重なる球体、2つ。


『オルマーは、先生まで奪われてしまえと願っていたのですか?それって少しひどいんじゃ・・・

花型セルリアンが先生を狙ってばかりだったのも、もしかして』


 キリンは言う。けども─


『ひどいのは確かにね。でも、彼女は絶望しつつも気づいて欲しかったんだ、手段はどうあれ。それと、私ばかり狙っていたのは偶然だよ絶対に』

 嫌われていたわけではないのだからオルマーを悪く言うつもりはない。


『センさんも、本当はもっと言いたいこと言ってお話したかったのでしょう。時間が迫って彼女も焦っていたのだと思います』


 私の中では、2人で帰るか2人で奪われるかのどっちかでよかったけどね。3人になれば尚よかった。


 つまり、3人で腹の中でもまぁ3番目に悪くなし・・・さ。

 こっちも腹括ってるんだよ!腹の中だけに。

3人とは言ったがセグロのことではない。どんな手を使っても彼女は逃がす予定だった、パトロールで仕事は果たしていたんだから。



 ・・・かつてのオルマーは、他人の不幸を願うことは絶対言いませんでした。もうその段階まできてしまって、でも。

 約束したのですよ、オオカミと。外の二人と助かる以外有り得ません。

 もし、目の前の彼女が納得しないのなら─



 力ずくで弱点教えてもらいますよ、行動で以て。

 オルマーに恨まれようとも、この先泣いて塩のみ啜ることになっても絶対に帰ってやる



「砂に還って、フレンズとしての生き方は諦めれってことですか?私もオオカミも、まだやりたいことがあります。


それに、どうせこのセルリアンは倒される。

倒したとしてもオルマーは、元に戻ることはできないので?貴方こそ、一つに戻って私たちと一緒に行きましょう?」


 静かに、でも確かに私は訴えた。ゆらゆら、上下して砂星は私の左側に漂う。


『─ありがと。でもね多分元には戻らないと思うよ?今までも記憶を残したまま、またフレンズ化したなんて話は聞いたことがない。

 それと、センちゃんはやっぱり*私と一緒*の方は切り捨てるんだね。やりたい事とあの子を選んじゃうんだ

─「いえ、私は─」

『─まだ話は終わってないよー?やっぱりイヤだな、そのうちオオカミをパートナーにして私を忘れちゃうんでしょ?それとも新しいオオアルマジロを見つけてそっちに付くのかな?それは私じゃないのにな!それなら─

 「聞きなさいオルマー」

『まだだよまだ言う!!センちゃんが無事で良かったとあの時は思ったけど、私が忘れられるくらいならここで足止めして無理矢理でも止めてセンちゃんに


「 いい加減にしなさい!!! 」


 普段は極力大人しくしている私が、声を裏返すほどに喚いた。今までこんな声はあげたこともあげようとも思わなかったのに・・・。


 周囲のサンドスターも私の怒気が理由か勢いよく舞漂い、目の前のオルマーも光を少し明滅させつつ言葉が止まってしまった。多分驚いたのでしょうねこの私を見て。

 私は続ける─


「ハァァッは・・・オルマー、貴方はさっきから・・・何を言ってるのですか。

 元種になろうと、私たちはずっと一緒です..よ。

 意志疎通できないとか..言ってましたけど、貴方は私の居る場所へ..きちんと戻ってきた..じゃないですか。

 姿が変わっても、言葉が..使えなくてもは嘘を付かない。..貴方はそれを証明した、とても..誠実ですよ。私はすぐに分かった。

 奪われたことは…分かりたくなかったですけど…ね」


 目の前の砂星もやっと声を発する。


『─・・・帰れたんだ。奪われたはずなのに空気の吸い方だけは覚えているように。

 あの時、センちゃんとこに帰れて本当に良かったと思った』


「奪われても、忘れないことを貴方が行動で証明したのに私が忘れるものですか。

 それにオオカミには、やりたいことがあるよう。私はそれに敵わないし、パートナーとしても少し違う。せめてモチーフになってやるくらい・・・ですかね。」


 周りで舞う砂星は青く光っている。深く、でも明るい。オルマーの砂星は白く光っていますね、何を思っているのでしょうか。周りの皆さんも含めて。


 「オルマー、おいで。」


 そう言って、両手で砂星のオルマーを抱いてあげる。少し抵抗するような揺らぎを見せつつ言う


『─わぁ・・・センちゃんの手ぇ暖かい、好き。大好き。全部手の中に包まれちゃった・・・初めての感覚だぁ』



 …フゥゥゥゥ────ン…



 おや、気持ちが悲しい。目の下が少し熱くなる。


『─あ、今のはあの子の遠吠えだね、ココにも聞こえるなんて。

 確か2人で一度逃げることになった場合はこの悲しい遠吠えを合図にしてたんだよね、そろそろ時間がないのかな』

「ハズレ。本当は3人ですよ、セグロがいますからね」

『─もぉー!』

 ─

「この時の私は、センが戻ることを願って吠えたんだけど正直、ガスによる身体の痺れもだいぶ来てたから必死だったね。つまり私のサンドスターもピンチなわけだ。何とかしてセグロを逃がすことも考えていた」



 ・・・? キリンが考え込む仕草をしている。この顔、普段の浅い推理をしている顔じゃないね。

私の言葉があまり耳に入っていない、何か引っかかることに思い当たったかな?


