その2 死者の学園祭
「死者の学園祭」は1977年ソノラマで発売された赤川次郎の処女長編。ただし「マリオネットの罠」の方が先に書きあがっていたという。
ストーリーは主人公・結城真知子が転校先の手塚学園でクラスメイトが次々に怪死する事件に遭遇する。好奇心旺盛な真知子は一連の事件の謎に挑む…と言う展開。
読んでみて思ったのは会話の言葉使いがやや古いなあ、と。41年前のライトノベルなんて言葉がなかった時代の少年向けレーベル小説なのだからしょうがない。内容も本格ミステリではなく、文庫版解説での郷原宏が語る通り青春冒険小説というのが正しいと思う。
ただし、冒険小説と考えれば相当なワクワクと驚きをくれる小説。作中に何度かお手本のように驚きポイントがちりばめられている。中盤にはストーリーには直接関係ないけれど作中人物に関する驚きが仕込まれていてほのぼのと笑える。クリスティの「NかMか」の序盤のあれを思い出した。
ラストの展開はかなり唐突だが、この作品の場合は唐突だからいいのだと思う。主人公真知子の視点で語られていたそれまでのほのぼのした世界観がある事実をきっかけに不穏になって行き、そして怒涛の「死者の学園祭」へとなだれ込む。
結末のショックは少年向けと考えれば苦いなどというレベルではない。若竹七海「クール・キャンディー」や宮部みゆき「夢にも思わない」に続く源流はここにある。もっといえば赤川次郎の最大の特徴でもある「作中キャラに容赦しない」作風がすでに萌芽していたのだ。
「死者の学園祭」読後の率直な感想は”子供の頃読みたかったなあ”である。次々とクラスメイトたちが死ぬ展開の怖さ、最後の真相のショック。ミステリに対してあまりすれてない頃に読むとさぞゾクゾクできただろう。その意味で赤川次郎はデビュー長編にしてちゃんと需要に応えたのだ。
子供の頃に読んだ人には忘れられない一冊であろう、「死者の学園祭」はそんな作品である。
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