恋するキリン、困ったちゃん。


┈◆

 アミメキリンよ。セルリアンと戦って、取られた記憶を取り戻そうとしているの。

でも、ふと自分の思っている大事な娘たちとセルリアンが持つ性質の差に、何だか憐れみを感じている。

 だから1発1発、直に応戦して倒していく。

 礼儀?おこがましいのでしょうけど。

 

 蹴り飛ばして向こうのもう1体に上手くぶつける。

 マフラーで纏めて抱っこし向こうへ飛ばす。

まぁ遠距離投げ技はお手の物ってとこかしら。



 「あ痛ッ!」


 左腕にセルリアンが近づき体当たりをしてきた。当てられたがそれをすかさず蹴り飛ばして散らす。

 

─私の服、毛皮か。

 当たった部分が欠けてしまっている・・・。

 え!?私の手首にも少しヒビ・・・・・・!

 やっぱり、砂星のようになっているのは間違いないみたいね。


 欠け部分はすぐ治ったがあまり負傷すると私・・・どうなっちゃうのかしら?

 ・・・


 そうしているうちにある程度時間が経っていた。

 殆ど片づけたが、見た感じあまり数はこっちに来ていないようね。

 


 じゃあセン達─


 刹那、轟音。強烈な音が向こう下から響く。

 思う間に向こうで崖崩れが起こっていた。


 見た感じ、あれにセルリアンが多数巻き込まれたようね。ただ、あんな崖崩れはフレンズでもなかなか起こせないはず。


「そういえばあそこってセン達が・・・

 だいじょ ─う゛!?」


 瞬間、肩より上が強烈に痙攣したのを感じた。

これがその・・・電流が走るってヤツなのかしら?

 私は麒麟ではないわよ・・・キリンよ、その。



不意に、オオカミ先生はそのままにまずギロギロのことを思い出した。何かの衝撃で目眩がする。

そうだ、セグロと私が探していたのも──!?


 ぐっあ!頭が痛いぃ..!そうだ、思い出した。



 探していた娘たち。


私の砂星は叶えていた、オオカミ先生の願い。私の願い。自分の命が危なくなったからこそ。


 今、言うならそうね─


 「この上なくキリンキリンしているわ

 私は!!」




  あ。




 あ?じゃあ下の崖崩れ・・・


センとオルマーは下に・・・?私せっかく取り戻したのに、すっごく嬉しいのに。連れて行ける2人。

2人がイなくなるかも?え、分からない、それ。


身体も違う方へ向いて動かない・・・願いなのに?

あはは、あれ?嬉しいのに、絶望?えへ...え?


この後も、思い出す部分がいっぱい迫ってきて。その時私どうしていたのかよく覚えていない。


┈◆


「キリン・・・一体どうしたので?

 どこか触れてしまったのですか?」


 私、オオセンザンコウは少し困惑している。

さっきまでのキリンと明らかに様子が違うから。

何処か、振り切ってしまったような。

何かを、・・・!もしかして─


「キリン、もしかしてしたとかじゃないよね・・・!?」


 いや、待ちなさい・・・。


「・・・オルマーにしては冴えてないですね。

記憶を取り戻した、のでしょう?」


崖崩れで倒したセルリアンか、キリンが直接倒せたのか。

どうやら記憶を奪っていたやつを倒せたよう。


「よく..聞こえなかったわ..ぅ が..何かしら..ぁ

ウフフ、ぅ!..まぁそう..よおかげさまでぇ..記憶が(グス)!

 センもぉ..オルマーも、ぃ生きていた・・・

 大切..ぅ無くならなかった。


だから今は嬉しくてぇ..どうしようも..ないの!(ヒッ)」


泣きしゃっくり交じりに話している・・・無理しないでいいのに。生きていた・・・さっきの崖崩れのことか。あんなのでフレンズやめてたまりますか。

それと彼女、一気に思い出したからか記憶と気持ちの処理が追い付いてないようですね。


今は狂喜が前面に出て、酔っているような状態?


確か、これをキャパシティオーバーって言ったはず。博士たちにも引けを取るつもりはないので。



 因みに、ビースト化とはフレンズになりきれなかった存在を指すらしい。

 不出来なサンドスターが当たる、

セルリアンが変異したとか・・・

 さっきオルマーが言ったように、

フレンズから変化するなんて話もあるが・・・



 多分、キリンは大丈夫。そう思いたい。



「セン、こっち..ぃ!来て。渡したい..ものがある..の」


 「私はお呼びじゃないんだね!?

 呼んでよ?ビープビープ!」


「オルマーは後で..はぁぁー ぅ !」


キリンは深呼吸しているが、おぼつかず全然落ち着くように見えない。

 してオルマー違う、そこじゃない・・・。

今のキリン、なんかまともそうに見えないのでどうにも気が引ける。


「(オルマー、ちょっとこっちへ。)」


「(あ、センちゃんが呼んでくれた。救われるなぁ)」


キリンと相対したまま、その恰好でオルマーに目配せする。・・・何でそんな喜んでるんです?



