トナカイ、怒る

鮭さん

クリスマス

 今日は12月24日、クリスマスイヴ。町中ジングルベル鳴り響き、お店はキラキラ飾り付けられている。


「メリークリスマース!!」


 サンタはトナカイが引っ張るソリに乗り雪道をかける。この時期の道路にはちょうどよく雪が積もっているのだ。


 しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん


「さあトナカイよ。これから子供達へあげるプレゼントを買いに行くのだ。街のおもちゃ屋、トイママスへ向かうのだ。そこのT字路

を右に曲がるのだ。」


 しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん、くるり


 トナカイは左に曲がった。右に曲がれと言ったのに。はて、どういうことでしょう。


「ん、おいトナカイ。どうしたのだ。そっちじゃないぞ。引き返しなさい。」


 サンタはトナカイに言った。しかし、トナカイは言うことを聞かない。ただまっすぐ進んでいく。


 しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん


「おい、トナカイ。言うことを聞くんだ。おい、なんか言え、なんか言え!!」


 しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん


 トナカイは何も言わず真っ直ぐに進んでいく。ソリの操縦は実質トナカイが握っているためサンタは何もできない。ソリはそれなりの速さで走り続けているため、降りることもできない。


 しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん


「おい、おい!!トナカイよ!!どうしたんだ、どこへ向かっているのだ。」


 しゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃんしゃん


 しばらくすると、高速道路のICが見えてきた。まさか、入るというのか、高速道路に。怯えるサンタクロース。いかんぜいかんぜ。いかんぜいかんぜ。


 ちゅどーん


 入口のバーを突き破りソリは高速道路へ。


 シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ


 すごい速さで走るトナカイ。しかし高速道路には雪が積もっていない。


 ガタゴッ、ゴゴゴッ、ゴゴゴゴゴッ、ゴゴッ


 アンバランスに走るソリ。今にも壊れてしまいそう。この速さで外に投げ出されたら死、あるのみ。サンタは必死にバランスを取る。


「なんなんだ。トナカイよ!!何を考えてるんだ!!」


「金を出せ。」


 トナカイが言った。


「ど、どういうことだい。」


 動揺するサンタ。


「安すぎるんだ。お前たち、俺たちのことを奴隷かなんかだと思ってないか。人間の最低賃金は1000円だよな。それに比べてなんだ。俺たちは時給100円でこんなに走らされてるんだぜ。俺が悪いんじゃねえぜ。普段俺たちがどんなに訴えてもお前らがまともに聞きいれねえからだ。だからこんな強硬策に出るしかなかった。謝罪の気持ちを込めて、100万寄越せ、100万。」


「た、確かに悪かった。しかし100万なんて持ち金のほとんどじゃないか。そんなに渡したら子供達へのプレゼントを買うお金がなくなってしまう。」


 サンタは反論する。


「うるせえ。ほら、あそこのICで降りなかったらソリは大破する。もう限界だぜ。お前は死ぬことになるぞ。今100万寄越したらあそこのICで降りてやる、さあ、どうする??」


 ガガッ、ガガガーッ!!


 今にも壊れそうなソリ。底がどんどん削れていくのを感じるサンタ。くそ、、子供達の喜ぶ顔より、命の方が大事だぜ、、、、。


 サンタは渋々100万円をトナカイの尻尾に巻きつけました。


 ひょいっ


 トナカイはそれを前に飛ばし、口でくわえました。


「ふがふがふが(確かに受け取った。)。」


 ちゅどーん


 ICのバーを突っ切り、サンタたちは公道へ。しかしトイママスに行ってもみんな分おもちゃを買えない。仕方がないのでサンタは100均で突っ張り棒を買い子供達に配った。不評だった。


 次の年、サンタのソリを引っ張っていたのは馬だった。サンタにとって都合の悪いトナカイは解雇されたのだろう。全くひどい世界だぜ、トホホホホ。







 

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