第32話 螺旋の会
「それで長瀬さん。例の写真は持ってきてもらえたかな?」
「はい。でも、何に使うつもりですか?」
「ありがとう。今から説明するよ。長い話になるけどね」
急に話を切り替えた夕奈は、僕を見下ろす。先程とは打って変わり、その目は真剣だ。
「さて、朝斗。ボクらのお父さんの行方について、話をしておく必要がある」
「父さんのことか?」
「うん。お父さんは『朝斗』を殺害した後、姿を消した。すぐに指名手配を受けたけれど、その後の行方は掴めていない。警察の調べでは、『螺旋の会』という新興宗教に匿われているそうだよ」
そういえば今朝のテレビで、そんなニュースを報道していたな。……ん、新興宗教? 昔、どこかで聞いたような覚えがあった気がするぞ。
長瀬が、ベッドの正面にあるパイプ椅子に腰かけながら、補足説明をする。
「『螺旋の会』とは、三十年ほど前に生まれた団体です。輪廻転生が本当にあると信じ、幸福な来世を迎えるために、現世を生きています。ですが、問題はその方法で、自分達の来世を幸福なものにするために他者を生贄として、彼らの崇める『神』とやらに捧げていると聞きます。全ては自分達信者の来世のため、という利己的な思想の宗教団体です」
「へえ。詳しいな、長瀬」
「私、刑事ですから」
刑事? 十四年前の淑やかな雰囲気からは、まるで想像できない職業だ。まあ、そのスーツ越しでも分かるほどの鍛えられた肉体なら、上手くやっているのだろう。
「そんなに驚くことでしょうか」
僕の内心など知る由もない長瀬は、細い目をさらに細める。ただそれだけのことなのに、僕は大蛇に睨まれたかのような心地に襲われ、冷や汗が顔中から噴き出してきた。やはり怖すぎるぞ、長瀬。
「長瀬さんは、ボクらのお父さんの行方を追っているんだ。彼女の場合、この事件と無関係ではないしね」
「白鷺幸太郎は、私の兄の仇ですから」
長瀬が夕奈の言葉を遮る。気づけば、彼女の纏うオーラが一瞬にして密度を増していた。まさに、静かに燃え上がる黒い炎だ。殺意にも似た強い意志で、長瀬の全身が漲っているのが分かる。
「兄は十四年前、白鷺幸太郎の実験によって、前世の記憶を思い出し……その三日後、狂人となって自殺しました」
そうだ、その翌日にニュースで、あの実験の被験者が一人自殺したと報じていた。その自殺した人の名前は、確か「長瀬」。やはり、長瀬のお兄さんだったのか。
不意に、首を万力で絞められたかのような感覚に襲われた。呼吸が満足にできず、膝をつきそうになる。この苦しみは、僕が罪を忘れないようにと、手錠をはめられているようなものだろう。僕は逃げられない。「朝斗」だったころの愚行から、目を背けることを許されないのだ。
「朝斗? 大丈夫かい、顔が真っ青だよ」
夕奈が心配そうにこちらの顔を覗き込み、背中を摩ってくれる。僕は安心させるために、首を左右に振った。
「大丈夫だ、気にするな。……あの実験では、長瀬も被験者になっていたんだよな」
「ええ。今でも前世の記憶は、頭の隅にこびり付いています。精神科の病院でカウンセリングを受け、薬を飲むことでどうにか落ち着いていますけど」
十四年前の長瀬は、錯乱ぶりが尋常ではなかった。僕もそれに近い状態だったから、気持ちが分かる。今は平然としているが、精神安定の薬を飲んだ程度で治るものではないはずだ。未だに前世の記憶がフラッシュバックするのかもしれない。
「だが父さんの研究はあくまでも、前世の記憶を思い出すためのものだ。その『螺旋の会』とかいう新興宗教が掲げる、来世がどうのっていうのとは、ちょっと方向性が違うんじゃないのか」
「確かに十四年前の時点での白鷺幸太郎の研究は、前世の記憶についてのものでした。ですが、ある信者を逮捕して尋問した結果、その研究成果をもとに、大幅な発展をしていることが判明しました。具体的なことまでは、その信者も知らないようでしたが。ただ一つだけ確かなのは、現在行われている研究が、本格的に来世についてのものに移っているということでしょう。彼は『螺旋の会』からすれば、この上ない人材といえます」
