ボクよりも、ずっと探すのが上手。
─
『!?う、ぁ..! ゴボゴボ...!!』
『こんな暗い朝からよくもまぁ・・・!』
『私たち有隣目が、丸まればそれでいいと思ってたら大間違い!
あ、勘違いしないで欲しいけどアルマジロは丸まれないんだ!』
へいげんへ行く途中、雨によりぬかるんだ地面に足を取られ崖へと吸い込まれて・・・
私、キリンは目が覚めたらいきなりセルリアン内!2つの重なる球体が救い上げて─
べはっ...もうだめかと思ったわ・・・。
─
「んん・・・うぅ。・・・っは!!」
少し昔の夢を見ていたみたい。
現実への感覚が少し開けた瞬間、まず思ったことは *しまった*!!
また眠ってしまっていた、しかも今度はあの状況で安心してしまったのが理由!
でも何だか妙ね、私にしては随分長く眠っていた気がする。
急いで周りを確認したところ、昨日の雨とはだいぶ変わっていい天気。日も登り始めている。
目の前にあるのは、私4人分くらいの高さがある四角く大きな青い看板 の裏側かしらこれは。表側は矢印が書かれている、道案内の看板?
周囲は草が短く茂っていて、ちょっと行った先に深めの森が見える。
へいげんと、しんりんの間くらいの場所に見えなくもないけど、こんな看板は見たことないし、雰囲気で見ても何か違うわね。
そういえば、先ほど私を助けてくれたフレンズは・・・あ、いた!
少し先であっちを向いて、何かを探している...?
最初に私を助けようとしてくれた娘のほうだ。
...─ガサガサ 歩み寄る私の足音に反応してこちらを向いた。
「お!目が覚めたんだね、おはよう~。
私の背中は気持ちよかったかい?
それときみ、大丈夫?どこか気分は悪くない!?お腹空いたでしょ、今ボスを探しているんだ。
偶然私たちがあそこを通っていたからよかったけど、もう少し遅かったらフレンズじゃなくなってたんだよ君は。
私たちでちょっと聞きたいことがあるから、少しゆっくりしていて。ここ安全だから」
よく喋る娘だわね。話すタイミングをなかなか掴めない。
この娘どこかで・・・?けどどうしてかしら。
出かかっているけど出てこない。
「・・・えーと、そろそろいいかしら?
まずは助けてくれて本当にありがとう、貴方たちがいなかったらどうなっていたことか。
私はアミメキリンって言うの。
貴女と、もう一人の娘のお名前も聞きたいわね」
「あ、ごめんね。おしゃべりだからすぐこうなんだ。割り込んでもいいからね?
私はオオアルマジロって言うんだ─。
・・・オオアルマジロ?
センちゃんは、オルマーって呼んでるよ。あ、もう一人の娘ね。
私としては…アルマーっての思いついたからそっちで呼んでほしいんだけど、
きみも好きなほうで呼んでよ。センちゃんは全然呼んでくれないんだけどね」
そうだ。やっと出てきた!私は、この子に
「貴方を探していたの!
でも・・・何でだろうさっきまで全然思い出せなかったのよ、そんな愛称まであるなんて知らなかったわ」
「・・・きみ、もしかして私を知っている娘?
これ、助ける事ができて本当によかったんだな。分かる?分かるかな~この気持ち!
もっと詳しく聞かせてくれないかな?」
ん?どういうことかしら、お互い内容が噛み合ってない気がする。
*私を知っている娘*・・・?
それにアルマジロとは少しだけど面識あったはず。何で私もそれを覚えてなかったの...?
ガサッ…
「うわっ!?」
突然、後ろから何者かの音を聞いて私はびっくりしてしまう。
さっきの襲われた件もあるし考え事してたからよ・・・。
「うん、目が覚めましたか。まずは無事で本当によかったです。」ふむっ
「あ、貴方もさっきのフレンズね!?
