第22話 ダンジョンはコンポストになりました 1(2020-06-21)

むかしむかし、都市に下水道が無かった時代は、出した汚物なんかは道に放り出していたのです。


西洋の貴婦人画なんかでは、ブーツを履いて傘をさしている絵なんかありますよね?

あれは、その頃の都市では、道が汚物でぬかるんでいるから、足に汚物がつかないようにブーツを履いていたんだ、とか言われています。

傘は、2階とか上の方から汚物を捨てる人がいるから、頭からかぶってしまわないように傘をさしてたんだ、とか。


なんかきたねーな、とか言う話ではありますが、このお話の世界では、下男、下女が毎日川とかに持って行って処理していましたので、先にあったお話のような事は・・・そんなには、ありませんでしたよ?

うん。少なくとも下働きの者を雇えるようなお金持ちたちがいる辺りは、きれいでした。

さらにもっと上のお貴族様とかとなると、自分の家のものにそんな下賤な事をさせられるか!と、外のものを雇って処理させるようになっていたのです。


これはまぁ、そんな処理をしていた子たち・・・具体的に言うと、スラムに住んでいる、親の無い子たちの話から始まります。

まぁ、ぶっちゃけやりたくないでしょ?臭くて汚いものを運ぶのは?

ここでも、そんな仕事は誰もやりたくない。

でも、臭くて汚いのはやだ。

だから、何も仕事が無い、複雑な事とか覚えられない、そんな立場の弱い人たち。

ここで言うなら、守ってくれる親の居ない子たちがえっちらおっちらやってた訳ですよ。


「おねえちゃん、おもいよぉ。」

「ほら、あともう少しだから。」

汚物の入った桶やら壺やら積んだ車を押していく姉弟がいます。

姉は十歳くらい、弟は七歳くらい。

車を使えているのは、さすがに、子供が桶やらを直に運ぼうとしても大して持てない、と思った親切な人が、使われていない車を貸してくれたからです。

貸してくれる人がいない子たちは、直に桶を持ってえっちらおっちら。

時々、倒れてしまう子もいたりします。

それを考えると、この子たちはまだ幸運な方だったと言えるでしょう。


こういった、汚物処理の子たちが起きるのは、まだ日が登る前の時間帯。

なぜなら、日が登って人が街にあふれるようになってきた時に、こんな汚物を運ぶ子たちが居たら邪魔でしょ?

