もう少し来て、おいでよ...。
─
『先生もセンも強いですね、かっこいいです!!この調子で行けばオルマーのかたきも問題なくとれますよ!ね?先生』
『はは、もう過去の話だから結果は分かっているんだよキリン。それと、意外とキミの方が強かったりもするんだけどね』
あえて私はYESもNOも言わなかった。最後まで話は聞いて欲しいからね。
だが、確かにオルマーの時もセンと2人でいれば勝てていただろう。
彼女は、防御こそできたが触手で絞められ花粉ガスでどうしようもなくなったんだろうね・・・。
『きっと、オルマーさんもオオカミさんには感謝してますよ。元種になっても一緒にいる機会は多かったのでしょう・・・?あ、布団直しておきますね』
ありがとうアリツさん、私の何かを察したんだろう。
流石、数々の住処を見てきただけはあるね、目ざといよ彼女は。
元オルマーとセン、私は確かに殆どの時間行動を共にしていた。花型セルリアンの探索の時は別れることが多かったけど、元オルマーとは必ず彼女か私が一緒にいた。
元オルマーは反応を返してこないが、話しかけたりもしたね。抱き抱えての移動になっていたが。
結局、生物である以上どんな形でも繋がれるのだと私は思いたい。
─
元オルマーを抱えてジャンプで避けたが、続けざまにもう1本触手が横薙ぎで私を襲ってくる。
でかい図体の癖に手だけは速い、私も少しブルっちゃうね...
これも跳んで回避、明らか私を集中して狙っている・・・!
意外と挑発が理解できていたのだろうか。
脚元に違和感、これはまさか─
「うっく!!」
重たいオルマーの─と言うつもりはないけど着地が・・・右脚を捻った!!
余裕をもって回避してやったのに!!
捻ったこともまずいが・・・
その部分の治癒にサンドスターが消費され
・・・これがまずい、避けてからジャパリまんをかじらないと・・・。
だが痛みですぐに身体が動かない、オオカミの脚は頑丈じゃないのかい!?
「オオカミ?まさかオルマーを助け抱えて動けなくなっているんですか!?」
遠くでセンも私の状態に気づいたようだが、距離がありすぎてこちらまで間に合わないだろう。
セルリアンが再度振りかぶり・・・
もう1本触手を絡ませられれば動きはだいぶ制限できたが…あは、まずいね私・・・。
「このぉ!!!」
私の前方から叫び声がする。突如、膝をつきかがむ私の上部を野球ボールほどの石が飛んで行き、的としてはいい大きさの花型セルリアンの眼球に見事命中した。流石に急所だったのだろうか、たまらず仰け反るヤツ。
してこの声は・・・
「キミか!パトロールで元凶を見つけ出してくれたんだからもう逃げてよかったのに」
「そうも行かないよ!ボクだって、それで皆を見殺しになんてしたくないから!!」
どっかの誰かと同じようなこと考えてるね、全く。
紹介が遅れたが、彼女はセグロジャッカル。感性の面で汚れを嗅ぎ分けるのが得意な娘だよ、皮肉なものだけど・・・。
今回のパトロールも彼女が適任だと思って任せた。その件もさることながら、勇敢さでも彼女を選んで本当によかった。
ガァァァァーー!!!
目は流石に効いたのか、残り2本の触手を乱しながら暴れまわるセルリアン。
「ぐぅっ!!痛いですね!」
近距離にいたセンが、衝撃で吹き飛ばされ尻餅をつく。
頑丈とは言え、彼女も全身鎧ではない。
寧ろ前上半身の毛皮はシャイな見た目で厚そうには見えない。
「はっ!セグロ危ない!!」
こちらにも勢いよく触手が振られるのを、彼女に覆い被さる形で避ける。
─バキィ! ─バキッ ─ギシッ!! ─グググ…
だが触手を乱してるのは好都合、数本の木を薙ぎつつも運良く腕の1本が絡まった。
セグロの運の良さにも脱帽ものだ、残り1本!
