glitter.
良い願いばかりじゃない。
人を傷付ける願いを叶える訳にはいかない。
叶える願いは誰にも選べない。
そもそも成就質は、願いの枠組よりもずっと少ない。
成就質なんて無くたって、自力で願いを叶える人間は沢山いる。
そんなリゴの言い分が全て正しいことを、メルは頭で理解していた。
でも、正しさなんてものが何の意味も成さないくらい、メルは彼のことが許せなかった。
だって、叶える力があるのに。
持ってるのに。
誰かを、幸せにできるかもしれないのに。
誰かの痛みを、取り除いてあげられるかもしれないのに。
その力を行使しないのは、罪だ。
その日を境に、メルは同居人と一つも会話をしなくなった。
メルは初めリゴのように、何十もの願いの枠組を全て飲み込もうとした。
……でも、できなかった。
願いを抱える怖さを知ったメルの体は、意志とは裏腹にそれを拒絶した。
だから、次の日も、その次の日も、メルは願いの枠組をばら撒かずに、展望室の中に全てを溜め込んだ。
枠組は散らばり、段々と足の踏み場を無くしていく。
リゴはその様子を、何も言わずに見つめていた。
何をしていても、何も感じない。
メルは無心で、枠組を溜め込んだ。
無数の輝きは足元を埋め、嵩を増し、更に高く積み上がっていく。
永遠にも思える月日が流れた。
願いの枠組はついに、天井のない展望室を一杯に埋め尽くした。
行き場を無くした枠組が一つ、零れて地上へと落ちていった。
積み上がった無数の願いの上で、メルは少しだけ泣いた。
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