第9話 赤いボタン(2019-10-25)
世界は、一人の勇者を求めていた。
彼の目の前には、一つの赤いボタンがあった。
恐る恐る、指先で触れる。
硬く、冷たいその感触は、思ったよりは冷たく無かった。
だが、それがどうだと言うのだろう?
このボタンは、全世界の人間を集めたより強い。
いや、人間以外の何者も・・・
だが、これが押される事は無いだろう。
なぜなら、全てを滅ぼしてしまうだろうからだ。
一日一回、彼は、このボタンの感触を確かめにくる。
それがこの男の日課だった。
いや、この作業は彼だけでは無い・・・歴代大統領の日課だ、と言える。
そして、それは彼の代でも日課で終えるのだろう。
「ふぅ。。。」
思わず止めていた息を吐きながら、部屋を後にする。
そこには、彼の日常が待っていた。
世界は一人の勇者を求めていた。
魔族の攻撃に手を焼いた人間側は、伝説にある、勇者召喚という魔法に手をつける。
勇者召喚とは、伝説によれば、異界より強きものを呼び出して、敵を粉砕するのだという。
「魔法の準備が整いました。」
国一番と言われる、賢者の指導の元、王宮の庭園は、木々が切り取られ、代わりに複雑な魔法陣が均された地面いっぱいに書き込まれていた。
そして、渡される、ひとつの魔道具。
「これは?」
「これこそ、『勇者召喚』を成す伝説の魔道具です。」
見た目は、四角い箱に、赤く丸い円筒がついた見慣れないもの。
だが、賢者の言葉によると、庭園に書き込まれた魔法陣、それらを全て同時に発動させる為に必要なもの、という事だ。
「これは、どのように使うのだ?」
「この、赤い部分をこのように押す、ようです。」
使い方を教わった王は、一呼吸つくと・・・おもむろに、ボタンを押した。
すると、庭園中の魔法陣が輝きだし、回転すると共に、何か・・・巨大なものがせり上がってきた。
「賢者よ!あれは・・・あれはなんだ?」
「伝承によると、
「あいしーびーえむだと?」
王は困惑した。
あいしーびーえむ。
伝説にある、勇者や騎士、果ては悪魔の名前もひとつひとつ思い出して当てはめようとするが、ひとつとして思い当たるような名前は無い。
そもそも、その「勇者」は、大きさからして人・・・いや、生き物とも思えない。
魔王を倒してくれ、などと言ったところで、聞く耳すらあるのか想像もつかなかった。
そんな、王の困惑に気づいたのだろう。
賢者は言った。
「私も、この者たちを使うのは初めてですが、一度、目標を設定しさえすれば、後は自分で飛んで行って目標を粉砕するらしいです。」
飛んで行って?
目標を粉砕?
確かに、城でさえも粉砕しそうな大きさだが、勇者というより、弩や破城槌のような兵器なのでは無いだろうか?
「そうですね。私はこれを、異世界の最強の戦力、という事で調べましたが、まさか、人では無い、という事には驚きました。
あっ!発射するようです!音がすごいので、耳を塞いでください。」
ドゴォ!
衝撃波さえ感じられるような発射音と共に、
1万4525基のミサイルが、魔王城に迫りつつあった。
***
なんか、ゲート・オブ・バビ●ンとか言って、ICBMが出てくるイメージをしてしまったので出来た話。
まぁ、かなり雑ですが・・・こちらの世界で「ボタン」を押さざるを得ない状況を描いたり、押したタイミングが丁度、勇者召喚と合って、ピョーン!と魔王めがけて飛んでく、とか、こちらのの世界に来た勇者が、ICBM召喚持ちで、ゴブリンを倒すのにも「ICBMを3丁。ゴブリン用。ゴブリンが死ななかった時のスペア。そしてスペアが無くなった時のスペアだ。」とか、色々ネタがくっついて投稿出来なくなる前に投稿しておきました。
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