「セン!私もだが傷を負ったなら補給しないとダメだ!!」
「二人ともこっちへ来て、少し話しておきたいことがあるんだ!」
私がセンを改めて誘導し、そのついでかセグロからもなにか話があるようだ。いい話を聞きたいものだね・・・。
──
─リンリ~ン♪
・・・おや?フロントの方から音が聞こえる。いいところだったのに、どうやらお客さんが来たようだ。
「あら、呼び鈴がなっております。少し行ってきますね」
アリツさんは応対するべく一旦部屋から出ていった。彼女を抜いて話はするべきではないよね、少し待とう。
ん、それにしても。
呼び鈴の音って、あんな音だったかな?
「先生呼び鈴の音って、あんな音でしたかね?」
あ、キリンも私の思っていることと同じことを言った。
5分後程して・・・
「お待たせしました。かばんさんとサーバルさん、鳥のフレンズの方とあと1人、少し変わったお客さんをお部屋に案内してきました。
かばんさんたちは少し鳥の子とお話があるそうです。私もまたお話聞かせてもらっていいです?それと・・・」
「やぁ、また戻ってきてくれてありがとう。ところで、変わったお客さんとはどんなお客さんだったんだい?」
他のフレンズのことを聞くことはあまりしないのだけど、変わったなんて言われたら気になるんだ私も。
「えっと・・・その鳥のフレンズの方と、後もう1人のお方は少し遅れて来ておりました。
かばんさんと同じく多分ヒトのフレンズで、指輪をしていましたけど・・・」
「ズバリ、私の推理で言うと!!その鳥は鷺の─」
「あ、同じ鳥類として言わせてもらいますけどサギさんではないですね」
「ぐぅっ!?」
特徴も聞き出してないのに何処からそんな推理がでてきたんだ・・・キリンの予想は宛にできないね全く。
此処に泊まりに来ている以上近いうちに顔を合わせることだろう。かばんたちも来ているようだしね。ところで・・・
「その変わったヒトのフレンズの名前は聞いたのかい?」
私の好奇心がさらに余計なことを聞かせてしまった。
「鳥のフレンズさんは生まれたてと言うことでともかくとして、ヒトのお方はどうも最初の呼び鈴で既に名乗ったと・・・どういうことでしょうかね」
最初で既に名乗っていた・・・?寝不足の頭では良くわからないな。この場合・・・
「キリン、こういう時こそキミの推理を聞きたいのだが?」
「えっ!?少し考えてみます・・・」
さぁ纏まるまでもう少し話を続けようかな。
・・・何処からだったか。あぁ、センを呼び戻してパトロールのセグロからも通達があったところだね。
─
私とセグロで2本の触手を木々に絡ませ、行動範囲をだいぶ制限させてやった。
1本は最初センがカウンターで裂き伏せ、あと1本だけフリーだが下手なことをされない限り動き出しては来ないだろう。
トカゲの尻尾みたく自切しなければいいが・・・。
残っている小型セルリアンが邪魔だ、手頃な木に登って花型セルリアンの前で一息つく。
オルマーは、センが少し離れたところに待機させてきたようだ。
今回復したのでジャパリまんは一人につき残り1個、ヤツを動けなくしたが相変わらずこちらは砂星を吸われているので時間はあまりない。
「朝のボクの遠吠えをハンターの子が聞いて、皆近くで待機しているんだ。キミたちがここで倒すのが難しいなら彼女たちがやるって」
「やっぱり、ハンターたちにも届いていたか。仕方ないね・・・」
「オオカミ、どういうことです?私たちでトドメを刺すって言ったはずですよね?」
「遠吠えの内容は、私たちイヌ科にのみ理解できるんだ。ただ、ハンターの中にもその子がいてね。駆けつけてきたみたいだ」
探索中に遠吠えでも一応ワケを伝えてみたが、どうも聞こえない所にいたようだね・・・。
して、センは明らかに不機嫌な顔をしている。
「オルマーの件が第一ですけど、元何でも屋としてオーダーを取られるのはまことに不愉快ですね。」
「早とちりしないで!ハンターはまだ近くで待機してるだけだから、オオカミとセンで倒せば大丈夫だよ。
ボクも、さっき動けなくなったところを助けてもらって、その時に説明したんだ」
なるほど、いい仕事をするねセグロは。後は、私たちで倒せればいいんだ。
ヤツの攻撃自体は殆ど封じた、もう少しだよ。
