私を探して
『私は貴方に動いて欲しくはありません。』
アリツさんは言う。
『私なら貴方のために動かずにはいられません。』
キリンも言う。
─
少し話し込んでしまったが、この日はセンの住処で床に就いた。
周りの草の匂いがなかなか心地いい・・・。お陰でよく眠ることができた。
次の日、話し合って私とセンはそのセルリアンの手掛かりを探すことにした。時には二手に分かれて探索を拡大。
パトロールを得意としている子にも協力を仰いだ。
私もまた、これでも顔の広さには自信があるからね。センにささやかな対抗さ。
「パトロールは任せて。ボクはこれでも汚いモノの匂いには敏感だから」
今回の元凶は、セン自身がトドメを刺さないと意味がない。
だから絶対に無理はせず、見つけたら即遠吠えで知らせるように釘を打っておいた。
もう一人ハンターの、強いフレンズといる知り合いもいたけど彼女には声をかけないで置いた。
きっと、無理をして倒してしまう。しかも彼女らもまた、私たちに応援を要請しないで倒しに掛かるだろう。
危険な目に合わせたくないからか、はたまた私たちに手を煩わせたくないからか。
どっかの誰かさんみたいに。
これだとセンの願いも叶わないしね。
「すみません・・・私はあまり悪い出来事への感が良くないので・・・。」
何故かセンが謝ってくる。気にすることはないそんなモノ、個人の性質によるものなのに。
その感も、オルマーの方が上だったのかな。
まぁ探索は耳と鼻が利く私たちがメインだ。
フレンズがよく集まるところで聞き込みをしていたが、こんな事を聞いた。
・行方が分からないフレンズがいる。
・知り合いのフレンズによく似た動物がいた。
・知り合いなのに自分を忘れている子がいた。
大方、確実に奪われている子がいるのだろう。
3つ目に関しては、奪われた後に偶然別個体にサンドスターが当たって新たなフレンズに成り代わったというところか。
この日はセンの方も目立った目撃情報は見つからず、次の日に探索をすることにした。
次の日もその次の日も、地道に聞き込みと探索を繰り返して・・・
夜は隠れ家になるセンの住処で休息をとって。
もちろん、パトロールの子にもしっかり休むよう遠吠えで伝えたよ。
もし何日も見つからないようなら、ハンターにも目撃情報を聞くことにした。
センは嫌そうな顔をしたがやむを得ない、もしかしたらもう討伐されている可能性もあるから。
夜に休息を取っているうちも、私は少しでも上達するように絵を描いていた。
夜目もせっかく利くんだしセンのことも描いていたよ。寝姿とかね♪
彼女は、確かにギザギザしている部分が多くて描きづらかったのは事実だ。
でも、だからこそ彼女を活躍させられればインパクトが強いと言う確信を感じていた。
初めて出会ったときも、冷静だけど無鉄砲でかつ怖い一面があって、でも誰かと一緒に居たいと無意識に思っていそうなピュアな彼女に、惹かれていたのかも。
─
「センは、先生が描くものでまず一番活躍させたかった人物なんですね!!そのギロギロが一段落したら次は私のお話も描いてもらいたいです!!!」
なるほど、キリンはどうもセンに先を越された気持ちなんだな。センを描きたいっていうのも事実だ。
でも大丈夫。
キミにはキミの個性と感性があって、それは何でも屋でさえ勝ち得ないものだから。間違いなく。
「はいはい分かったよ。キミにも私はだいぶ助けられているからね。」
この瞬間キリンは少しビクッとした。まぁ私はさらに続ける。
「題名は決まっていないけど、実はキリンとの話の構想はだいぶ出来上がっているんだ。
何処かのフレンズが、もう書いているのかもしれないけどこちらも早く仕上げを描かないとね。
次はキリンが私の中で一番になるはずさ」
この瞬間のキリンはとうとう顔を赤らめ、もう文章では表せないくらい狂喜乱舞していた。
あのメガネの猫の子(仮名)も真っ青なくらいに、きっと。全く…
「あぁぁ・・・キリンさん落ち着いて!!?ロッジは壊さないで下さいよ~!?」
流石にアリツさんも慌てている。キリンはこれでも力が強いからね・・・。
もちろん、話にはアリツさんにも登場してもらおうかな。
─
でも、ある種私にとって平穏の終わりはとうとう訪れた。
大体5日くらいして・・・その時が来たんだ。
早朝からいきなり、パトロールの子の遠吠えを聞いた。元凶らしき存在を見つけたと。
まさか、夜通し探し回っていたのか。無理はしないようにと言ったのに・・・。
方角は、サンドスターが吹き出す火山の向こう側にある崖下の大きな森林。ここからまぁまぁ距離はあるか。
因みに、博士たちのいる場所とは関係ないよ。
センを起こして情報を伝える。明らかに普通ではないやり方をするセルリアンを発見したと。
「そうですか。もしかしたら、今日で私の目的は終了を迎えるのかもしれませんね。
オーダーを終えるまでが仕事・・・さぁ行きましょう」
「この子も、連れて行くんだね?私が持つよ、さぁおいで?」
そう言って元オルマーを担いで現地に向かう。
いやね、オルマーは鎧皮だから相当重かったよ・・・。
・・・
日が一番上まで登る手前くらい(ヒトで言う、11時頃か)に到着。
現地で到着した先、木々にもたれるようにパトロールの子がいた。
が、なにか様子がおかしい。ケガしている様子はないが・・・
「あのセルリアンと対峙しているだけで、何故かボク疲れて力がでない・・・。何とか逃げたけど触手に捕まったらもうだめだよアレ、身体が痺れる・・・ごめんね少し後ろへ引かせて」
そう言って一旦後ろへ離れていく娘。多分遠吠えでセルリアンにも場所がバレてしまったのだろう。申し訳ない・・・。
「見たところ、彼女はサンドスターを消費していた。それと何か自由が効かない感じだったな。
このままだと、彼女もオルマーのように奪われていただろう。
セン、相手の得体が知れないけどそれでも行くんだね?」
「口より私は行動で示します。オオカミは、危なくなったらすぐに逃げてください。
この数日、いい時間を過ごせました。もっと思い出繋ぐため、此処で私の因縁は断ち切ります。」
全く・・・、仕方ないよね。元オルマーを隠れられる安全な場所に置いて私たちも行くことにした。
「待ってください。」
行こうとして、不意にセンが引き止めてくる。
「この件が解決した後、もし私を題材にお話を描いてくれるのなら。
私から離れた場所で居を構えて執筆してくれませんか?」
投げられたのはセンからの要望。
「ん、それはなんでだい?」
「きっと離れた場所であろうとも、オオカミの描くものであれば絶対何処へでも伝わります。
その証明として直に教えてもらうよりも、離れた場所から広まったオオカミの創作品を手に入れたいと思ったのです。」
それもまた面白いよね。でも、
本当はこの時の「なんで」に、2つの意味を込めていた。
何故離れた場所なのかと、そしてもう一つ。何故センを描こうと考えていたことが分かったのか。
「分かったよ。その時は、次はキミが描いている私を見つけて欲しい。きっと待っているよ」
お互い目指すもののため、2人で元凶へと駆けていく。
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