僕の質問に対し、長瀬が忌々しげな口調で答える。
そういえば父さんは、過去も未来も思うがままにしてみせる、などという発言をしていた。
「なあ、もう一つ質問してもいいか」
「うん、ボク達に答えられることならね」
「十四年前、父さんは前世の記憶についての研究を、大々的に発表していただろ。研究を悪用する人間がいるんじゃないのか」
僕も長瀬も、前世の記憶を思い出すことの恐怖をよく知っている。あれと同じことを日本中の人々が体験すれば、国内は大パニックに陥るだろう。それを意図的に起こそうとする者がいてもおかしくはない。だが、こうして皆が日常生活を送っていられるのには、何か理由があるのだろうか。
僕の質問に対し、夕奈がしなやかな腕を組みながら頷く。
「十四年前、朝斗を殺した後、お父さんは失踪した。その際、自分のパソコンのハードディスクを抜き取っていたんだ。おそらく、そこに研究の核心が入っていたんだろうね。だから、第三者がそのまま実験を模倣することはできないらしい」
「白鷺君の言う通り、世間では白鷺幸太郎と同じことを実践してみようという輩が、続々と現れました。ですが、どれも失敗に終わり、模倣犯達は逮捕されました。失敗の理由は、模倣犯を含む研究者達が、誰も白鷺幸太郎の研究内容を解明できなかったからです。失踪前、白鷺幸太郎は大学で自身の研究を発表していましたが、研究の肝心な部分を公表していませんでした。世界中の研究者が未だに解き明かせないのですから、白鷺幸太郎が人並み外れた人物といえるのでしょう」
夕奈の説明を、長瀬が引き継ぐ。模倣犯達による被害者は、どれほどの数だったのだろうか。その全てが、父さんと僕の犯した罪のとばっちりだ。
「そうして、前世の記憶に対する人々の関心が薄くなっていったころ……『螺旋の会』が本格的に動き始めたんだ」
「『螺旋の会』が本格的な活動を始めたのは、ここ三年ほど前のことです。先程の模倣犯だった者達も、研究の知識を得るために入信しているようです。厄介なことに、それが『螺旋の会』の活動を広げる要因にもなっていますね。自分達の来世のための生贄に、と見ず知らずの他人を拉致しています。誘拐された人は、数日後に遺体となって発見されてきました。判明している被害者だけでも、四十名を超えています」
「亡くなった人達の遺体はどれも、致死クラスの強い電流を流された痕があるらしくてね」
電流? まさか。目を見開く僕を見て、夕奈が重々しく頷く。
「そう、朝斗を被験体としていたケースと同じさ。お父さんの実験のために、『螺旋の会』の信者が、定期的に被験者として誘拐しているらしい。今朝も少し説明しただろう?」
父さんに協力者がいる、って話か。
「ですが、『螺旋の会』の尻尾は掴めていません。これまでに末端の信者は何人か逮捕し、彼らを自白させて得た情報をもとに、教団本部を突き止めたことはありましたが……幹部を捕まえることには成功しながらも、肝心の白鷺孝太郎には逃げられました。しかも国内に散らばった隠れ信者達が手を貸しているらしく、白鷺孝太郎は残った信者達に守られています。彼らを駆逐するどころか、信者の数は年々増え続けているのが現状ですね。おかげで、あと一歩のところで追いつめることができません」
自分の無力さに腹が立っているのか、長瀬の声に苛立ちが混じる。
「捜査の手掛かりとして注目しているのが、生贄の拉致実行部隊の一員、と見られる男です。現在、指名手配中で、これがその写真です」
長瀬が、スーツのポケットから一枚の写真を取り出す。写っている人物の歳は六十代後半、といったところだろうか。厳つい岩のような顔の男だ。長瀬が武者なら、この男はまるで激化する戦争の裏で汚れ任務を請け負う古兵のようだった。右頬に長く深い傷があり、強面に一役買っている。
いや、ちょっと待て。どこかで見覚えがある気がするぞ。
「男の名前は、守岡誠。三十年前に息子と娘、次いで妻を失った後、消息を絶ちました。しかも、白鷺孝太郎とは当時、自宅が近所同士だったようですね」
三十年前って……脳裏を過った記憶が、一つの可能性を掘り起こす。
まさか。まさか、まさか!