本当にありがとう、命の恩人だわ!」
見ると、そのフレンズは後ろから上りかけの太陽に照らされ、何故か腕を組んで仁王立ちの格好をしていた。
逆光で姿が見づらい。格好つけてるのかしら?
「あ、おかえりセンちゃん。ちょっと待っててね、今日は運がいいといいな~」
・・・・・・
・・・
話があるそうなので、私とセンはさっきの真後ろにある青看板の後方へと移動する。
センが先導する形で、まだ姿がよく見えない。
オルマーは相変わらずボスを探しているようね。
「まず色々聞きたいことがありますが、いいですね?私達も、何でも屋をやっている以上報酬が必要なので。
しばらくは付き合ってもらいます。」
拒否権も黙秘権もないみたい。
「─職権乱用ね!?」
「!?難しい言葉を知ってますね?
貴方は奪われそうになったんだし─」
「冗談よ!たまに悪い娘にもなるの、私は探偵だから。
でも、こっちもこのままただで帰るつもりはないわ」
あいにく、価値のありそうなのは持ってないから、情報を渡すしかなさそう。
きっと有益な内容があるはず!
「(探偵ですか・・・手並みを見ますかね。)」
・・・
「さてと、オルマーにも聞かれたと思いますが気分は悪くないです?」
「え、えぇ。特に悪い部分はないわね。
けど私、崖から落ちたの。その割にはピンピンしてる」
「なるほど。・・・ちょっと私の横に来て貰えません?
そこだと分からないでしょうから。
あ、遅れましたが私はオオセンザンコウ、センと呼んでください。」
分からない?彼女の・・・センのことかしら。
確かに逆光で彼女は真っ黒くしか見えていない。
隣へ来るとセンの姿は見えるようになった。
「私はアミメキリンって言うの。ごめんなさい名乗るのが遅くなって」
・・・?彼女の姿が誰か知っている人物に似ている気がする。
だけど、思考を遮るようにセンはさらに尋ねる。
「いいえ。して、私と貴方。
今明らかに違う部分があります、分かりますか?
ヒントは足元です。」
いきなり言われてもよく分からない。
なので下を向いてみる。
でも、足元を見て私は絶句した。
私から影が 出ていない。
え!これ──!?
「置いてきたんかしら・・・?」
ざりゅっ!
あ、センがずっこけてる。
「・・・意外と慌ててないようでよかったです。
取り乱すんじゃないかと構えていたのですが。」
本当は、頭が状況に付いてきていない状態なのだろう。
慌てるって行動にも行き着いていない様子。
「でもこれ・・・私お化けにでもなっちゃったのかしら・・・!」
オオカミ先生の話していた、*後の世界* を思い出す。
私がソコへ来てしまって、もう戻れない・・・?
そう思った瞬間、自分の状況にどんどん青ざめていく感覚がした。
「おっ・・・やっと焦ってますね。
でも安心して、貴方はお化けじゃないですよ。
見えているしさっき助けた時もですが、ほら触れるでしょう?」
センが両手で私の右手を握ってくれる。
ひんやり冷たい。でもあったかい。
「センちゃーん、ボス見つけたよー!
珍しい、例のラムネ味もっているみたいだよー!!」
遠くからオルマーの声が聞こえる。
「おぉ!いいですね!! いいですか!?
絶対確保してください!朝から人助けしてよかったです♪」
今の空気と打って変わって彼女は嬉しそうな顔をしている。
!?
っちょ、興奮してるのか手の握る力が強くなってる!
痛い、痛いわよ!?
「あ、あっ失礼しました。お腹もすいてるでしょうし食事の間に情報交換しましょう。
あなたの状態についてもいくつか予想していることがあるんです。」
この出会い、果たして偶然なのかしら。
────
───
──
─
ザァ──バシャバシャ・・・
「はぁ・・・はぁ!まさか降ってきちゃうとはね!
