胎内
割れた球体
──
『私は、センが帰って来るのを待っている』
手のひらに覚悟の負傷を負った際に剥がれついてきた1枚のウロコ。これさえ持っていれば彼女を忘れはしない。
『オオカミの覚悟、行動で以て見せられました。
でも、私が行ったあとそのままこっそり退散もできますよ?ふふ・・・』
挑発まがいのことを言ってくれるねセンは。私だってキミを信用している!
自分を認めてくれた存在をそんな軽く─
『オオカミはそんな見捨てるなんてことはしないよ!!』
『ふふ、魔が差しました。冗談ですよ♪
顔に分かりやすく出てます、2人ともいい顔です。 ・・・ありがとう。ではまた!!』
行ってしまった。
センは、弱点を砕くため花型セルリアンの穴が空いた背中へ。
背中は再び修復を始め、穴がふさがってしまった。
待とう、結果がどうなろうともここで。
──
..。.:*・゜
セルリアンの体内に侵入しました。辺りにサンドスターが・・・光っていますね。
けどそこ以外は暗黒が向こう深遠まで続いているように見えて・・・内部ですからそんなに広くはないはずですが。
砂星の濃度が濃いからか宙を舞っているような感覚です。夢でも見ている錯覚。
今まで吸収したフレンズのサンドスターが舞っているからか。これらがフレンズたちの思いの光というのなら、私もパートナーを奪われた身としてすっごく悔しい。
今までの動きから、間違いなく体内に弱点があるとみていいでしょう。
周りの輝く砂星から、聞き取れない音声がこだましてます・・・。
彼らは私に何を伝えたいのでしょう。
形持つ者が来た驚きか、それとも私へのひがみなのか。
その中から、
『─センちゃん…』
まさかこのようなところで昔の愛称を思い出すとは...。
今まででたった一人、他にいないその呼び方。
『─あぁ、センちゃんセンちゃん。まさか此処へ来るなんて』
・・・明らかに聞こえる。私に語りかけている、セルリアンの罠か?いや体内すら思い通りに動かすなんて普通じゃ考えられない。
まぁ普通とは違いますが。
周囲を見渡し無数の光が舞う中、少し離れた先にサンドスターが塊で舞っている。
コレから声が聞こえた気がしました。
少し近づいて、一応試してみますか。
「私のモットー、愛称、ジャパリまん、ウロコの枚数。あとコイツの弱点を教えてくれるとありがたいのですが。」
その対象は、まさかと思い応答してきた。
『─…え!?ええーっと、行動で証明、愛称はセンちゃん、私しかそう呼んたことがないんだよ!
・・・あとジャパリまんはラムネ!でもえーとウロコの枚数なんて分かんないよ!?
あ、だけど弱点なら─
・・・いや少しわたしとお話してからにしよっか。
本当はあの藍色だか灰色のオオカミに説教したかったんだけどね』
ぼやけた音声が砂星から聞こえる。間違いない、目の前にいるのは
「オルマー、そうなってもまだ私のことは覚えててくれたのですね。」
本当は時間がない、なんてことすら一瞬忘れて私は話しかけてしまった。
仕方ないじゃないですか。私のパスワードを潜った、私にとって一人だけのパートナーが目の前にいたのだから。
因みに、ウロコの枚数なんて私でも分かりませんよ。
『─嬉しいな、本当はあの子に思っていることをぶつけようと考えていた。
原種の私とも友達になってくれて、一緒にいて話し掛けてくれて嬉しかった、けど自由に生きてるように見えて妬ましくて。そのうちセンちゃん取られると思って・・・。
でも、センちゃんがこっちに来てくれた。
辛かったんだよ?言いたいことがあっても伝わらない、でもそれが記憶として残っていて。
ココへ吸収された子たちも私と同じ。原種に戻ってもフレンズの記憶となるサンドスターが此処にい続けて。
つまり、「意思疎通出来ない原種」と「実体がない砂星の姿」に分かれてしまったんだ。
そのもどかしさから、他の子たちもコイツの腹で何もかもが疎ましく感じてしまうようになって』
その砂星は、形を留めていませんがオルマーが言いそうな言葉と多言を私にきかせてみせました。オオカミのことも知っている様子。
─
「ちょっと待ってください!!?オオカミさん、じゃあ奪われたフレンズって皆このような苦しい思いをしているのですか??」
椅子に座ったアリツさんが驚きながら聞いてくる。
「いや、正直分からない。今回のセルリアンが特殊なだけかもしれないし、これ自体はセンから聞いた内容だ。少し夢を見ていたってことさえあり得る」
「先生はどう思っているのですか?私は夢だと思えないのですが・・・」
キリンも真剣な顔で、もうアテのない推理なしで質問してくる。
「確かに、夢っていうのは一度見た物の記憶の整理のために見るものだからね・・・
でも、願いを夢で見たってこともありえる」
ちなみに、夢には初見の存在は現れないと言われている。
見覚えがなかったとしても、無意識だがどこかで見かけた存在だという。
「まぁ彼女が見た内容が事実なら、オルマーこそ私をひがんだ第一人者だねきっと・・・はは」
あの頃の私は、ただ走り回っているだけだったから。
「・・・先生、だいぶ長く話し込んでますがそろそろ仮眠してもいいのですよ?私なら数分でいいのになぁ」
無理してるように見えちゃったかな。
いや、もうここまで来たら起きて最後まで話さないと私の気が済まないね。
「内容を忘れても困るからこのまま行くよ。あと少しだから付き合って欲しい」
でも、私からもオルマーに少し言いたい。
ひがむ気持ちも分かる。私だって他を内心でそうしたことがある、けど好きなことをやるのもとても苦しいんだ。
責任だって付くし、時間に追われるし、時には楽しそうに見せないとといけない時もある。
自分ばかり損しないといけない時もある。報われないことが殆どで。それでも笑っていないといけないんだ。
キミだって、奪われたと言う意味では報われなかったんだから分かるだろう?
─
私は、彼女に聞かなければならないことがある。
「オルマー、過去にコイツが出て来たときどうして私と一緒に戦ってくれなかったのですか?」
オルマーの勘が、セルリアンの気配を察知したのでしょう。私を詰所に返し立ち向かってしまった。
砂星は、赤い光を放ちながら言いました。
『─くれなかった・・・?そんなの、危ない目にあって欲しくなかったからだよ!!分かるでしょ!?
あの時のセンちゃんはお仕事でとても疲れていた、だから絶対に休んで欲しくて私だけでどうにかしようとした!』
やはり、殆ど思ったとおりの回答ですね。
「その気配りには感謝します、けど貴方だって疲れていたでしょうし私はそんなこと望んでませんでした。
逆に聞きますけど、もし私が貴女と同じ行動をして奪われていたらどう思います?」
少し間があり、流れ星のように私の脇を石が通り過ぎていく。
『─うぅ~、センちゃんもイジワルだね!こっちだって役に立ちたかったからココぞって思ったんだ。
あと私なら今のセンちゃんと同じく元凶を探し回るか、奪われたものを見つけようとするかな。分かる?分かるよね!どうにか戻せる方法を探すか、本当は奪われてないって思い込んじゃうかも─』
「はいストップ!つまりどうなるか分からないってことでいいですね。」
時間がないこともそうだが、彼女の場合話が長くなるので制止をかける。
だが間髪を入れず、彼女はさらに話をかけてきます・・・。少し暗い願望を乗せて。
『─ねぇ、センちゃんも私とここに残ろ?外のオオカミも一緒に連れてきて3人一緒にここで暮らすんだ。
あの子ももう逃げないみたいだし、そしたら私も寂しい思いしないで済む』
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