「『お父、さん』?」
驚愕のあまり、思わず僕は言葉を漏らした。それを見た長瀬が、怪訝そうな顔をする。
「いえ、白鷺幸太郎の顔は、この男とは違いますけど」
「違う。僕の、『白鷺朝斗』のさらに前世で、この男は実の父親だったんだ……っ!」
驚く僕を見ながら夕奈はコーヒーに口をつける。彼女の方は、僕の反応を予期していたように落ち着いていた。
「やはり、ね。初めて『守岡誠』の名前を知ったときから、ボクも色々と調べていたんだ。朝斗が昔してくれた前世の話を思い出して、もしやと思ってね。長瀬さんに来てもらったのも、朝斗にこれを見てほしかったからなんだ。もしもボクの予想が当たっていたら、何らかの形で長瀬さんの捜査の役に立つかもしれないからね」
「どういうことですか、神楽崎さん?」
話が読めない様子の長瀬が、眉を寄せる。
「朝斗がお父さんの研究の被験者だった、っていう事情は長瀬さんにも以前話したことがあるだろう? その結果、朝斗の前世は守岡誠の息子、守岡信太だったことが分かったんだ。ちなみに朝斗の話では、守岡信太の姉である守岡雅美は、前世のボクだったらしくてね。しかも、その二人はボクらの父、白鷺幸太郎に研究の被験者として利用されていた。その結果、精神を病み、心中自殺したんだ」
近親相姦をしている弱みを握られた、とまでは夕奈も言わなかった。彼女は細い顎に手を置き、「ふむ」と息を吐く。その仕草が、まるで推理ドラマに登場する探偵かと思わせるほど、とても似合っていた。
「これでは、まるで全てが、ボクらのお父さんを中心に動いているかのようだね。でも、引っ掛かるな。守岡誠は、守岡信太と守岡雅美の自殺の原因が、ボクらの父にあるとは知らないんだろうか」
「心中自殺の際、二人は遺書に『二人でこの家に生まれて来て、ごめんなさい』とだけ記していた。父さんのことは何も書いていなかったんだ」
死んだ守岡信太の最後の記憶を紐解きながら、僕は夕奈の説明を補足した。
今は眠っている守岡信太の心の内を、今なら理解することができる。彼は、姉と交際していた事実を、死後も他の人に知られたくなかった。自分だけでなく、姉や両親まで後ろ指を指されるのではないか、と考えたのだろう。だから、遺書には一言だけ謝罪の文を書くだけで、精いっぱいだったのではないだろうか。
長瀬は、スーツ越しでも分かるほどの、野生の雌豹のごとき引きしまった腕を組む。
「その後、妻まで失い、心の拠り所をなくして『螺旋の会』に入信、ですか。そこにいるのが自分の仇とは知らずに」
「十四年前、『螺旋の会』の連中は父さんのもとを訪れていた。そのとき偶然、僕も出くわしたんだが、そいつらの中に守岡誠もいたんだ」
僕は十四年前の記憶を、必死に手繰り寄せる。あのとき、白いスーツを着た男達が我が家を訪問していた。やつらは父さんの研究に興味を持っていて、協力を要請するような話をしたのだ。その中に、守岡誠もいた。他のやつらは、僕が父さんの息子であることを知った途端に媚を売ってきたが、守岡誠は不機嫌そうにしていた覚えがある。
「守岡誠はあのとき、『家族と再会するために入信した』とか、『そのためなら荷物持ちでも汚れ仕事でもやる』みたいなことを言っていたはずだ」
「家族と再会、ですか」
僕の話に対し、長瀬は不可解そうに首をひねった。その隣で夕奈が神妙な顔つきをする。
「その話だけでは確証はないから、あくまでもこれは憶測に過ぎないけど。『螺旋の会』が掲げている目標は、自分達にとって都合のよい来世にたどり着くことだろう? もしかすると、守岡誠にとっての理想の来世は、『死んだ家族と来世で会うこと』なのかもしれないね」