ボクもつくづくツいてない!」
雨が降りつける中、キリンからの情報を頼りにロッジへ向けて水たまりを跳びつつ走っている犬科のフレンズ、セグロジャッカル。
彼女が求めるものはまずオオカミと、着いたら何よりバスタオルが欲しいところだろう。
しばらく走って、木々の向こうへと渡る大きめの橋を見つけた。
「よし、向こうに見えるあの建物だね。やっと着いたよ・・・
待っててね~オオカミ、久しぶりにいっぱいお話したいことがあるんだ!」
─
──
───
────
もっしゃもっしゃ・・・
一同集まり、センの
「ところで、早速私の状態について聞きたいんだけど・・・」
探偵である以上、ある程度推理はしないといけないんだけど、聞き込みって大事よね。
彼女たちがどう思っているのかを探ることにした。
「爽快、ラムネ味堪能してたんですが・・・
ふむ、いいでしょう。
まず貴方、
透明だけど見えるし触れる状態
になってますね。そういう物に、心当たりがありません?ヒントは─
「待って、考えさせて!!」
聞きたいって言っておいてアレでしょうけど、やっぱり私は推理したい!
「と言うより、私そんな状態になっているのね・・・」
透明なのに、見える・・・?
色がついているってことかしら?
透明なのに?
透明な触れるモノ・・・状態?私が??
私はアミメキリン。そして?
モグモグ...「時間切れですかね。私の予想は─
「サンドスター!!」
出てきた!私はキリンであって、その姿はサンドスターが叶えてくれた!!
「なかなかどうして・・・イイですねキリン。
ずばり、貴方はサンドスターのような状態になっているのだと私は思います。」
─正解したのはいいんだけど、
イマイチ分かんない。
「うん、いい顔してますね。
フレンズを構成しているのはサンドスターと言うのは分かりますね?
貴方は、崖から転落したって言いましたけど、その拍子に体内のサンドスターが貴方の五感と一緒に飛び出したんだと思います。」
「それも何か良くわからない・・・。
何でそうなったのかしら?」
触れる幽体離脱みたいな感じ・・・?
「え!じゃあ今キリンはフレンズとサンドスターの状態に分かれてるってこと?」
「その可能性がありますが、身体は生きているでしょう。意識はないでしょうけど。
身体を構成しているサンドスターは向こうに留まって、こっちのキリンは元気ですし存在もしている。
願うのは身体あってこそ。
キリンが今、それを証明しているんです。」
でも転落した以上、身体は何らかケガしてるでしょうね。
どっかに引っかかっているとかして助かっているといいんだけど。
「貴方に影が出来ないのは、サンドスターが
外光をすり抜けているからだと思います。
でもサンドスター自体も光っているから、キリンはフレンズとしての姿のまま見えるんでしょう。」
「なるほど。多分そのサンドスターの光も、外光をすり抜けているのね」
「キリンもいい推理するね、すごい!
探偵ってのは頭いいんだな~」
私の言葉に対しオルマーは関心している。
もっと褒めて褒めて!
「で、サンドスターとはフレンズや気候を作るだけじゃなく、寄り集まれば空間や強い願いを叶える物質とも言われているんです。
つまり・・・」
「キリンが気候とか空間を作れるとは思えない・・・
願った?出会ったのは偶然ではないってことなのかな?助けたことでもあったかな?
もしかして私らのファン・・・!?
でも言っておくけど、此処はキリンの思うような夢の世界とかではないからねー!
私たちはちゃんと存在している!
ほっぺつねってみる──!?」
「オルマー、ブレーキですよ。」
センから冷静な言葉と、訴える視線が飛んでいるよう。
おしゃべりもいいと思うんだけどもね。
「うぅ~・・・でも私はともかくとして、センちゃんはキリンと面識あるの?」
「ないですね。彼女と会うのは、私の世代では初めてです。」
「キリンは、センちゃんに心当たりは?」
センは的確そうな意見を述べ、オルマーはしっかり仕切っている。2人とも息がピッタリね。
・・・でも、何だろうこの変な気持ち。
「ごめんなさい・・・何か思い当たるんだけど出てこないの。
さっきのオルマーの事も、アルマジロって言われないと思い出せなかった。
分からないだらけ、何でだろう・・・?
