第17話 精霊の子。素直な勇者。(2020-05-16)

「おとといきやがれっ!」

「分かった。」


賢者は困惑していた。

目の前にいる少年・・・まだ、年の頃は10歳くらいだろうか?

訪ねてくるなり、こんな事を言うのだ。


「言われた通り、おとといに来た。弟子入りさせてくれ。」

「おめー、何言ってやがるんだ!おとといきやがれ!」

「分かった。」




言葉には力がある。

いわゆる、言霊というヤツだ。

力ある人間は、言霊を駆使して万象を操る。

いわゆる、魔法である。

そして、万象は精霊が司る。

魔法の背後には、精霊が存在するのだ。


「言われた通り、おとといに来た。弟子入りさせてくれ。」

この男、精霊の愛子とも精霊憑きとも言われていて、半ば精霊である。


「おめー、いきなり何言ってやがるんだ!おとといきやがれ!」

そしてこの男は、世界最高の賢者と言われ、あらゆる魔法に通じる魔法使いである。


彼の言霊に従い、精霊憑きの男は2日ほど時間を遡る事になる。





おぎゃー!おぎゃー!言われた通り、おとといに来た。弟子入りさせてくれ。

賢者は困惑した。

朝起きたら、扉の前に赤ん坊が置いてあったのだ。


「やれやれ、捨て子だろうか?」

周囲に聞いて見るが、誰も心当たりのある者がおらず、仕方なく賢者はその赤ん坊を育てる事になった。



のちに、賢者の教えを受けた男は、魔王を退治する事になる。



すっかり、勇者となった男の祝宴の場。

男の周りには、多くの人が集まっていた。

「勇者様、世界を救ってくれてありがとうございます。」

「勇者様、魔王を倒す旅のお話を聞かせてください。」

男女問わず、モテモテだ。


だが、良い事ばかりではない。

当然、名声をあげた勇者に対して嫉妬する者も出てくる。

「けっ!成り上がり者が!」

祝宴の場の隅に、勇者をよく思わない者たちがたむろしていた。


「ふん。あんなやつ。豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえ!」




どこからともなく、勇者に向かって豆腐が飛んで行った。




――――――



リセットもの(?)とでも言うのか、転生の代わりに人生やり直しで無双する感じの作品を読んでて、ふと思いついたネタ。

まぁ、その作品自体は・・・なんというかガバガバ。

「部屋の中で火を焚くと一酸化炭素が〜」なんて設定(?)を出して敵を倒してたかと思うと、同じ章で今度はダンジョンの天井を焼き落としてる・・・一酸化炭素〜の設定はどこいった?


とはいえまぁ、自分が書いたものでも、他の方が書いたものでも、よくよく考えてみると「おかしい」というのは結構あるんですよね。

ただ、文章の勢いで見逃してしまったり、思ったけどここに突っ込んでしまったら興ざめするし、そこは流した方が読んでて面白いから、とか。

そういえば、好きな作品の中の武闘会のシーンで、よくよく考えてみると「これ、1 vs 3だな」というのがあったり。

普通は、武闘会とかって1 vs 1ですからね。

冷静に考えてみるとおかしいとか卑怯だとかなるんだけどまぁ、気にしてる人、たぶんいない・・・かな?


自分で書くものも、文章の勢いで走り抜けようとしたり、文体でごまかそうとしたりするんだけど、一度、気づいてしまった事ってなかなか忘れられないし、妙に気になってしまうんですよね。

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