転生したがやっぱり俺はブサイクだった

夏川 大空

第1話 お約束のあのシーン

 俺は二十代半ばのどこにでもいるニートだ。


 特に頼れる裕福な親も、スキルなんてものもない、せめてのの頼りはわずかな貯金だけ。


  あぁ、つまんないな……ぼんやりそんなことを考えていると、ふと子猫を庇って道路に出た子供を見た。


 俺は気が付くと子供を抱えて転げだしていた。


 俺はブサイクだ。『ギャグマンガみたいな顔』だと人には言われる。


 でもこういう時は、かっこよく子供を助けて、女子高生に『すごい』って言われたい。


 ドンっ。


 トラックの音がする、幸い、子供も猫も無事だ。


 俺はそれを確認するのと同時に、意識が薄れていくのを感じた……。




                ☆





「……さん」


なんか声がする、どこだここ?真っ暗だけど?


「呼び名がわからないのですけど、……さん」


うるさいな、俺は眠いんだ。


「だから貴方ですよ!」


ドンッ!思いっきり叩かれて目が覚める。真っ暗い空間の、上も下もない、魔法陣があちこちに浮かぶ空間、異世界転生もの、そんな感じかも、ん?ってことは?目の前の白いワンピースの女の子、あなたはひょっとして。


「わたしは女神です、あなたはわたしの手違いで今瀕死の重傷です」


「……重傷?死ぬんじゃなく?」


あれ、なんか思っていたのと微妙に違う響き。それじゃ転生してニート脱せない。


「はいそうです、ちなみにあなたは貯金の残りの半分であるものを思いつき、それなりに幸せになります」


え、なんかぱっとしないな、いやだよ、俺は六本木にビル立てるんだ。でモテるんだ。


「ちなみに、お金で女の子にモテても嬉しくないですよ」


気持ちを読まれた!つうか、そんなの持ってる人のいいわけだと思わねぇ?


「あなたには、傷が治るまで、本来の世界とは違う場所でしばらく暮らしてもらいます」


えぇ、どんなところだろうとニートよりはマシだろうし、ずっと異世界に行ってたいなぁ……。


「そのために三つ願いを叶えましょう。ですが、『大きな力は大きな代償を求める』ものですよ、どうか、よく考えて下さいね」


女神は微笑み、俺は言うことをもう決めていたように、大きく息を吸って言った。


「なら決まっている、まずは知恵!そこの世界の言葉がわかる、大学行ったぐらいの!」


「はい、いいですよ」


女神は微笑む、うん、簡単過ぎたかな?


「それから力、魔法があるのなら大魔法使いに、もしくは剣最強に」


「可能です、ですが……」


ちょっと顔が曇った、まぁいいや、駄目だって言わないし。


「あとは顔!人間型!美しく、カッコよく、たくましく……」


スライムとか蜘蛛とか嫌だもんな、女神は泣きそうだ。


「わかりました、善拠します……」


悲しそうに言葉を濁す、俺そんなにたいそれた願い言ったかな?でもこれだけは外せない。


「では次の世界へ。傷が癒えたら帰るのですよ。何せあなたの作ったものは……」


途切れていく女神の声、温かい光に誘われる。


 というわけで、俺、異世界、行ってきます。




                ☆




 目が覚めたら森の中、どこだここ。


 馬車が来る、西洋かも知れない。


「あの~」


そこで俺は馬車を操る男に声を掛ける。耳がとんがって身体が小さい、RPGのゴブリンみたいだ。


「この辺りに街は?」


「あぁそれならこの道ぞいに歩けばすぐさ、にしても、ヒッヒヒー」


小男は笑って去って行った、なんだよなんか腹立つな。それともなんか問題のある街なのかな?


 まぁいいや、俺が教えらえれた通り歩くとちばらくして街が見える。


 西洋中世のような街並み。


 でもそこにいるのは『エルフ』みたいなのとか、人間じゃないらしいのもわらわらいた。


 色んな種族が仲良く暮らしているみたいだ、こういう街、俺好きになれそうだ。そんなには変な街じゃないよな?


 でも街の皆が、笑っている。


 比喩じゃない、明らかに俺を指さし笑い出す者までいる始末だ。


 いやまておかしいだろう、今の俺はイケメンになったはずだ。


『大きな力は大きな代償を求める』


女神の言葉を思い出す、これはひょっとしたらひょっとしての。


 ふと見れば道沿いに水瓶。


 かがんだ先に映ったものは、


 あいかわらず、見慣れたギャグ漫画顔だった。

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