実際、この場所も分からない。
分からないづくしになっている。
おかしくなっちゃったのかな、わたし・・・」
本人にとって、思い出せないことがとても辛い。
思い出せないことすら忘れるくらい壊れてしまえれば、とても楽なのに。
分からないことが、分かっているからとっても苦しい。
「・・・オルマーは、最近フレンズ化し直したんです。
それとは別として・・・キリン。
断じて貴方はおかしくなんかない!
思い当たることがまだあるんです。
・・・オルマーもでしょう?」
「キリンがさっきセルリアンに奪われかけてたよね、その時に大事な記憶を持ってかれたのかもしれない!
私、見たときからすぐにピンと来てたよ」
すごい、オルマーもただおしゃべりなだけじゃない。先に予想してたなんて。
「ほんと、いいパートナー。素晴らしい発想です。
いいですか?少し休んだらさっきのセルリアン群からキリンの記憶を取り戻しに行きましょう。
さっき見張ってましたけど、あいつら森とは反対にある、あの崖の割れ目に寄り固まっています。休んでから行っても問題ないでしょう。」
「セルリアンから取り戻せるの!?
そんなの初めて聞いたわよ!」
「完全に奪われてないのなら戻すことができます。貴方は本当に運がよかった。
・・・完全に奪わないうちになら戻せたのに。」
「センちゃん・・・」
何だか、センは悔やんだ顔をしている。
なにか昔にあった・・・?
「言っておきますが、貴方の記憶がきっと私たちに有益だから動くんですよ。
いいですか?私のモットーは、
"行動で以て示すこと"
貴方にもそれを分からせるためにいい機会ですからね!」
センが、何だか恥ずかしそうにまくし立てているわね。
こっそりとオルマーが私に耳打ちをする。
「何か思うものがあるのと、照れ隠しなんだと思うよ。
私も、君と考えや境遇が似ているようだし協力したいんだ。一緒に行こう?」
やっぱり、この
それどころか、私が願っていた・・・?
だからこそ私の砂星は連れてきたんだわ。
それに、私にも色々聞きたいことがある。
ひとまず今頭にあるのは、何でこのオルマーは私の知っている娘ではないのか・・・
あと、センはアルマーと呼ばないのか
かしら。
───
──
─
ギィィ・・・
雨降りしきるなか、木で出来た建物の扉を開ける犬科のフレンズ。
「あら、こんな雨の中お疲れ様です。
ようこそロッジアリツカへ!
今タオルを持ってくるので待っていてくださいね!」
オーナーのフレンズに第2お目当てのタオルをもらってご満悦に身体を拭くセグロ。
「ありがとう・・・大変だったよもう。
えーと、キリンが言ってたのはココで間違いないのかな?僕はセグロジャッカルって言うんだけど・・・」
─+
その瞬間、オーナーは驚いた顔をして一瞬固まっていた。
それからと言うもの、ボクから聞くまでもなくオオカミの部屋へと案内してくれた。
オーナーのアリツカゲラさんはボクと初対面だけど知っていたってことは、オオカミからもう聞いて目的を察したんだろうね!
通された先に、一人で窓の向こうを見て耽っているオオカミがいた。
雨なのもあって滅入っていたのかな?
「・・・何てことだい!まさか、うんキミが来るとは思ってなかったよ。
上がってくれ、少しお話しようじゃないか」
「久しぶり、あまり元気そうに見えないね。
やっぱり今もセンを待っているんだよね!」
「・・・待ちすぎて逆に待ってないよ、もう」
「すごい返しだね、ウソツキオオカミ!
偶然キリンと会って友達になったからお話したんだよ!」
「すごいね、良く会えたものだよ。
でも、あの娘はまた余計なことを~...」
「でも、ウソツキついでにボクからも1つ。
キリンはすごい洞察力だったよ。
周りが良く見えてて、探偵なだけある!
でもね─
─ボクの嘘を1つだけ見破れなかったみたい」
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