪の刑事など見どころは多いが、キャラクターの見分けがつきにくい人物も数名いたのが残念。

 とはいえ冒頭のワクワクだけでもお釣りはくる作品だと思う。

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