第2話 初めての授業

初授業の朝は、不思議と早めに起床。普段は目覚ましが鳴ってから覚ますが、今日に限って鳴る前に起きた。

「何でだろ?別に早寝した訳じゃないし。まあいいか、早く起きて悪いことは無いし。」

独り言をブツブツと呟きながら、朝の身支度をして学校に出発した。


学校に着くと、学校前に目時校長が既に来ていた。

「目時校長、もう来てたんですね!おはようございます。」

「おはよう、英先生。そうそう、先生の机の引き出しに「教員バッジ」を入れといたから。この前の入学式のときに渡し忘れてて…。ごめんよ!」

教員バッジとは、生徒が教員と教員以外の学校職員(事務員や私服の警備員など)を見分ける為に着用を義務付けられているバッジ。


「授業が始まります。最初は半田 久留巳(はんだ・くるみ)先生の数学の授業です。半田先生、よろしくお願いします。」

と言い、1組のクラスを抜けて隣の2組で科学の授業を行なった。

「はい、私たち人間などの動物は生きていく為に酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出しますね。

ちなみに、人間が吐き出した二酸化炭素の空気の割合は分かりますか?」

この授業、初回にしては難しいだろ。ましてや爺・婆だし。

しかし、その不安は一瞬のうちに砕け散った。

「だいたい5%くらいかな。空気を吸う前の段階でも二酸化炭素は空気中にごく微量だけどあるからね。」

「正解です。吐いた息(二酸化炭素)の割合は約5%(個人差あり)。その他は窒素や酸素などです。窒素が約8割で酸素が約2割でその他が1割未満(環境により異なります)ですね。」

正解して、吸う前の酸素の事まで正答。失礼な話だが適当に答えたりして間違えるだろうと思っていた。今の正答者は適当に答えたとは到底、思えない。吸う前の酸素を適当に答えるだろうか?僕にはふざけて答えているようには思えなかった。


「英先生、どうでしたか?初めての授業?」

目時校長が嬉しそうな顔で聞いてきた。

「いやぁ~洗礼?を受けました。むしろ、色々と生徒から学ばされましたね。相手は人生の先輩ですからね、今後もそういった「洗礼」を受けるでしょうけどね。頑張りますよ!教師としてのプライドもありますし!」

と答え、俄然やる気が出てきたように感じた。



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