「それは不可能ですよ。死んだ守岡信太と守岡雅美は、白鷺君と神楽崎さんに生まれ変わり、今ここにいるんですから。正確には、白鷺君も亡くなって、月夜君に生まれ変わっていますけど」
「そこなんだよね。もしも、守岡誠がボク達の前世を知ったら、拉致してボク達に前世の記憶を無理やり思い出させるかもしれない。ボク達二人の人格を消し去って、守岡信太と守岡雅美の人格を復活させる。そうすれば、また家族で暮らせる、とでも考える可能性はある。残る彼の妻がどこで生まれ変わっているのかは、さすがに分からないけれど。何しろ、地球上にある命は何億、何兆もあるからね。どんな生物に生まれ変わっているのかなんて、探し当てられないよ。朝斗が血縁者の月夜に生まれ変わったのは、あくまでも奇跡なんだ」
二人が推理のキャッチボールをする中、僕は血が滲み出るほど強く唇を噛み締めた。
守岡誠の真意がどうであれ、彼が実験の生贄を拉致していることは確かだ。その発端となったのが、守岡信太と守岡雅美の死だった。守岡信太と白鷺朝斗。つまり、今の事態を引き起こしている原因は、僕にある。
「っと失礼。トイレへ行かせてもらうよ」
そう言って、夕奈が優美な足取りで研究室を出て行った。残された長瀬と僕の間に、何とも言えない硬い雰囲気が漂う。だが、彼女には勇気を出して言わなくてはいけないことがある。
「長瀬」
「何でしょうか、月夜く――いいえ、白鷺君」
「あの実験は、僕が長年父さんに協力していたから成功してしまった。つまり、長瀬のお兄さんを間接的に殺したのは、僕だ。お前の仇はここにもいる」
僕の告白に対し、長瀬は冷徹な目で射抜いてくる。それを僕は正面から受け止めた。磔にされた罪人が、糾弾の槍を受け入れるかのように。
「神楽崎さんから話は伺っています。神楽崎さんを巻き込むのが怖くて、嫌々実験に協力していたそうですね」
「ああ。僕があのとき、警察に届け出ることを決断していれば、こんなことにはならなかった。僕も、同罪なんだ」
「そうですね。同罪です」
罪の懺悔を終えた僕は立ち尽くす。たとえ、ここで絞殺されようとも文句を言えない立場だ。対する長瀬は、平手打ちをしようと右手を構えた。
そのまま、しばらく時間だけが過ぎていく。恐る恐る僕が見上げると、長瀬はぐっと何かを必死に飲み込もうとしていた。それから彼女は深呼吸し、叩くはずだった右手を僕の頭に触れる。さっきよりも、少しだけ優しい手つきだ。
「ですが、白鷺君を罰することはできません。前世の罪まで裁くなんて、そんなことをし始めたらキリがありませんから」
「長瀬」
「白鷺君。前世はあくまでも前世なんです。私も、前世の罪に脅かされながら生きています。ですが前世に、後ろに怯えながら生きていても、仕方がないじゃないですか。あなたは、『神楽崎月夜』として生まれ変わりました。なら、今のこの現実を精いっぱいに生きて下さい。神楽崎さんのために。それが今のあなたにできる、ただ一つのことです」
長瀬の声は鋭く、同時に叱咤の響きがあった。まるで出来の悪い弟の尻を叩く、姉のようだ。昔の彼女からは想像できない強さが感じられる。きっと彼女の言葉は、自身がこの十四年間で傷つき、悩んだ先に行き着いた結論なのだろう。その間、ずっと歩みを止めていた僕とは違う。
僕にできる、たった一つのこと、か。昔、夕奈に同じようなことを言われた覚えがあったっけ。確か、あれは。
