その11 招かれた女

「招かれた女」は1980年発売の赤川次郎十一冊目の作品。

 1984年に文庫化されて以来どうやら今は新刊では手に入らないのだが…。

 これはやばい。

 これはやばい。

 何度でも言う。


 こ れ は や ば い。


 あらすじは、女子中学生殺人事件を捜査していた老刑事宮本は相棒を組んでいた若い刑事が容疑者に殺され、さらにその容疑者も逃走中に事故死する受難に遭遇する。殉職した刑事の婚約者に責められ失意のうちに宮本は退職する。しかしそれでもなお事件の経緯に宮本は疑問を持ち…。

 今作はミステリではなくサスペンスである。登場人物たちが事件に巻き込まれていくがいわゆる犯人探しは非常に簡単。ただでさえ少ないキャラがさらにどんどん死んでいって容疑者が減るので、最終章前には犯人は想像がつくだろう。また、ラストの展開もありきたりである。

 キャラは魅力的で物語もサスペンスフルだが筋は目新しくはない、などと思って呑気に読んでいると最後の最後に…うわあああああああああああああ!

 文庫版の289ページを目にした時、口を開けてしばらく呆然とした。


 ラストはどんでん返しの一種といえば一種であるが、意外な犯人とか驚愕なトリックというわけではない。にもかかわらずこの衝撃である。正確には衝撃と言うより、恐怖と言った方が良い。行間から邪悪な影が立ち上ってくるかのようだ。

「招かれた女」はあの1ページのため書かれたのであろう。

 そういう作品のありようを是とするか非とするかは難しい。

 しかし、一生忘れないような衝撃であることは疑いようがない。

 恐るべきは赤川次郎、無名の作品にこんな巨大な邪悪が潜んでいようとは…。

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