その16 いつか誰かが殺される

 「いつか誰かが殺される」は1981年の発売で、赤川次郎三十八冊目の本。設定としては「死者は空中を歩く」に近い感じになっており、大財閥永山家の屋敷に、女当主志津の誕生日を祝うため一族が集まる。そこにさまざまな人々が集まって行き…。

 今作の特徴は、登場人物が誰も彼もおかしい事(まあ赤川次郎作品はおかしな人間だらけではあるが)。長女の千津子がまともなように描かれているが読み進めると彼女も十分おかしい。復讐を狙う殺人犯の方が目的がはっきりしている分まともにすら見える。

 ミステリと言うより全編ブラックジョークの塊のような話で、先ほども言った通り登場人物が皆おかしい上に尺も短く(文庫で270ページ弱)、あっとと言う間に終わってしまう印象。率直に言って書き込みが足りない。もう少し長くすべきだった。

 総じて大傑作とは言い難い作品だが、一方でキャラクターが魅力的なのも事実で、特に刀自志津の強烈さはすごい。


 なぜこういう人が死にまくる話を書いたのかと言うヒントは巻末の解説にあって「セーラー服と機関銃」の爆発的ヒットの裏で、赤川作品が学校図書館から敬遠された時期があったという。新本格ミステリ世代で言う所の「殺人鬼」「殺戮に至る病」のような、世間へのカウンターだったのではないだろうか

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