第7話 探索者カード
京介は焦っていた。事前に探索者としての免許のようなものが配られることは知っていた。神様からもお願いされたこともあり、もともと探索者になるつもりであったから他のダンジョンに潜るためにも探索者にはなっておきたかった。
だがしかし!
「っすーーー……」
「ん?なんだ?まだ緊張してんのか?」
青ざめた顔で通路を進む京介を見て、隣を歩いていた東雲が気に掛ける。他の面々は、意気揚々と自身のステータスを見ながら通路を進んでいた。
「あ、いえ……ステータスを登録すると聞いてちょっと……」
「なんだー?そんな悪かったのか?しゃーねぇーなー、ダンジョン潜る時は俺が一緒に潜ってやるから元気出せって!」
そう言いながら東雲は京介の背中をバシバシと叩く。面倒見のいい東雲の良いところではあるが、京介の悩みとは少しずれているのが悩みどころである。
「あ、次の方々ですねー。こちらの窓口で皆様の探索者カードを発行いたしますので、こちらの書類に同意のサインをお願いいたしますー。」
少しダウナー気味なショートボブの受付嬢が京介らに書類を配る。そこにはいろいろと書かれているが、大まかにまとめれば
・未成年は保護者の許可のもと登録可
・ダンジョン内から持ち帰るものはすべて探索者協会に卸すこと
・探索者カードの更新は毎月行うこと
・探索者カードはランク分けを行い、高ランクであればあるほど特典を得る
・探索者のランクは貢献度によって分けられる...etc
ほかにもいろいろとあるが、気になるところとしてはこのくらいだった。位階に関しては京介は全く分かっていない現状だが探索者協会はすでになにかを掴んでいるのだろうか。
「はい、皆様のサイン確認できましたー。それでは次にこちらの書類ですねー、こちらに皆様のステータスを書いてくださーい。」
「……ん?」
書いて?ください?
「あの、なにかこうステータスを見る鑑定だとかアイテムがあるわけじゃ……」
「え?あー、いやまだそういうのは見つかってないんですよねー。なので今は自己申告でお願いしてるんですー。」
京介はそれを聞いて心の中でガッツポーズをする。神様の存在とノリから、探索者協会に何か鑑定のアイテムを渡していてもおかしくないと考えていたがそんなことはなかったようで京介は安堵した。
「おっし書けたぜ!お、京介も書けたのか?へへ、ちょっとおねーさんに見してみろよ……な?」
「ちょ、おっさんぽいですよ東雲さん……まぁいいですけど。」
そう言って京介が書いたステータスの紙を東雲に見せる。
―――――――――――――――――――――――
名前 :
位階 :G
レベル:1
体力 :70/70
魔力 :20/20
スキル
【刀術 Lv.1/10】
【心眼Lv.1/3】
―――――――――――――――――――――――
もちろんそのままのステータスを書くわけにはいかないので、かなり削った上でぎりぎり戦えそうなステータスを書いた。
「ふーん、京介のステータスはこんな感じなんだな?やっぱ人によって変わってくるんだなー!」
「そういう東雲さんのステータスは?」
「ん?ああ!へへへ、京介だけに特別だぞ?」
そう言って肩を組んできて、他の人に見えないようにステータスを書いた紙を見せてくる。
―――――――――――――――――――――――
名前 :
位階 :G
レベル:1
体力 :150/150
魔力 :100/100
スキル
【槍術 Lv.1/10】
【体術 Lv.1/10】
【光属性魔術 Lv.1/5】
【先見 Lv.1/3】
―――――――――――――――――――――――
「うぇっ?!めっちゃ強くないですか?」
「あ?そうなのか?まぁスキルは4個もあっけど使ったことねぇからまだよくわからねぇなぁ。」
京介のような特典がないにも関わらず初期スキルが4個もあり、ステータス値が両方とも100以上ある。しかもスキルにある【光属性魔術】や【先見】といったスキルはかなり強力そうだ。
「皆さん書けましたかねー。書けた方からこちらに持ってきていただいて、探索者カードの裏面に写しを取りますので誤字脱字にお気を付けくださいねー。」
「おう!んじゃあたしのから頼むよ。」
そういって東雲は自身のステータスを書いた紙を受付嬢に手渡す。その際に、受付嬢が一瞬フリーズしたように見えたが、京介はそれには気がつかなかった。受付嬢は、素早くステータスの内容をパソコンに打ち込んでいく。すると、パソコンの横に置かれているコピー機のような機械が動き出し、機械の上から1枚の金属製のカードが出てくる。
