行先
違う、違うのに‼︎
。*゚+。・
私はタイリクオオカミ。自称だが・・・いやそれはもういいか。おかしいね、先程までロッジでおしゃべりしていたはずなのに何故か別の場所にいる。
空は昼下がり、少し眩しい日差しが空から照りつける。
背が高めの草が周囲に生える平地・・・いつの間にか気づいたら私はそこにいた。
だが感覚は言っている、見覚えのある場所だ・・・そう、ここはセンと出会った場所ではないか?
どこかで感じた感覚を改めて感じる・・・こういうのなんて言ったかな。いや今度博士たちに聞こう、私はこの先に走るべきだと感じている。
草地をかき分け先へさきへ。
だが背の高い草地をかき分けて目の前に広がったのは、先ほどの平地とは打って変わって、周囲は凹凸が厳しい森林の中。だが、この場所も見覚えがある。
そこからは何かに導かれるように、森の中を歩いていた。ただ引き寄せられる感覚もあるが、今はいい。
改めて辺りを見回すと、違和感に気づく。
先ほどと変わって曇り空が広がっている。ん?背後上方には何故かサンドスターの火山。私は火山を歩いてきてなんかいないぞ!?
すると今度は間髪入れず前方から何かの気配。前に向き直って確認すると、私の身長5人分ほど先に誰かいる。
・・・いつの間にいた?先に見えるのは・・・
へいげんにいた、ウロコ状のプロテクターと
名前を思い出した瞬間私はハッとした。目の前には、オルマーと同種の娘。
いや、私の見ている娘はきっとオルマーなのだろう。一応言うが、へいげんの子は知り合いだが、フレンズのオルマーに会ったことはない。へいげんの子は、センを知らなかったから。次に、 ひっ!?
私の血液が沸騰したのではと感じるほどに汗をかく。彼女の顔が目の前に存在していた。
つまり、彼女は瞬きの瞬間に私の前に立っていた。
彼女は両腕を広げたかと思うと、一瞬で私を抱きしめてしまった。逃れる隙なんて全くない。身体が全く動けない!?これが金縛りっていうやつ・・・なのか?
いや、これはもう抱きしめるではなく羽交い締めのような状態だ。
『─ お口、開けてよ。あーんって』
至近距離でそう言う彼女。
なんでかな?
そう言うことすら出来ず私の身体は素直に口を開けてしまった・・・!!こじ開けられているような感覚だ
何か危ない気がする!!急いで閉じようとするも全く動作が出来ない、しっくすせんす
ってやつが
『─ あ、君いますごく怖いでしょ。分かる、分かるよー。でも大丈夫、ちょっと教えてあげるだけだからね
身を以て─
彼女の唇が私の口の前まで来る
フゥ───
目の前の彼女は、私の開けた口の中に息を吹きつけてくる
キラキラしたものが・・・
!?
何か混ざっている!!私の中に入れられている!!!
「うっ!?ゴホッ!!う゛!あぁあっう!!!!」
途中から分かってはいたが、これは夢の中だ。
普通よりはずっとマシな感覚だが私は絞められたままむせている!夢の中とはいえ穏やかではない!!
刹那、彼女が離れた。
何かを体内に入れられた私が次に見たのは
私のお腹から
ウロコ状 刃になった見覚えのある後ろ姿 破って 血まみれで
私の中からア゛アァァァァァァ!!!!
───
─────
──
───────
─
────
ハァハァ・・・
気づいたら、私はロッジでちょうどギロギロのペン入れをしようとしている格好になっていた。
ギロギロ・・・かつてのセンが目をダイヤ形に光らせて笑い、両手の爪を立てているコマ部分だ。はぁふふ・・・いいオーラ出ているね。
息切れをしつつも思わず笑みがこぼれてしまった。
左手で用紙を抑えつつ右手でペンを入れようとするが、左手にかすかな違和感を感じる。
誰かの手が私の左手に乗っている。その方向を辿っていくと・・・
ウロコ状の手甲と
_
ない
 ̄
わけではなく、今ちょうどペンを入れようとしていた姿と同じ存在が・・・かつての友。
『ふふ、どうしました?そんな怖い顔して。それがイイ顔ってやつですかね。』
センがいる。これは、多分私の願いを視ているのだろうね。ここにあとキリンとアリツさんがいればよかったんだが。そういえばあの二人は・・・いや、それよりも。
『居眠りなんかして怖い夢でも見てたのでしょう。ペン入れがずれなくてよかったですね。
それにしても私はギザギザしてて描きづらいでしょう?特に尻尾、神すら認める尻尾ですからね。』
いや犯されてたよ。
だが描きづらくたって、キミに見つけてもらえるような描き手になりたいからね私は。
『すみませんねオオカミ、待たせてしまって。さぁ、一緒に行きましょう?向こうへ』
ん・・・どこへ連れて行くつもりだ?
『次は、オオカミも一緒に来てくれるんでしょう?
