第2話 かわいいヒロイン希望!

 とにかく俺はそんなわけで街に辿り着いた。

そこそこの大きさ、看板にも絵が多い。

俺は小腹が空いたので露店で試食のじゃがいもにチーズがかかった奴を食べた、旨い。

 この街で暮らすには、ちょっと金がいるな。

 そうだ、酒場でギルドメンバー募集とかよくあるやつ、あれで行こう。

「すいません」

宿の記号がある看板へ入る、背が高く耳の長いきれいな女の人がにっこり微笑んできた。

「いらっしゃい、何にしますか?」

「……あ、あの、こちらでギルドメンバーって……」

思わずどぎまぎしてしまう、女の人は言った。

「あの、路銀が尽きちゃって……」

俺はしどろもどろになりながら言ってみた、こういう酒場とかって、だいたい情報が集まってくるって言うから。

「わかりました、あなたはこの辺りではあまり見ない人ですね。それなら、まずはこれにあなたの名前と、スキルを書いてみて下さい」

……へ?

 いや待て、俺最強になったはずだよな?

 確かめてみよう。

「じゃあちょっとこの剣借りていいですか」

「いいですよ」

俺は立てかけてあった木製の剣をとった。まずは剣、ビュン、木でできた剣は素早く動いた、この音、なかなかじゃねぇ?

 次は魔法だ、この世界魔法はあるのかな?やってみよう。

 精神を集中して、炎を思い浮かべて、いけっ!炎よ!

 ボンッ!

 手の平に小さな炎、イメージ通りにできた、炎、氷、雷……なんだ俺大魔法使いじゃん、どうよ。

 そしたら案の上「あなた凄いのね!」って色んな女の子がちやほやしてくる、異世界転生、最高!!

 大きなおっぱいにたくましそうな女の人とか、金髪の女騎士とか、一見はかなげな回復魔法でも使えそうな服の女の子とか……。

みんなが笑って俺を見ている。

こうやって俺はこの異世界でモテていくのだなぁ、ムフフ。

「では、今まであなたが行ったことを書いて下さい」

さて、無双はここまでとして、やったことなんておふくろに勧められた町内会のボランティアぐらいだけどいいのかな?まぁいいや。

空欄を埋めていく、軽い力仕事、穴掘り、清掃……そういったものがとても異世界でスキルになるとは思えないけれど、何も書かないよりはいいだろう。

「これでいいですか?」

できたのは小さな俺のスキル書。

「あ、はい、いいでしょう、お仕事がありますよ」

 うん?これはまさかまさかの、平凡スキルで異世界チートフラグ?

「そこにいらっしゃる冒険者さんがですね、近くの洞窟に入るので力仕事ができる人を探しておられます。紹介しますね」

よっしゃ!ついに来ました冒険者デビュー!

   

                      ☆

「あたしはミルダ」

「私はエレナ」

「わたしはアイラだよ、よろしくね」

大きなおっぱいのたくましそうな女の人がミルダ、金髪の女騎士がエレナ、一見はかなげな回復魔法でも使えそうな女の子がアイラ、というらしい。

みんなそれなりに可愛い、パーティーには入れたいタイプ。

にこっ、アイラが俺に微笑んでくる。やべぇ、俺産まれて初めて女の子に笑いかけられたかもしれない。

 てか受付のもちらちら見て来るし、何でだろう……。俺そんなにイケメン?これも独り言なのにそんなに笑うなんて俺って罪なオ・ト・コ。

「ほらあんたも挨拶しな」

「俺は……」

さて困った、剣と魔法の達人ならもっとらしく見えないとなぁ。

 ファンタジー?ファンタジー名ねぇ。

「うー?」

無邪気にアイラが声を出す、彼女はまだ幼いのかなぁ。

「竜……」

俺は名前を考える、ドラゴン、どうだなかなかにかっこいいだろ。もうちょっと考えよう。

「りゅぅ?」

「リュードだリュード、よろしくな」

俺は手を差し伸べる、

「りゅーど!りゅーど!」

アイラは飛び跳ねて喜んでいる、あぁ可愛いなぁ。俺はロリコンじゃないけれど、アイラならOKだ。

 おっと、建物が古いのかな?蜘蛛が。

 ……蜘蛛が、アイラの目の前に糸を貼って降りてきて、アイラが気づかない。

「ほら、蜘蛛がいるよ」

俺はとっさに取り除いてあげる、アイラはただニコニコしている。もしかしたら、もしかして……。

「あの……」

俺はミルダさんをちょっと隅に呼んだ。

「もしかして、アイラちゃんって、目が……」

「あぁ、見えないよ」

ミルダさんはあっさり言い放った。やっぱり。

「アイラだけじゃないさ、あたしは強くなるために「美しさ」を手放し、エレナは「やさしさ」を手放した。この世界じゃよくある話だろう?あんたのその顔だと、よほど欲しいものと交換したねぇ、まぁ細かくは聞かないさ。雇ってあげる、魔法や剣は別料金って書かれてたし、最初だからお試しでね。どうだい、いい話だろう?」

まぁ、無双できないのはつまんないけれど予算があるだろうし、そう言うミルダさんは戦士の誇りに満ちているように見えて、美しくないかと言えばそうでもないけれど、「いえ、綺麗ですよ」と俺が言ったところで「どこでそんなお世辞覚えた?全く」と豪快に笑われてしまうだけだった。

 とにかく、俺たちはちいさなパーティーを組むことになったんだ。 

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