その19 上役のいない月曜日

 「上役のいない月曜日」は1980年に発売された短編集で赤川次郎十三冊目の本。

 内容的にも発表時期も以前紹介した「サラリーマンよ 悪意を抱け」と共通点が多いが、後者が密度の濃い短編集であるに対し、こちらは良くも悪くもライブ感が強い作品ばかりになっている。初出雑誌が全て週刊誌であることが一因かもしれない。

 表題作「上役のいない月曜日」はタイトル通りの話。奇妙なシチュエーションを舞台にしたコメディは長編でも短編でも赤川次郎の得意技。ただしあまりにも面白さを優先したあまりごちゃごちゃしすぎている印象ではある。

 二編目「花束のいない送別会」は自分の知らないうちに会社を退職させられていた男の話。主人公の一人称で進むが、三人称の方が物語の悲惨さが際立ったと思う。

 続く「禁酒の日」は一押し。禁酒を決意した閑職の主人公が、それをきっかけに社内では社長候補のポストである次期営業部長を決めて欲しいと社長に言われるという話。大事件が起こるわけではないが、終始皮肉な展開にもかかわらず最後の主人公の決断に爽やかさを感じる名編。

「徒歩十五分」は引っ越したばかりの団地の中で迷子になってしまう主人公の話。タイトルとアイディアは良いが読んでいて「あれ、終り?」思うほど唐突に終わった。長編ネタかもしれない。

 ラストを飾る「見えない手の殺人」はタイトル通り作中唯一のミステリ。やはりページ数が少ないからかあと一歩な印象。


 最後にこれは言っておきたいが、新装版に収録されている江上剛氏の解説はひどい。

 収録作の内容をすべてバラしている上、そこに自分語りと自作の宣伝をさしはさむという隙のないひどさである。本当にひどい(強調)。

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