「えー、東雲さんですね。こちらが探索者カードになりますー。表面のGはステータスにもあります位階を参考にしておりますのでー。次の方どうぞー。」
受付嬢は、東雲の名前が書かれた探索者カードを手渡し、次の人の番を受け持つ。
「はぇー……これが探索者カードねぇ。お、裏面にちゃんとステータス書いてあるわ。」
東雲は探索者カードの裏表を見ながらにやにやしていた。念願の探索者になることができたのだからさぞ嬉しいことだろう。
受付嬢がすばやく他3名の探索者カードを作成し、京介の番が回ってくる。
「えー、最後に京介さんですねー……ん、内容に間違いはありませんかー?」
「え?はい、大丈夫だと思いますけど……?」
京介が真顔で答える。受付嬢は少しだけ京介の顔を見た後、そのままパソコンにステータスを打ち込み始める。京介は密かに冷や汗をかいていたが、ステータスの力なのか表情は平静を取り繕うことができていた。
「はい、こちらが京介さんの探索者カードになりますー。紛失されたら再発行にお金がかかりますのでご注意をー。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
少しの注意と共に京介へ探索者カードを手渡す受付嬢。少しばかり京介のことを見る目が鋭いような感じがしたが、京介は気付かないフリをしながら探索者カードを受け取った。
「えー、皆さんの探索者カードの発行が完了したので本日は終了となりますー。実際に探索者協会を使用してのダンジョン攻略などはー、えーっと……あぁ、年明けからになりますので悪しからずー。」
そういって受付嬢はパソコンの方を向いて、カタカタと作業を開始する。京介と東雲は一度顔を見合わせ、探索者協会を後にする。
「なんかメシ食ってくか!」
「そういえば近くに回転寿司ありましたよ。」
―――――――――――――――――――――――
[──12月27日 15:00 探索者協会 東京本部]
「そうか。では、その3人が有力候補になりそうか……」
「はいー。まぁ気になる奴はいたんすけど確証も持てませんしー……でもまぁその3人は確定でしょうねー。」
探索者協会の協会長室に2人、書類に目を通しながら話をしている者がいた。片方は探索者協会代表であり元陸軍陸将の本場夷蔵。そしてもう片方の人間は、京介らの探索者カードを作成していた元陸軍1等陸佐の
「特にこの3人は初期ステータスも高く、スキルも他の探索者に比べると多い。同性だからチームを組んでもいいだろう。探索者協会の看板になるような探索者になって欲しいものだ。」
そう言って本場は3枚の探索者の資料を机に並べる。その書類に書かれていたのは、
―――――――――――――――――――――――
名前 :
位階 :G
レベル:1
体力 :150/150
魔力 :100/100
スキル
【槍術 Lv.1/10】
【体術 Lv.1/10】
【光属性魔術 Lv.1/5】
【先見 Lv.1/3】
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
名前 :
位階 :G
レベル:1
体力 :120/120
魔力 :110/110
スキル
【弓術 Lv.1/10】
【風属性魔術 Lv.1/5】
【遠見 Lv.1/3】
【気配察知 Lv.1/3】
―――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
名前 :
位階 :G
レベル:1
体力 :80/80
魔力 :170/170
スキル
【火属性魔術 Lv.1/5】
【水属性魔術 Lv.1/5】
【地属性魔術 Lv.1/5】
【魔力促進】
―――――――――――――――――――――――
以上の3名だった。
「ま、それもウチら側の整備が整ってからですかねー。なんでもダンジョンからは未知の資源がとれるどころかー、道具や武器になるものが直接出てくるんですから。今はまだ軍で確保してますけど、そういったダンジョン産の者限定の鑑定機も手に入ったんでしょー?数があればウチに最優先で回してくださいよー。」
そう言いながら穂乃目は手に持っている一枚の探索者の資料に目を向ける。そこには他の探索者とそれほど変わらないようなステータスの普通の青年が書かれている。
(逃がさないよー、イレギュラー君。)
その資料には、京介の名が書かれていた。
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