 でも、それは私の話が終わっても解決しなかった時に言ってもらおう。

 ・・・アリツさんもキリンから何か感じ取ったのかな?いいよ、このまま行こうかそしたら。


「でも確かに、時間がないようですね。・・・ここはオルマー、あなたが選びなさい。


 さっきの続きですが私をここで足止めするのか、それともヤツを倒す手助けをしてくれるのか。

私はオオカミに委ねられています。だから、勝手ですが私も貴方に委ねましょう。

 ・・・ここまで寂しかったのでしょう?」


 少しの間手で包んであげ、両手の間を少し開いて上から語りかける。


『─うぅ!!センちゃん、痛い、痛いよぉ・・・!!』



 え・・・?手は開いているのに彼女が痛そうな声をあげている。なぜ!?






『─すごく・・・痛くて・・・苦しい!!あぁ・・・ぁ・・・』


 どういうことです、私が触れたことで何か破壊が起こってしまったのですか?

 わ 私は・・・!!

















『─センちゃんの優しさがすごく痛気持ちいいよぉ・・・♪』


「ぁ、貴方って娘は・・・!!!」


 1割くらいはやっぱり握り締めようかと思った私がいました。

 でも、ここまで来て後腐れするつもりはない。・・・しっかりといこう。


『─せめて一矢報いたってところかな!やられっぱなしなのはいやだからね!!ヤツの時だって頑張ったんだよ、褒めてくれるともっと嬉しいな!!』


 オルマーも、こう見えて意地がありましたね・・・。


「・・・いまさら言っても遅いかもしれませんけど、オルマーは十分私たちの役に立てておりましたよ?

 焦っていたのでしょうけど、そんな必要はありませんでした。なんなら貴方が─」


『─いいよ、もう大丈夫。満足だよ。行こう?外の子たち待たせちゃだめだよ』


 砂星のオルマーは、今度は私の話を中断させ、弱点の元へ運んでくれるようです。


『─あ、でもこの案内じゃ動き遅いからちょっと借りちゃうね。 それー!!』

「あむぐっ!?」


 何と私の口からいくつか砂星オルマーが入り込む・・・瞬間身体が軽くなり、でも自分の思う動きをしない、どうやらオルマーが操作しているよう。

 今の状態・・・未知ですが私の勘は大丈夫と言ってます。普段の勘は弱いくせしてこういうところでは冴えている。


 ただ正直言うと少し妙、なぜ彼女は体内に入れば操作できることを知っている・・・?

 いえやめましょう。私のパートナーですからね、何を疑うことがありますか




「ところで、ココの元フレンズたちは存在出来るこの場所を無くすことを悪く思わないのですか?」


 オルマーに動いて貰いつつ聞く。


『─思わないよ、ココにいてもただ苦しいだけだし。それに、ヤツが傷を負えばその部分の修復に使われちゃうからね私たち。


 さっきセンちゃん来る時も穴開けたでしょ?その時も修復に何匹か還元されちゃった。セルリアンの一部になったら何も返事しない、いやきっともう出来ないんだ』


「それは・・・悪いことをしました。」


『─大丈夫、皆*お願い*って言ってるよ。一部が修復に取り込まれると、残っている砂星からの声はフレンズに聞こえなくなるみたい。でも私にはちゃんと聞こえてるから』


 ───

 ──

 ─


 着いた。目の前には私の顔ほど大きさのある張った赤黒い結晶、これを壊せば私たちは助かる。

 どうやら、これはヤツの頭内部についているようですね・・・。


 長いようででも短かった、私の敵討ちの旅ももう終わる。

 これからどうしましょうか。いや、これから考えればいい。私は一人ではないのだから。

 周囲の砂星も淡い光を放ち付いてきたよう、見守ってくれているみたいです。


「それでは、手短ですみませんがもう行きますね。ここまでありがとうございます」


『─ううん、私を探して、こっちこそ気づいてくれてありがとうね。じゃぁばいばい、また外で』




「(今はさようなら、私のたった一人だけのパートナー。)」


 爪を立てウロコを逆立て、思い切り石を割く。


 。*゚+。・゚・。・


 周囲は霧が深い。幸い、毒ではなく痺れを催すだけの植物花粉なのだろう。

ただ、毒で死なれて砂星の取り分を減らさないため・・・か。狡猾だね、飽くまで動けなくするためのものかい。


「ハァどうやら、時間切れ..かな。セグロ、君はハンター..呼んで来てくれる..かな」


「オオカミも..ハァ一緒に行かないといや..だね。それ..だとボクだ..け助かっちゃうでしょ..?そうさせる..つもりなんだろう..けど」


 やはり逃がす考えは感づかれていたようだ。くそ、身体が痺れる。

 風呂の我慢比べじゃないんだから早く行くんだセグロ・・・!


 だが




 ジッ  パァァ──────ン!!!




 何かが破れる音を初めに、はじけ飛ぶ音が響いた。

そう、センはリミット寸前で…倒して脱出をしてみせたんだ!!



 ヤツの頭を縦に裂いて、大きく上空に吹き上げられながら。これはいい、いいネタに・・・なりそうだね、ふふ・・・。


 オオカミ、セグロ!!遅れてすみません、やっと終わりました!やりましたよ!!

 過去のパートナーと言い合って、少し喧嘩ができましてね・・・ごめんなさい遅くなって


 上から着地しつつ、センの目から少しポロポロと落ちるものがある。



 開放されたんだね彼女は。


 あぁ、センよかった!!ボクたちももう危なかったんだよ~!!


 本当に危なかったよ。でも、その分しっかりキミにはインスピレーションの元となってもらおうかな・・・!!ふふ♪


少し離れて3人の姿を見ている元オルマー。この時の表情は汲めないが、きっと彼女も解放された気分だったのだろう。

 ─


「・・・これが、先生の過去にあったギロギロの生みの親だったのですね。でも、私はいくつか聞きたいことがあるのですが」






 ・・・・・・


「先生?」「オオカミさん?」



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