その15 結婚案内ミステリー風

 「結婚案内ミステリー風」は赤川次郎十八冊目の作品にあたるが、これまで紹介したなかでは世間がイメージする赤川次郎に一番近いのがこの作品ではないだろうか。

 面白い、ゲラゲラ笑える、おすすめ。


 「結婚案内ミステリー風」はジュノンに連載された連作短編で、赤川次郎も掲載誌を意識したのかかなり肩の力を抜いて書いたと思われる。もちろん「手を抜いている」わけではなく、むしろ徹底的に笑わせてやろうと意気込んでいるのがわかるユーモア小説のお手本。

 今作の設定は、さえない中年男の深田が所長を務める結婚相談所には、なぜか無茶な相談ばかりが持ち込まれる。その相談に乗るのが所長と唯一の所員である紘子の二人。各話ともまあひどい依頼とそれに負けない破天荒な結末が待っている。

 しかもタイトルに「ミステリー風」とついているだけあってミステリ風味も良い。第一話「心中志願」では依頼者がなぜ心中を志願しているのか、のホワイダニットは相当びっくりできる。

 その他も各話思いついただけでもう勝ち、という依頼内容ばかり。「純潔志願」は遺産を継ぐ条件が結婚のため純潔のまま結婚したいという修道女の話。「決闘志願」はある大スターと結婚したいとう青年が現れ呆れて追い出したら、次はそのスター本人が結婚したいと依頼に来てしまう。

 その他にも深田と紘子のそれぞれの恋の顛末がほろ苦い「面影志願」。母親の思い込みが怖い「幽霊志願」。極めつけはラストの「断絶志願」で、片親同士の男女がお見合いしたらぞれぞれの親に一目ぼれしたというとんでもない話。ぜひ読んでみてほしい。

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