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 葉月くんは歩き始める。

 恵は下を向いたまま、……葉月くんが遠くに行っちゃう、と思う。でも、恵にはどうすることもできない。

 それから少しして恵は上を向く。

 もう葉月くんの姿は見えなくなっているかもしれない。でもせめて、その遠くにある背中くらいはもう一度見ておきたいと恵は思った。

 すると、大きな交差点の少し先のところに葉月くんはいた。

 葉月くんはそこで足を止めて、そこから昨日の夜のように、冬の夜空に輝く美しい星を眺めていた。

 恵の視線に気がついて葉月くんは恵に目を向けた。

 それから葉月くんはゆっくりと歩いて恵の前まで戻ってきた。

 恵はなんだかよく状況が理解できずにそんな葉月くんのことをただぼんやりとした目で眺めていた。

「四ツ谷さん」

「はい」

 葉月くんはにっこりと笑う。

 それから「言いたいことがあるのなら、ちゃんと言葉にしてよ。僕は、まだ四ツ谷さんの声がきちんと届くところにいるよ」と恵に言った。

 その葉月くんの笑顔と言葉に恵はとても大きな勇気をもらった。だから、ずっと我慢していたこの言葉を葉月くん言うことができた。

「……私、葉月くんのことが好きです」

 恵は言った。

 恵の顔は真剣そのものだった。

 葉月くんはそんな恵の顔をじっと正面から、同じように真剣な顔をして見つめていた。

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