たぶん、邪険にされていじわるされるような子たちも出てきます。

だから、汚いものにふたをするように・・・ひそやかに、この子たちは街の活動を支えていたのです。


東の空が白む頃。

ようやくの事で、この姉弟たちは川にたどり着きました。

ここで汚物を流して、桶や壺、ついでに、自分たちも体を洗って元の屋敷に帰るのです。

「おねえちゃん、寒いよぉ」

「ほらほら。火をつけておくから、きれいに洗ったら早くおいで」

とはいえ、日が登る前の寒い時間。

川の水も、身を切るように冷たいです。


お姉ちゃんの方は、弟が川から出る前に一仕事あります。

川で仕事をする人たち、汚物を処理する人や、川の上の方で洗い物をする人たちの間の暗黙の習慣。

川から少し離れた場所には、灯火台と呼ばれる場所があります。

そこに火がついていなかったら、火をつけておくこと。

川仕事で冷えた人たちが、その火で暖まっていくのです。

あと、後に残った灰は、川上で洗い物をする人たちが使います。

灰を溶かした水に漬けると、油とかが落ちやすいんですね。


辺りを見回して、枯れ草が丸まったものや、木切れなどを集めて灯火台に放り込んでおきます。

そして適当な火起こしに役立ちそうなものを探すのです。

灯火台の辺りは、風除けに石など、ここらへんに落ちていたごみくずなどが積んであって、その中には手頃な石や川辺に流れついた硬い木などがあるんですね。

その中から適当なものを手にとって、ごりごりごりごり擦り付けていると、木屑がこんもりと積み上がった頃、もくもくと煙を立ててきます。

そこに、息を吹きかけ、さきほど集めておいた草くずなどをくべると火が着くのです。


「おねえちゃん、あがったよ」

そんな感じで火がついた頃、弟が帰ってきました。

乾いた藁くずで体を拭いてあげて、ついでに洗ってきた服を木の枝に引っ掛けたら、今度はお姉さんの方が体を洗ってきます。

火は怖いですからね。

火がついている時は、必ず、誰か一人が火の番をしているように。

これもまた、ここのルールなのです。


お姉さんが川に身を沈めると、身を切るような冷たさが襲ってきました。

それをなんとかこらえ、手早く、体の汚れを掻き落としていきます。

胸の辺りの汚れを落としていると、少し膨らんでいるように感じました。

「おとなに、なりたくないなぁ」


雇い先のおばさんが言っていました。

「子供のうちはいいけどね、もう少し経ったら、あなた、この仕事も卒業するのよ」

女の子は、人前で裸になったりしてはいけないそうなのです。

「あんただけなら、旦那様に言って、うちの下働きでも入れてもらえると思うんだけどねぇ。」

でも、弟が心配です。

「弟ちゃんも、もっと大きくなれば働き手として期待できるんだけど」

まだ、幼い弟は、期待されるほどの労働力として見てもらえないのです。


その後、二人して火で暖まっていたら、後続の子たちがやってきました。

その子たちに火の番を任せて、車を押して街に帰ります。

雇い主のところに、車と洗った桶を返して、このお仕事は終わりです。

「ただいま、もどりました」

「おかえり。ごくろうさまね」

恰幅のいいおばさんが迎えてくれます。

「ほら、これ。今日のお駄賃と・・・あなたたち、食べ盛りだからねぇ」

そう言って差し出してくれたのは、硬いパンの塊です。

間には、あぶった肉の小さな塊が申し訳程度に挟まっていました。

「昨日の残りものなんだけどね、あまり持ち出すと怒られるんだよ」

申し訳なさそうに言うと、ごまかすように頭をわしゃわしゃと撫でました。

「では、明日もお願いね」


「今日は、お肉がついてたね」

次は、弟と喋りながら、街の近くの森へと向かいます。

お駄賃に貰ったお金は、何かの時の為に貯めておきます。

今、働いているところのおばさんは優しいからパンとか残り物をくれますが、いつも残り物があるとは限らないのです。

「昨日見つけた、きいちごのところ、まだ残ってるかなぁ」

だから、足りない分は森の恵みで。

朝、働いた後は森で何か、食べられそうなものや、時には薬草なんかを見つけて生活の足しにしているのです。


そして、暗くなる前に、街のはずれのごちゃごちゃしたスラムの方へ。

街の外には、人以外にも、獣とかがいます。

明るいうちはまだ大丈夫ですが、暗くなると危険な獣がうろつくのだそうです。

だから、街の中の塀に囲まれたところで過ごすようにしているのです。


毎日が、この繰り返し。

大人になったら、の話はともかくとして。

なんとなくずっとこのままなんだろうな、なんて思っていたのですが、その考えが覆るような事になるとは、この時には思ってもいなかったのです。




――――――



なんか、作風も文体も安定しないなぁ。と思いつつも、それなりの文章が書けたので投稿しておく。

まぁ、ここは練習帳みたいなものだからね。


私の場合、文を思いつく前に情景とかが頭に浮かびます。

このお話の場合、くすんだ感じでごみごみとした街がイメージにあって、そこを姉弟が歩いていたりするんですが・・・

そんな子供の足で、街から川まで往復して、今度は(位置関係からして、おそらく真逆の)森まで歩くとか、どのくらいの大きさなん?とか考え出してしまうと不自然に感じてくるんですよね。

そうなると、その不自然さをどう解消するか?とか考え出して先の文章が思いつかない。

そして、他の設定を思いついたり、過去に考え出した話と結びつけたり。

結局、そういった「不自然さを感じる箇所」から目を背けて全体の文章を整えているうちに、なんとなく、「受け入れられるようになった」感じがした頃に投稿する気になったりします。


あぁ、あと、姉弟に名前つけてやらないとなぁ。


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