─ヤツの中に
・・・これも、私の願いなのかな。はは…。
──
─
───
今度は見知った天井がある。センは・・・もういないね。
いや、この感覚は。どうやら目を覚ましたようだ・・・ひどい夢を見た、眠りが浅かったのかな。
─タッタッタ…カチャン。
静かに部屋の扉を開ける音がする。
「よいしょ…あ、オオカミさんおはようございます。夜ですが。随分汗をかいてますね、何か怖い夢でも?」
「先生おはようございます!やっぱり無理しちゃいましたね、お話してる途中で眠ってしまうなんて」
入ってきたのはアリツさんとキリンだ。私は夕方くらいにとうとうダウンして、そのまま今の夜中に起きたのかな。
うん、だいぶさっきよりは気分がしっかりしている。
「二人とも私を看てくれたんだね、すまない。どこまで話したかな、半端なところで終わってしまった気がするが」
「えぇ、センが無事にセルリアンの頭を破って帰ってきたところまでですね。思えば、先生が初めに言ったことは嘘ではなかったのですね」
─私の頭の中を縦に突き破って出てきたんだよ…ぬるりとね─
フフ、嘘とはなんのことだろう。だがキリンもよく覚えていたね。
「キリンさんは、疑問が残っているみたいですけどまだ続きはあるのですか?私としても、あの終わり方ではどうも歯切れが悪いと思います」
アリツさんも、もう続きを聞かないと納得しない流れだねこれは。
原稿と羽ペンにインク、今日はお休みさせておくかな。少しくらいは許しておくれ?
「じゃぁ行こうか。ちょっと苦しい道のりだけど一緒においで」
─
私もセグロも、文字通り身体の痺れを切らしてセンを待っていた。
オルマーと話している内容では、私も体内ご招待目前まで迫っていたようだ。 隣のセグロは招かねざるけどね。
だけどセンはしっかり帰ってきた。セルリアンは破れて破片としてはじけ飛ぶ。
これで砂星を吸われることはないので一旦は大丈夫だ。痺れが回って動きづらいが・・・
「セン、すまない身体が言うこと利かないんだ」
「本当に待ち続けるとはオオカミ、貴方って娘は・・・
私が助かって貴方が奪われていた可能性もあったのですよ?そうなったら次に私は何にぶつかればいいのですか。」
「オオカミもそれだけ覚悟を見せたってことだよ!ボクが何とか逃がそうとしても全然動かなかった!」
センは呆れ、でもセグロはフォロー・・・してくれてるのかな?
実際私が君を逃がそうとしてたんだよ!
でも、私だって怖かったんだよ?センが怖かったように。
私はセンにおぶられ、セグロは何とか歩くことができたので元オルマーを抱いて現場を後にする。
その後、ハンター3人と落ち会うことが出来た。彼女たちもまた呆れてたね。
─私たちに任せず、自分の手で倒さないとだめだとかどうかしている!
─わざわざセルリアンの前で、自分からケガして彼女が帰るのを待っていたのですか!?
─パトロールは見張るだけではダメですよ!?
いやハンターたちの言うとおりだけどさ。
私たちも中の戦いがあったんだよ。
でも、友のために最後まで諦めない姿はよかった。次はもう私たちの前で奪われそうな場面を見せないでくれ。
・・・素直じゃないね。
ハンター達から回復用のジャパリまんをもらい、もう歩くことが出来るくらいに身体が楽になった。
夕暮れの中、センの住処まで3人と1匹は歩いていく。センは少し私たちの後ろを歩き、セグロは途中で別れるようだ。
「センは今日で目標を遂行したんだ、これからどうするつもりだい?」
帰り道をセグロ、元オルマーがいるなかセンに聞いてみる。
「詳しくはまだ決めてません。けどまた私たちはまた何でも屋をこの子とやっていこうかと考えております、約束しましたしね。」
歩いている間に、途中までではあるがセンから花型セルリアンの体内であった出来事を聞いていた。今頃ではあるがいい取材ができたよ。
「きっとセン達は上手くやっていけるよ!ボクもパトロールの時困ったら何か頼もうかな~」
「ふふ、待っていますよ。私たちは行動で以て証明いたしますので。ね、オルマー。」
元オルマーはセンをじっと見つめ、センもまた彼女を力強く見返している。意思疎通はできなくても繋がっているのだと見ていて伝わるね。
それから前へ向き直り少し歩き、センは体内でのやりとりを思い出したのか少し後ろで涙ぐんだ声を出している。
「オルマーと..少し喧嘩をしたんですが、思えばフレンズの間に..あそこまで喧嘩したことは無かった。..こうなることで、お互いの思いを打ち明けられるなんて」
「大丈夫だよ、キミたちはこれからも一緒、それこそ困ったら行動で以て伝えてあげればいい」
「そうです..ね。オオカミもセグロも、..この先フレンズとして..楽しく生きていけることを願っております。..オオカミも執筆頑張ってください、また会いに行きますから。 あ・・・ふふ、まさかこんなことになる…なんて。本当、オオカミとセグロにも会えてよかった。」
私たちはそれまで歩きながら、センの方を向かず話をしていた。
彼女が涙ぐんで話しているのもあったから、そちらへ向くのが少し申し訳ない気持ちだった。
この時、やはり彼女を慰めてあげようとして後ろへ振り返ったんだ。
彼女の姿を見て、私の中で戦慄が走った。
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