第9話 スキルレベルアップと4階層
「っとこれで終わりだ!」
ダンジョンの中を刀の刃の煌めきが弧を描く。周囲にいたスライムたちは為す術もなくその体を両断され光となって消えていく。あとには緑色の魔石だけが残った。
「ふぅ。3体くらいならもう慌てずに倒せるようになったな!【身体強化】とスキルの補正のおかげで回天を使うのも難しくないし、スキル様様だよほんと。」
京介は落ちた魔石を拾ってリュックにしまっていく。すると身体が軽くなる感覚に身を包まれる。3階層に入ってから一度もステータスを確認していないので、一度【身体強化】を切り、ここで確認することにした。
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名前 :
位階 :G
レベル:42
体力 :860/860
魔力 :468/620
スキル
【取得経験値10倍】
【剣術:素戔嗚流 Lv.1/10】
【無属性魔術 Lv.2/5】
【心眼 Lv.1/3】
【鑑定 Lv.1/3】
【扉移動】
称号
【世界初の探索者】【神剣保持者】
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「おおっ【無属性魔術】のスキルレベルがあがってる!何が使えるようになったかな…………ん?【
京介は【無属性魔術】に意識を集中し、新たに覚えた魔術を思い浮かべる。すると細かい魔術の内容が浮かんできた。
まず、【魔纏】についてだが、魔力消費が100ととても多いがその効果として消費した分の魔力を纏い、一度だけどんな攻撃をも完全に防ぐことができるというすごいものだった。これを使えばたとえ致命傷になるような攻撃が来たとしても一度だけなら防ぐことができるということで、京介の心配していた防御面に活かせる魔術だった。
次に【魔手】についてなのだが、魔力消費50とこちらも中々魔力消費の大きな魔術になっているのだが、見えざる手をふたつ召喚して自身から5m範囲内で自由に動かせるというものだった。最初は手に魔力を付与するものかと思ったが、そうではなく自分の両手のようなものを召喚する魔術だった。いまのところうまい使い道は思いつかないが、この先役に立つ場面が無いとは限らないのだから、持っていて損はないだろう。
「特に【魔纏】は助かるな!今の俺だと最大で6回使えるからよほどのことが無いときは控えた方がいいかな……?いやでもいざというときに……」
【魔纏】は便利な魔術だが魔力消費が多いので、使用できる限界がある。もちろん魔力は休めば回復するだろうが100という大きい数字は無視できない。
「まぁ最悪、【心眼】で警戒して危なくなったら使おうか。」
そう言って京介は立ち上がると、再度【身体強化】をかけなおしダンジョンを進む。道中4体の緑スライムの群れに出くわしたが回天の餌食になった。
「ん、行き止まりか。ってことはここが……」
京介が行き止まりの壁に近付くと、壁の一部が蜃気楼のように揺らめき消えていく。後には下の階層へと続く階段が現れる。京介は水を飲んでから時間を確認して4階層へとつながる階段を降りる。
「ん、ちょっと熱いか?ってことは火属性?」
4階層も相も変わらず洞窟の様相を見せるダンジョンだった。違うところといえば、今度は風ではなく暑さを感じることだった。
「これは……壁自体が温かいのか。地面からも感じるし、ほんとダンジョンってどうなってるんだか……」
そう言いながらステータスを開き魔力の残量を確認する。レベルアップを重ね増えた魔力だが、階層ごとに1時間ほど【身体強化】をかけて走っているので単純計算で60の魔力を階層ごとに使う計算になる。現在の残り魔力量は411で4階層も突っ切るのであればここからさらに60は最低でも引かれ、350ほどになるだろう。安全のためにも【魔纏】を二回分は残しておきたいので、使えて150。
「うん、4階層もいけそうだな。できるだけ戦闘は短時間にしたいから回天は抜いたまま走ろう。」
京介は回天の鯉口を開き抜き身のまま4階層を走り始める。【身体強化】を使用しての走行なのでかなりの速度が出る。またレベルが上がったステータスのおかげで地の身体能力も軒並み上がっている。本気で走ればおそらく高速を走る車よりも速く走ることができるだろう。腹筋も割れ、意識せずとも背筋が伸びているおかげかバイト中に女性のお客様から声をかけてもらう場面が増えたようにも思う。
「ん、モンスターの気配か。またスライムだな……赤いってことはやっぱり火属性か?」
自身の身体のポテンシャルについて考えていると、前方から二体分のモンスターの気配を感じ取る。気配に近付くと、今度は赤色のスライムが現れた。4階層の特徴などから考えて火属性だろうか。赤スライムとの距離が狭まるにつれ、その体からも熱を感じる。
「っせ!ほっ!……うん、やっぱ回天はチートだなこれ。」
赤スライムに近付いて回天を二振りして残心をする。刀の扱いはしたことがないが【剣術:素戔嗚流】のおかげで自分の身体の一部かのように扱うことができる。そのおかげもあるだろう、膝丈ほどの赤スライム二体も秒殺だった。京介は周囲を警戒して、モンスターの反応が無いことを確認してから【身体強化】を切る。
「うん、赤い魔石ね。【鑑定】っと……」
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火の魔石
位階:G
位階:Gにあたる火属性のモンスターの魔石。様々な素材として使用可。
また、魔力を込めることで火を生じさせることができる。
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「やっぱ火属性か。じゃあ洞窟の特徴なんかがそのまま属性に関係してる説はあってそうかな~。」
そう言いながら火の魔石をリュックへしまう。これまでに普通の魔石以外には、水・風・火の魔石がある。おそらく他にも属性はあると考えている京介は、次の階層が何属性を特徴としているのか期待しながらダンジョンを進んでいった。
「あ、そういえば新しく覚えた【魔手】使ってみるか。え~っと、【魔手】!おおっ?!」
【魔手】を発動すると目には映らないが、明確に自分とつながった魔力の塊のようなものが中空にふたつ浮かんでいるのが分かる。頭の中でこっちに行け、こう動けと念じるとその通りに動くのが感じ取れる。ちゃんと感触があるのが不思議な感覚だが、動かせる範囲も広くまさに自分の手のように扱えるので便利だし、戦略の幅が広がりそうだ。
「まぁでもスライム相手だと回天だけで無双できちゃうからなぁ……」
京介はそう言いながら【身体強化】をかけなおして4階層の奥を目指して走り出す。京介はモンスターを警戒しながらダンジョンを進んで行く。そんな中で京介は探索者としてのプランを考えていた。探索者になって他のダンジョンに潜るのは、神様に頼まれたこともある上、自分も興味があるので旅費さえどうにかできればすぐにでも行きたいくらいだった。だが早くても探索者として活動できるのは年明けからだし、バイトやお金、部屋にある扉の問題もある。
「東雲店長はコンビニどうするんだろうな……」
探索者協会でダンジョン産の資源を買い取るようなので、ここで得た魔石やほかのダンジョンに入って手に入れる資源を売れれば稼げはするだろうが、どれくらい儲かるのかはまだわからないし、そもそも持ち運べる量もたかが知れているのだから最終的には魔石のような小さくて大量に持ち運べるものが収入源になりそうだ。
「まぁ神様が用意したものなんだし案外何とかなるだろ!資源に関しても元々あった地球の資源はあるんだしなんなら少し安くなったりしそうだな……」
そんなことを考えながら京介は4階層を進んで行くのだった。
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