だが、センは浮かない顔をしている。
「・・・セン?私たちでもう倒す手前まで来ているんだ、ハンターの手はもう借りる必要ないよ」
登った木の上で座り少し脚をぶらつかせ私は言う。
センを避けきれず負った右肩の傷はまだ治る途中だが、捻った脚はほぼ回復した。
「いえ、私が後ろに付いてて思ったんですが」
センは右手の曲げた人差し指を口元に当て、下を向き考え込む仕草をしている。
「この花型セルリアン、どうも不可解です。もしかしたら石がないのかもしれません、オオカミも最初後ろに付いてましたよね。
その時石は見えました?」
なにか、センは感づいているようだ。
「いや、私は避けて遠ざかったという意味でもよく見れなかった。
だから防御をしつつ近づけるセンの方が調べる意味でも好都合だと思ったんだよ」
「花びらの後ろ、股部分などの見えづらいところを確認したけどそこにもありませんでした。
あとは頭上ですが、そこもないとしたらもう」
「待って。頭上は木の上からボクが見てくる、二人はなるべく呼吸を我慢してここで待ってて!」
セグロジャッカルが、木を飛び移り駆けていく。彼女も木登りが得意な訳ではない。
なのに進んでやってくれるとは、彼女も本当に勇敢だ。
「オオカミ、正直なところ頭上にも弱点の石はないと私は思っています。」
セグロが離れてからセンは言う。
「なんで、そう思うんだい?」
「考えても見てください。普通、セルリアンは体内にフレンズ自体を吸収する方法を取りますよね。
けど目の前のアレはどうです?間接的に吸収する方法を取っております。こざかしいと思いましたが、本当は体内に入れたくない理由があると私は考えています。」
「それってつまり、弱点は─」
「ごめん、お待たせ!」
ここで、セグロが戻ってきた。偵察の結果は・・・
「やっぱり、頭上の花びらのあいだにも見えなかった」
「でしょうね、ちょっと今証拠を見せてあげますよ。取り込まれるのかどうか」ギシッ...
膝を曲げ、枝につま先を置くセン。
降りる格好をしている
「おい!?何だそれちょっと待て、セン!!」
「大丈夫です、まだ。今は行動で以て見せるだけですから見ててくださいね?」
センは、おもむろに木から飛びおり、ヤツの前に立つ。ヤツは、目が回復したようで迫る存在がしっかり見えているようだ。
彼女は最近落ち着いていたが、最初のような無茶な行動をしでかすことを考えると...
悪寒がした、私は。
─
「あーーっ!そういえばっ!!」
突如キリンが叫びだす。何だい!また感覚が現実に戻されちゃったじゃないか。
タイミングがタイミングなだけに、普段とは違った黒い感覚を自分に感じる
「キリンさん、どうかしたのですか?何かさっきのことで分かったことでも」
「あ、ごめんなさい・・・。さっきのことですがこの場面とは関係ない部分で思い当たることがあったんでつい声をあげてしまって。」
何だか、このとき寝不足だからかキリンの事がすごく腹立たしく感じてしまった。
思い通りにいかない風にばかりしてこの娘コイツは・・・ 私は・・・ あ゛ぁもう!!!
「キリン、さっきもだがいい加減に」
「いえ、オオカミさん。
私からもお願いします、キリンさんを怒らないであげてください。
私も、その内容を後で聞くべきだと思います」
アリツさんも、強い意志を持ってセピア色の眼をこちらに向けてくる。しっかりと私の中枢核を射抜かんばかりに。
普段穏やかな娘がこうやって強い物を向けてくると、どうも質が研磨されている感じがして。
私はハッとする。
しまったとおもった、踏みとどまったような感覚
「・・・分かった、二人ともすまない。私がどうかしていた」
「いえ、さっきから私も、、、本当にすみませんでした」
いや私が悪い・・・一時の感情で全てを台無しにするところだった。少し落ち着こう。
存在も、見えないものであろうとも無くせば元には戻らない。
━━━番外に、キリンは伝えたいことを持っていく。
─
センは木から降り立ち、ゆっくりと花型に歩いていく。途中、小型が3匹ほどセンに素早くスリ寄って行くが
「うっとうしい!!」
生みの親は、
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