(いつまでも前世の柵に囚われていたら、現世を生きるどころではなくなる。今の君のようにね。だから神様は、前世の記憶を封じてくれるんだと思う。前世は前世、死んだときに全て断ち切るべきなんだ。新しい人生は、新しい心で生きるためにあるんだよ)
十四年前も説教され、現在も同じ説教をされたのだ。僕は全く成長していない。だが、こんな僕を叱ってくれる人間がいてくれる。
その優しさに、ほんの少しだけ救われた気がした。
「白鷺君。どうか神楽崎さんを支えてあげて下さい。私もいろいろと手を尽くしましたが、つい数年前までの彼女は空虚な人形のようでした。再び笑うことができるようになったのは、あなた……いいえ、月夜君を産んでからです。彼女の心を救ってあげられるのは、兄であり息子であるあなた以外にいません」
長瀬は僕と同じ目線まで屈んだ。こうして見ると、細い目が優しい光を宿しているのが分かる。僕の記憶の中にある、十四年前の彼女と重なって見えた。
「自宅前にあった貼り紙を見たでしょう? 今も神楽崎さんは、たくさんの敵意を向けられながら生活しています。それでも彼女は、この研究の道を選びました。全てはあなたのような人を、これ以上増やしたくないからだと聞いています」
(朝斗と同じ被害者を作りたくなかった。朝斗は前世の記憶で、あんなにも苦しんでいたからさ)
それは、何でもない風に、先ほど夕奈が言っていた言葉。だが、あいつなりの決意の現れだったのだろう。
「どうか、彼女を支えてあげて下さい。これは彼女の友人としてのお願いです」
「ああ」
頷くと、長瀬は僕の小さな手を優しく握る。この十四年で随分と武骨な手になったようだが、とてもあたたかった。
「わざわざ私がこんなことを言わなくても、白鷺君は神楽崎さんのことを十分大事に想っているのでしょうね。硬い絆で繋がっているみたいですし。正直言って羨ましいです。お二人が一緒に過ごしていた様子を、私はそれほど多く見ていませんが……それでも、やっぱり普通の兄妹よりも仲がいいんだな、って思いましたから。ええと、『魂の絆』でしたか? 双子って、本当に特別な関係なんですね」
「今は親子、だがな」
「そうでしたね」
僕の返しに、長瀬は微苦笑をする。その顔を見てふと、前世で夕奈と三人で昼食を食べていたときのことを思い出した。今振り返ると、大きな事件が起こる前の平和な記憶だ。
「もしかして私の兄も、白鷺君のように何度も生まれ変わっているのでしょうか」
長瀬の呟きには、儚い希望が入り混じっているように聞こえた。
長瀬の兄も、実験で前世の記憶を思い出したまま死んだ。ならば、僕のように前世の記憶を引き継いだまま転生しているのかもしれない。十四年前に、一度だけ会ったときの記憶を掘り起こす。長瀬の兄の、荒々しい獣のような笑み。その獣が妹に深い愛情を注いでいたことは、あのときに伝わってきた。今頃、この世界のどこかで何らかの生を受け、存在しているのだろうか。
「私もお二人のように、兄と再会したいです。兄が私のことを忘れていても」
たとえ、前世の記憶を忘れていたとしても。残された側からすれば、愛する肉親に会いたいという気持ちは変わらないのだろう。夕奈が僕を想い続けていたのと、同じように。
それから少しして、用を済ませた夕奈が素知らぬ風に研究室へと戻って来た。もしかすると、長瀬と二人きりで話す時間を作ってくれたのかもしれない。
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