一人なんかじゃない!!


 ──

『セグロ、キミにも助けられっぱなしだ。

感謝しているよ』

 捻った脚を庇いつつ。


『ボクの遠吠えがハンターの子にも聞こえていた・・・センが倒さないと意味がないのに!

 何で倒すための石がここにもないの!?』


『私が行動で以て、証拠をお見せします。このセルリアン、フレンズを直接取り込まない理由があります。』


 ──


 まただ、彼女は自分の身を以て証明するやり方をとる。大丈夫だと言う自信があるのか?

 それか、危なくなったら私たちに委ねると言うことか?信頼してくれているのなら、もちろん私はそれに応えないといけない。


 だが、どうにも彼女の行動に嫌な予感がしてしまう。すぐにでも駆け出せるように体制を低く構えておく。


 ─ビュン! ─ギュウウッ!!


 花型セルリアンが1本だけ使える触手でセンを足から締め上げる!!

 転ばせられ引きずられ、両腕も封じられて、だが抵抗せず彼女は逆さまで吊られている。手甲の鎧と、スカートの鎧を拡げて防御をしているようだ。


「私をこんな格好にして・・・触手の腕で見えないからいいですけど、吊られてスカートも中もエラいことになってます。

 無礼千万、後でたくさんお礼してあげますからね・・・!!」


 意外と余裕そうに怒るそぶりを見せる彼女。

 ヤツは、センを締め上げ続けるが、確かに口内に放るなどもせず相変わらず自身のガスを吸い込む形で摂取を続ける。この際に私たちも少しずつ体力を吸収されていく。


 このままだと彼女は奪われて─


「オオカミ!何してるの早く助けないと!!」

「はっ!すまない!!」


「いえ、大丈夫です。心配かけさせてすみません。」


 出会った時と同じような言葉。でも感情に明るい色がついた言い方。

 瞬間、彼女は太い尻尾のびっしりと並んだ刃を振り、またもや触手を断罪してみせた。


 ガッアアアアアア-!!


 使える触手を落とされ、セルリアンは叫び声を上げている。空中に黒い液とともに放られたセンを受け止めようとするが、大丈夫 と彼女は静止をかけて地面に何とか着地した。


「はぁはぁ・・・セン、キミはいいかげん、無茶しすぎだ!!キミといると私がショック死しそうになる!」


「ほんとだよ!ボクも泣きそうになってたんだよ!?」


「すみません、そんな怒らないでください。

私の尻尾は丈夫です。簡単にはオチません。

 で、確かにヤツは私を内部に取り込まなかったでしょう?」


 確かにそうだった。あんな抵抗出来ない状態でも彼女を口内に放ることもしなかった。


「でも、ハァそれはキミが全身刃だからとも言えるよね?」


「・・・それも一理ありますけど、ここまでしても私のこと信用できません?次はオオカミが行ってきてもいいんですよ?」


 いや彼女の言うとおりだけど、何でそんな当て付けがましい言い方をするんだい!?


「ボクもセンの予想が正しいと思う。このセルリアン、石がないし直接取り込もうともしない」


「いや私も信用しているからね!?確かに表側にはない、つまりこいつは体内に石を持っているということだ」


「ですがヤツは、少しずつ削っても私たちから吸い取ったサンドスターですぐに修復しやがります。

 しかも今まで他のフレンズから吸い取ったサンドスターも使っている可能性が高い。

 直接弱点を砕くしか方法はなさそうですね。」


 確かに、先程センが削り落としたはずなのに殆ど修復されている。


 そして、私は”直接弱点を”でまた悪寒を感じている。

 心臓に悪いんだよキミは本当に本当に!


「いやいや、ヤツは動けなくしたんだ。一旦体制を立て直してから倒しに来てもいいんじゃないのかい?」


「そうですね。けどそれだとハンターに後は任せる と言うことになりません?

 ここまで御足労させてセルリアンを目の前に、少しの間逃がしてくださいなんて言われたら私だったら納得できませんし、或いはそのお方が呆けたか操られているとさえ思っちゃいます。」


 ハンターは、確かに息を潜めて私たちの様子を見ている。霧深くどこにいるのかは分からないが、私たちで倒すと言う意志を汲んでくれている。引くと言う行動は、応援頼むと即解釈されるだろう。


 さっきからそうだが、センの言葉にも刺が混じってきている気がする。


 「で、でもまたボクから説明して─」


「いや無理だね、彼らはそれでは納得しない。今待っているだけでも譲歩してくれている。でヤツをこのままにはしておかないだろう」


「何とでも言ってください。もちろん私がやります、オオカミと会った時の方法ですぐに終わらせますから」


 やはり自分自身が突き刺さるアレをやるつもりだ。だめだ、下手をすれば戻ってこれなくなる。

止めないといけない、危険すぎる。


 「セン!!それは─」

「オオカミ、それとセグロ。

 私を口で止めることはできません。

言うって行動では弱すぎるんですよ動くって行動に対して。

 もう一度言いますが絶対に無事に帰ってきます、大丈夫ですから」


 逃げもハンターの応援も外殻攻撃も不可。


 やはりだ。彼女の覚悟を止められるだけの、納得させられるだけの行動が思いつかない。


 力づくで止めることも考えたが一瞬で放棄した。3人ともすぐ消費してハンターの見ている前で奪われて終わりだ。

見世物じゃないんだぞ!


