♡番外編♡
第38話★君の為にできること〜side響〜
これは、俺がまだ小学四年生だった頃の話しーー。
小さな寝息を立てながら気持ち良さそうに眠る花音を眺めて、俺は優しく髪を撫でると小さく微笑んだ。
「ーーあら? 花音寝ちゃったのねぇ」
「うん」
俺の膝の上でスヤスヤと眠る花音を見たおばさんは、そう言うとクスリと小さな笑い声を漏らす。
「ごめんねぇ、重たいでしょ? ……今退かすわね」
「ううん、平気」
申し訳なさそうな顔をするおばさんに向けてニッコリと微笑むと、俺はその視線をすぐに花音へと戻した。
少しだけ丸くなって眠る小さな花音は、何だかとっても可愛いくて……
その姿を見ているだけで自然と顔がニヤケてしまう。
「響……お前、凄く気持ち悪いぞ」
そんな俺を見た翔は、少し
……気持ち悪い?
ただ膝枕してあげてるだけなのに……。
あっ……そうか!
翔も膝枕がしたいんだ。
翔は花音のお兄ちゃんだから……ヤキモチ妬いちゃったのかな。
普段から花音の面倒見がいい翔を思い出した俺は、その妹思いな発言にクスリと笑い声を漏らす。
「大丈夫だよ、順番こねっ」
「……何の話しだよ」
ニッコリと笑った俺を見た翔は、そう言うと更に顔を
翔ったら、あんなに照れちゃって……。
何だかそんな翔が面白くて、俺は小さくクスッと笑い声を漏らす。
一人照れている翔をそのままに、再び膝へと視線を戻した俺は、未だ膝の上でスヤスヤと眠る花音を見つめてニコリと微笑んだ。
「何だか……ひぃくん今日は凄くご機嫌ねぇ。何か良い事でもあったの? 」
幸せそうにニコニコと微笑む俺を見たおばさんは、そう言うと小さく首を傾げる。
「うんっ! さっきね、花音が俺の事好きって言ってくれたんだー! 」
「まぁ! ……良かったわねぇ、ひぃくん」
ニッコリと笑ってそう告げると、とても優しく微笑んでくれるおばさん。
「じゃあ、将来は結婚かしらねぇ。」
そう言って嬉しそうに微笑むおばさんは、「楽しみだわー」と言いながら花音の頭を優しく撫でた。
「……嘘つくなよな、響。アイスとお前、どっちが好きか聞いたらどっちもって答えただけだろ、バカ」
俺達の会話を聞いていた翔が、呆れた顔をしてそんな事を言ってくる。
「花音はアイスが好きだから、それと同じって事は好きって事なんだよ? 翔」
先程、嬉しそうにアイスを食べていた花音を思い出した俺は、そう言ってニッコリと微笑んだ。
「あっそ……お前はアイスと同じなわけね」
呆れた顔をして俺を見ている翔は、そう言うと小さく溜息を吐く。
「花音はどれぐらいアイスが好きかなー? いっぱい? 」
「そうねぇ、いっぱぁーい好きだと思うわよ」
「それってどのくらい? 」
「んー。……両腕で地球を一周するぐらい、かしら」
そう言ってニッコリと笑ったおばさん。
地球一周……。
花音の好きは地球一周しかしないの?
……俺なら何周だってするのに。
それこそ、両腕でぐるぐるに包んで地球が見えなくなるぐらいに。
それぐらい花音の事が大好きだ。
「俺は地球が見えなくなるぐらい好きなのに……」
そう言って悲しい顔をすると、それを見ていたおばさんは焦り出し、その横にいる翔は「地球が見えなくなるって何だよそれ……」と呆れた顔を見せる。
「だっ、大丈夫よー、ひぃくん。花音にも同じぐらい好きになってもらえばいいのよ。ね? 」
俯いてしまった俺の顔を覗き込み、困ったような顔を見せるおばさん。
「……同じぐらい? 」
「そう、同じぐらい」
ニッコリと優しく微笑むおばさんを見つめながら、どうすればそんな事ができるのかと思案する。
花音は王子様が好きだから……。
きっと、王子様みたいになればいっぱい好きになってくれるかもしれない。
頭が良くて、運動神経だって良い、強くて優しい男になればいいんだ。
外人にはなれないから……髪は染めなきゃ。
……うんっ。
王子様みたいになればいいんだっ!
それで一生、花音を守ってあげればいいんだっ!
そこまで考えると、沈んでいた気持ちがパァーッと明るくなる。
「うんっ! 同じぐらい好きになってもらえるように頑張るっ! ……いっぱい、いっぱい、大好きになってくれたら花音と結婚できるかな?! 」
「そうね、いっぱい大好きになったら結婚できるわね」
俺を見てクスッと笑ったおばさんは、そう答えると優しく俺の頭を撫でた。
そんな光景を冷めた目で見ている翔を他所に、すっかりと機嫌の良くなった俺。
未だスヤスヤと眠る可愛い花音を見つめ、ニッコリと微笑んで優しく髪を撫でる。
……俺は花音の為なら何にだってなるよ。
ずっと君の側で君を守ってあげる。
だから……
早く俺と同じぐらい大好きになってね。
俺の可愛い可愛い、小さなお姫様ーー。
ーー完ーー
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