第11話 アテレコ生放送(2019-11-30)

F氏の生活は極めてシンプルだ。

平日は会社勤め。

土日は貯まったアニメなどのコンテンツの消化。

そして、ちょっとした副業。


そんな、言うなれば「何も無い」彼に、珍しい客が来たのは、とある土曜日の朝早く。

「Fさん、ご在宅ですか?」

「はいはい、今出ますよ。」

夜遅くまでアニメの視聴をしていたF氏は目をこすりながら顔を出す。


「少々、よろしいですか?」

目の前に差し出されたモノを見ると

警察手帳だった。



「先週、強盗事件がありまして。現場のレコーダーの声があなたに似ている、という通報があったのでお話を聞かせていただきたく本日は参りました。」

入って早々にそんな話を聞かせられるが、とんと覚えが無い。

事件のあった日時を聞いたが、その時間帯は勤務中だ。

その旨を話して、会社に確認をしてもらうことにするが、気になるのはレコーダーの声とやらだ。


「その、今回のお話に出てくる、レコーダーの声を聞かせて貰ってよろしいでしょうか?」

と、話してみるとレコーダーを取り出して、問題の音声を聞かせてくれた。


『動くな!そこの奴、この袋にカネを詰めろ!」

「あ!このセリフは!」




アニメなどのコンテンツを安く仕上げる為に、セリフ毎にオーディションをするサービスが立ち上げられた。

試作中のアニメに字幕をつけて流されるのを、コンテンツの視聴者がセリフを当てていく。

そして、その場面に対して、最も臨場感に溢れるセリフを当てられた人には、幾ばくかの賞金が支払われる。

その声は、ボイスチェンジャーで加工されて、正式にアニメに採用される訳だ。

視聴者は製作中のアニメをタダで視聴できるし(音声は無くて字幕のみだが)、うまくすれば幾ばくかの収入になる。



「刑事さん、これですよ!」


F氏が、先週視聴したアニメのクリップを立ち上げると、銀行強盗の場面があった。




***


どこかで映画の吹き替えの話題があった辺りで思いついたネタ。


うーん。実際のサービスとするには、セリフ毎に声が違ったらまずいから均すならす必要があるしどうなんだろ?

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