その21 悪魔のような女

 「悪魔のような女」は赤川次郎三十七冊目の本。四つの短編が収録された作品集なのだが、赤川次郎の本にもこういう本があるんだなという感じ。個人的な感想だが、全般的に低調な空気が漂う。

 巻頭の「暴力教室」は学校のいじめをテーマにした話だが、暗くて嫌な展開というだけでそれ以上ののりしろが無い印象。ラストは確か非常に強烈だが。

 二作目「召使」は公団住宅、いわゆる団地に住む夫婦の元に突然召使にしてほしいという男が現れる話。これも座りの悪さは強烈だが落ちが平凡。 

「野菊の如き君なりき」は田舎に住む良家の夫婦の元にある日男が訪ねてきて…という話。途中までのサスペンスなムードはかなりいいのだが最後は肩透かし。最後までサスペンス一辺倒でよかったかもしれない。 

 巻末の表題作「悪魔のような女」はさすがに良い。強烈な個性を持つ妻の影で窮屈に暮らす夫がある事態をきっかけに妻を殺そうとする…。フランシス・アイルズ作品を連想させる展開だがこちらはより主人公の絶望や諦観がよく描かれている。


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