 私は覚悟が足りなさすぎる。どうすればいい?

私を認めてくれた、私が認めることができた娘を。ここまで来るともう彼女は止められないのだろう、ならば絶対戻って来れるように私も─


「一緒に行くなんて言わないでくださいね。さっきも言いましたがそんなに私が信用できませんか?」



 私の、見上げる動作と顔を見て察したのだろう。

 センの顔は・・・覚悟と、でも恐怖を伴っている。


 でも私に付いてくるなと言っている。


 巻き込みたくないんだろう、勝手だよ本当に。だが帰ってこいと言葉で励ます程度じゃだめだ、それでは足りない。


 行動で・・・か。センの目、全身を私はゆっくり見る。落ち着いた茶色の目。


 ベージュのカーディガン、金に近い刃物状のネクタイ、手甲、スカートの毛皮。刃先が光っている。


 私が描く人物は彼女が生みの親ならいいな。 

 あぁ、そうか・・・








「セン、右手を出してくれ。絶対戻ってくると誓い握手をしよう」


 これに彼女はとても満足気な顔をしていた。

 「ふふ、いいですよ。心配しないでくだ」


 ガシッ!!






「・・・え?」

「えっオオカミ!!」



 私の行動に2人が驚愕する。








 彼女が差し出してきた手・・・ ではなく手甲の逆立つ刃を思い切り掴んでやった。やった!

 センが私の行動に驚いている!!

 

 本音を言うと最初に思ったのは、彼女の表情を行動で変えてやったことだ。

痛い、でも気持ちいい!嬉しい!!


 決して浅くはない傷が私の手のひらに出来た。血が吹きそうなくらいよく出る。

よし、これで私も彼女に賭けられる。


「オオカミ、何をしてるんです!!?」

「さっきのセンも、オオカミもどうかしている!何でそんなことが今できるのさ!!」



「セン、キミがもしセルリアンを内部から倒せなければ私もサンドスターの消費と吸収で終わりだ。でも倒せば吸収するやつは消えるから助かる。


 私は付いて行かないが、キミがここへ戻ってくるまでずぅっと待つ。


キミは1人ではない、私もフレンズとしての命を預ける。

 キミとコレを乗り越えてから私はキミの絵を描きたい、少し怖いけどとても強くて奇妙な」


「・・・やってくれましたねオオカミ。

 にくらしい、もう私だけじゃ済まなくなったじゃないですか。いいです絶対帰ってやります、そこで大人しく待ってなさい。



 ・・・ありがとう。」


 それから、私たちはジャパリまんでさらに補給をして備える。私が1個、セグロは半分、センは1つと半分。

 セグロも持っていたのは好都合だった。1個食べてもよかったのに、彼女も私の覚悟に感化されたようだ。

他の者に流されやすいのは悪い癖だね・・・。 


 ありがとう。



 私たちがだめならばハンターに声をかける役、酷だけど頼むね。


 それから私たちは触手が絡まり動けないセルリアンの背中からさらに削りを入れ、外殻が薄くなった隙に。



「よし、今ならきっと行ける!此処で待ってるから頼んだよ!!」

「ボクも待ってる!絶対帰ってきてね!!」



「すぐ行ってきます、後でまた逢いましょう!!」



 センは勢いをつけ、鋭利な爪を前方に伸ばして刺さり込み内部に引き裂いて飛び込んでいく。



 ─

「ここまでが、大体私の経験したところまでのお話だよ。してここからは、内部での出来事を彼女から聞いて今も覚えている内容を話していくね。

少し不思議な状態だったようだ、砂星が入っているからか」


「まさか・・・このままセンはもう戻ってこれこないんじゃないですよね!?」


「(キリンさん・・・誰から聞いた出来事って言ってましたかオオカミさんは)」


 矛盾に、アリツさんは気づいたようだね。まぁこのままもう少し続けようか。

 ─









 ………………………………………………

「(セルリアンに勝つことは必然、負けるなんてありえません。

けれど私だって本当は怖くてどうしようもない。

我が友よどうか少しでいい、その青い尻尾と交わしたときのようにまた力を貸してください!!)」

 ………………………………………………

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