第五話:意外な展開(三太)

     *


 ――密室なワケがない。

 三男の三太は首を傾げた。


 オレは、兄貴から聞いた話が本当なのか確認のためにオヤジの部屋までいった。

 オヤジは、自分が死んだ後すべての財産は何処かの団体に寄付すると決めているらしい。

 まさか、そんなことは――。

 それを直接当人に確かめようと、オレはオヤジの部屋に向かったのだ。

 いつもは必ずカギを掛けているはずのドアにはカギは掛かっていなかった。

 どうしたのだろう――と一瞬訝しんだが、これ幸いとオレはオヤジの部屋に入った。

 ところが当のオヤジは、ドアの近くで首にストッキングを巻いたまま床に寝ていた。

 何ていう変態プレイをしているんだオヤジたちは――と、ほとほと呆れた。

 一度抱きかかえて、起こそうとしたが却々起きないので、仕方がなくドアの横の壁に凭れるように座らせた。

 間違いなくその時オヤジはイビキをかいていた。

 だからその時は、起こさずにそのまま部屋をあとにした。

 オヤジと話し合うのは、明朝でもいいかなと思って――。

 そう、あの時たしかにオヤジは生きていた。

 間違いなく生きていた。


 それなのに何故?

 何故オレが……?


 翌朝早く、話し合うために再度オヤジの部屋に行った。

 いつもなら、もう目が覚めているころだろうと見当をつけて、ドアを何度かノックをしたが、返答が無い。

 ドアノブに手をかけて押してみた。

 開かない。


 ――あれ?


 昨夜、三太がこの部屋をあとにする時にはカギは掛けていない。

 あの後、目覚めたオヤジが閉めた違いないと三太は納得した。


 もう一度押してみた。

 開かない。

 今度は、引いてみた。

 矢張り開かない。

 何度か繰り返しているウチに少しだけだがドアが開いた。


 その開いたドアの隙間から、ドアに寄りかかるようにして横たわるオヤジの姿が目に入った――


 この事件の第一発見者は三太だった。 


 自分が第一発見者であり、通報したのも自分だ。

 三太は何が何やら、どうなっているのかわからなかった。

 そして何故、何もしていない潔白な自分が容疑者としてあげられるのか?

 三太は、あの刑事ちに訊いてみたいと思った。 




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