「(すみませんが・・・キリンが違ったことをしたら~を持ってきてもらっていいです?彼女、興奮している。ちょっと何を仕出かすか分からないので。)」


 「(え・・・それでいいの?センちゃん優しいね。

 その時はなるべくいっぱい持ってくるよ)」


 一度、オルマーは待機することに。


「セン、早く..ぅ!してほしいのだけど~..!」


待たせないようにしつつ、キリンがまず何をするのか見ますか・・・。

 キリンの元へ歩いていく。


 ・・・


 「お待たせしました。

 私に何を渡してくれるので─」



 ガバッ!!



 「─!?」

 「っちょ、キリン!センちゃん!?」


 驚いたのと苦しさで一瞬声が出せない。


いきなりキリンに捕まった。抱きしめられる形で!でも変ですね、何処かデジャブを感じる。



 「捕った!捕まえたぁ!!アッハァ!

貴方は!私の敬愛してるお方が..逢いたいと思っている娘なのよセン!

好きな娘の好きな娘なの、分かるかしらぁ!?

私も貴方が大好きになってしまった..よぉ!

 分かる?大好きによ!?」



 うっく・・・かなり強い力。

 大好きにカマす力ですかコレ!?

 


私じゃ抜けられ・・・そうもないですねこれ!

こんなのインチキですよ。



「オルマー・・・さっきの通りに..頼みます。

やっぱ..変なことになっちゃい..ました。」



「・・・・・・」


「・・・オルマー..?」


 何故か一瞬固まっているオルマー。

少し、目に暗黒を感じたのは気のせいでしょうか。


「あう、うん。すぐ戻ってくるから!!」


 思いついたように我に戻り来た道を戻っていく。襲われないか心配ですけど、彼女なら何とかできると思うしかない。

本当は乱暴ながら助けてもらうべきなのですが・・・。

だめですね、キリンには乱暴する気になれない。

 何故か、どうしても。



「知ってる!?キリンにはね、って言う首を巻き付けて喧嘩する儀式があるのよ!

同性での儀式なんだけど、なのにそれで相手を好きになることがあるのォ!」


 「えーと、つまり・・・?」


「さっき言った通り今その状態よ!あぁ無事だったセン、私のもの!すぐ連れて行きたいィ!!」


 何か内容や順序が色々おかしい気がするのですが・・・儀式する前から私を捕まえようとしてたでしょうに。

 後、オス同士の儀式なんですって。

 ってなぜ私がハグ絞めされつつこんな説明を・・・


「それにしてもやっと本当に逢えた、あっはシアワセェ!容疑者とうとう捕まえれたわよォ!いや、もう被疑者よ貴方は!!」


 容疑者も被疑者も同じ意味だった気が・・・。

もっと確定付いた言葉を使いたいんだろうけど、今はそこまで考える理由はない。



 色々と訳を聞きたいから放してほしいところ。

 何の罪なのかも気になりますし・・・。


やっぱちょっぴり痛い思いをしてもらいますか。

罪の上塗りですが大丈夫、少し分からせるだけ。


 なるべく致命傷にならないようスカートの鱗を逆立ててみる。




 ─さくっ♥




 「あはぅ 痛ぁ!?」


 ん、加減を間違えたかな・・・。

痛くも優しく加減して彼女の太ももを刺激する。

 例えるなら、アリをつまむ感じに。



 でも何か一瞬善さそうな声が・・・?


  だが。


「ああぁうう・・・セン、いた.痛いじゃない!

少しわよ私ぃ・・・!!あっは..えぇーん・・・」


落ち着いてきたかと思ったら、キリンはまたシクシクと泣き出してしまった。少し笑いながら。

ほっぺたが擦れる・・・あぁ私こそ変な気を起こさないようにしないと!


 して絞める力は弱まらない。

 執念が・・・足りてますねぇ・・・。



 ・・・それよりも欠けた!?

 彼女は"サンドスターのような状態"。

傷がつくというより太ももの一部が欠けてしまった。


あまり傷をつけると、彼女自身がどうなるか分からない。

けど、なぜ彼女は私を捕まえているのだろう。

探していたのは分かった。逢いたかったと・・・?

恨まれているのでしょうか私は。何か今は愛されてますが・・・。


 ・・・そういえば。


 「キリン、私を離す気は?」


「嫌よ、絶対にやだぁ!あっは..このまま愛でながら連行よ!

離してほしいなら私が砕けるまで抵抗すれば!?

ずぅっと後悔するわよ、憑いてってやる!私はひっつき虫!!」


まぁこのままは、実際ムリ。

両手でハグ絞めしながらどうやって連れ歩くのか。


「・・・そうですか。

でも、貴方を砕くつもりは全くありませんので。

だから、離れてお話しません?ほーらほら。」


少しねちっこく、今度はネクタイの鱗を逆立ててみる。今度はむず痒く。 胸元狙ってえいえい。

 自分自身の嗜好、もとい思考に呆れが差しますよ・・・。あぁ。


  ─チクチクチックチク...


