第3話 独り
高校を卒業してからしばらくの間、何をする気にもなれなかった。大学進学は決まっていたし、それに伴い実家を出る予定ではあったけれど、特別な準備はほとんどせず、ベッドで寝転んで漫画を読み耽るばかりだった。感想を仰々しくツイッターに垂れ流すなどしていたけれど、内容そのものに感心したというよりは、読了の実績を積み重ねることが目的になっていた。高校の友人と会うこともなかったし、やる気をわざわざ出してまで会いたいと思えるような友人もいなかった。それをすべて真壁のせいだとは思いたくなくて、塞ぎ込んだまま、頭の中は過去に回帰していた。
高校で思い返せることがなくなると、思いで巡りは中学校や小学校にまで及んだ。谷中の遠ざかる背中が思い浮かんだ。真壁があの不思議な楽器に背中を押されたのと同じように、谷中も本当は変わりたかったんじゃないだろうか。そんな想像を繰り返した。実際の僕はいつでも傍観者だった。彼らに同情はしたけれど、特に意味はなかったように思えた。彼らはそういう性格なのだと、まず諦めてしまっていた。変えられるという発想が思いつかなかった。それを悔やんでいるうちに、引っ越す日がやってきて、親に急かされながら慌てて荷物を詰め込み部屋を出た。
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