第10話 ガムテの威力をなめていた(2019-11-01)

総司は後悔した。

ガムテの威力を舐めていたのである。


ガムテとは、ガムテープの略称である。

ガムテープとは、幅が広い、粘着テープの通称である。


なぜ、こんな事をしようと思ったのか・・・

とにかく、ガムテープは、総司の頭にくっ付いた。


「くっ!」付いた、である。

そして

「くっ!」外れない。

テープの粘着面が髪に絡みついてしまっている。


総司の髪の毛は豊かだった。

だからこそ、髪の毛を掴んで・・・なんとか、一本づつ外そうとした。

だが、外れない。

なかなか外れない。

外そうとすると切れる。

いや、油断をすると抜けそうになる。

だが、ガムテープの幅は広い。

この幅に絡みついている髪を全て掴んで外す事は難しかった。


「どうしたものか。」

ため息をつきつつ、総司は独り言を言った。

いっそ、このままにするか?

いや、ダメだろう。

とにかく、この状態だと頭が痛い。

いっそのこと・・・

覚悟を決めてテープを引っぱった。


その結果がこの、見事な逆モヒカンである。




「それにしても、これはよくくっ付くな。」

総司は、ガムテの粘着面同士をひっ付けて、剥がそうとしてみた。

「むむっ!」

渾身の力を籠めて・・・

ばりっ!

ようやく剥がれた。

その時、総司の頭に、一つのひらめきが宿る。



「この勢いを、突きに乗せる事は出来ないだろうか?」



ガムテの粘着面同士を引っ付ける。

ぺたっ!

そして、ガムテープの一方の端を腰に巻きつける。

もう片方は、肘に巻きつけて・・・

引き剝がす勢いで突く!

ばりっ!

勢いのあまり、ガムテープが破けた。

これは行けるかもしれない。


ぺたっ!

ばりっ!

ぺたっ!

ばりっ!


腕の力だけではなく、踏み込みも交えて試す。

だが、もう少し・・・後一つが足りない。


元々、突きとは威力こそ強いが、「死に技」と呼ばれる。

なぜなら、突いた後は体が伸びてしまい、次の行動が続かなくなるからだ。

この、ガムテ突きは威力を高める方法としては良かったが次が続かない・・・つまり、使い物にならない。


「何か・・・ないだろうか?」

ひとしきり突きの練習をした後、何気なくガムテをいじりながら休憩する。

お?ガムテは真ん中に穴があるんだな?

これをこうやって・・・

木刀に通して回してやると、くるくる回りながら落ちる。

そんな様子を見るうちに、総司の頭に、また閃きが訪れる。


「そうだ。回転だ!」

回転の無限の力を信じろ!と言ったかどうかは知らないが、とにかく、回転だ。

手をただ、前に出す。

やってみると分かるが、そんな動作でも、手のひらを水平に固定したまま、前に出そうとすると緊張が走る。

軽く、親指側を内側に捻るようにしてやると、楽に突きだせるのだ。


シュッ!シュッ!

これだ!

ここに、一つの口伝が成る。


「肘をわき下からはなさない心がまえで、内角を抉りこむようにして突くべし!」


後に、とある片目の拳闘家がこの言葉を伝え聞くのだが、その後の話はまた別の物語だ。



――――――



元のネタ(?)は、「ガムテープの威力をなめていた」で検索すると出てきます。

boketeをネタに一話書くような事をすると面白いかもしれない。

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