「あぅぁぅ・・・ぁふ

 ...んなな何度シても無駄よ!はっあ

 どうせ貴方はまた逃げちゃうんでしょ!

 何なら灰になるまでしがみついててやるわ!!

 分かる?灰になるまでよ!?」



 ・・・これは敬意ものですね。


「仕方ない。じゃあそうですね、さっき貴方は敬愛してるお方・・・って言ってましたね。

それって誰のことです?」


キリンは少し間を置く、私をさらに締め上げながら。

 くる.苦しい・・・何か考えている・・・?


私の直感的にぃ・・・ストレートに誰とは言いそうにないですねこれは。



「そうね。ギロギロって..言われて、貴方何か..分からないかしらぁ..?うぅ..」


 何故か、感極まったようにぽろぽろ。


 ギロギロ?


「・・・?私なら、ギザギザとかトゲトゲ、或いはイガイガの方がシックリ来ると思いますが。」


「分からないのかぁ..私から教えるの..は

 ちょっと違う..く。

・・・何かもう聞くの面倒だわ..ぁ!」



 そんな殺生な。


「やっぱもう1つ..なら、って言われると何か..感じない・・・?


  絵を描くのが大好きなの」



 ─・・・!

さっき走馬燈みたいなのを、少し思い浮かべてしまった。

 ─いや、あれはまだだめ。ダメなんです。



「・・・オオカミ種は多数のお方に、お会いしました。

 それだけでは良く分かりません..ね。」


 そう、多数。だから予想なんかできない。

 でもその方達と会う度どこか思い出し─



 「動揺しているわね、ドキドキが分かるわよ。

 ・・・ウソツキめ」


 ダメなんです・・・って・・・。


 「・・・貴方がその呼び方をしないで欲しい!」


 ダメなのに。

 この娘、さっき見ていたウロコといい─


「あぁー怒った。貴方やっぱり間違いなく─」




 キリン、そこまでだよーーー!!!



 お、オルマーが戻ってきた!

いいタイミングですね、だがそれでもキリンは私を離す気がないよう。

ならば、私もここにこびり付くことにしましょう。


 ザグッ


 足裏にスパイクをだし、動かなくする。

して、キリンも動けないように敢えて私もハグ絞めをする。


「オルマーいつの間に居なくなってて・・・

あっは! センもこれどういうことかしらー?スキスキ?...フフ

いいわよ!私に乱暴して砕くなら、そうしなさい!

ずっとずっと後悔させてやるからぁ!!」


 今度は黒っぽい笑みを浮かべているキリン。

あーあーそんな覚悟決めなくていいのに・・・。

ほら楽にして、ちょっとおとなしくさせるだけですから。


 「キリン、そこを動くんじゃ─







 ─ねぇよぉー!!」






  ばっしゃあ─!!





「ぶぇっへーは⁉︎」「冷たいです・・・!」



オルマーは大きめの容器を隠し持ち、大量の水をキリンにぶっかけてきた、私ごと。まぁ当初の予定通りです・・・。


 ─何か物凄い勢いでしたね。思いっきりしてやるぞ的な、


オルマーは私を抱き寄せ、怯んで絞めが弱まったキリンを向こうに引き剥がしこちらも少し遠ざかる。


「あまり、キリンに乱暴しちゃだめです!

 砂星のようになっている彼女が砕ける恐れがあります!」


「あぁスーッとし...ってそうなのか、じゃあ戦いに出すのは危なかったね!間に合ってよかったよ」


牽制は出来た、大人しくさせるには冷たいお水が一番。

クールダウンには当然ですよね。


「ひぃん冷ったーい・・・」


 「キリン、頭冷えました?

一時の感情で魔が差すのは構いません。もう一度整理してこれからどうしたいか一緒に考えましょう。」


驚いたのと冷たいので一気にテンションが下がったキリン。

こうなればもうお話も分かってくれるでしょう。


「うぅ~・・・なんだか嬉しくなったり青ざめたり記憶が一気にナニしてどうにかなってたの・・・ごめんなさ、あ・・・」


 ─ ツー・・・


見ると、キリンは興奮かオルマーのせいなのか鼻血を流している。


「あ、キリンごめんね・・・少しやりすぎたかな?

でもどうしても、そうせずに居られなくなっちゃった。何でだろう・・・」


オルマーは少し申し訳なさそうに謝っている。

砂星のようになってても鼻血って出るのですね・・・不思議な。



 「いいえ、ありがとうねオルマー。

貴方が冷ましてくれなかったら、鼻血で月までふっ飛んでいたわ私」



・・・本当に大丈夫なんでしょうね?

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