その5 探偵物語

 「探偵物語」は1982年発表。女子大生と中年探偵の恋と冒険の物語。これも知名度の点では「セーラー服と機関銃」と双璧だろう。主人公・新井直美の護衛をすることになった探偵辻本。しかし辻本の分かれた妻・幸子が殺人事件の犯人として追われ、二人はその事件に巻き込まれ…という話。ちなみにこの作品は元になった短編があり、話の筋は殺人が出てくる以外は一緒。ただし探偵の性格に修正が加えられ短編では公衆電話の十円が戻って喜ぶが、長編では十円をもとに戻している。

 「事前の印象より下かも」と思った作品。理由ははっきりしていて、魅力的なキャラクターをちりばめすぎた結果、一番目立たないといけない直美と辻本の影が薄い。特に幸子が良すぎたせいでこっちがヒロインでもいいんじゃないのか、とすら思ってしまう。

 殺人に使われたトリックも悪くはないがミステリとして出色の出来というほどではない。赤川次郎のキャラ描写のうまさが結果として悪く出たケースかもしれない。ただ映画原作としては非常に魅力的な題材だと思う。

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