127

 恵はクリスマスの日も一生懸命に働いた。

 クリスマスの日にはお店に小春と神田くん、それからその少しあとに椛さんも彼氏さんの柏木くんと一緒に来てくれた。

 恵は仕事を終えて、それから深草さんたちと一緒に少しだけクリスマスのお祝いをケーキ屋さん『深草』の中でした。

 それから、恵と葉月くんはお店をあとにした。

 そのとき、恵は「あの、葉月くん」と葉月くんに声をかけた。

「なに?」葉月くんは言った。

「このあと、昨日みたいに一緒に途中まで帰らない?」

 恵は言った。

 その言葉には葉月くんは少し考えてから「……いいよ」と言ってくれた。

 そして二人はクリスマスイブの日に続いて、クリスマスの日の夜にも、二人で一緒に星空の下を歩いて帰ることになった。


 二人はずっと無言だった。

 葉月くんはいつも通り、恵は珍しく、ずっとずっと黙っていた。

 そして二人は昨日と同じ大きな交差点のところまでやってきた。

 恵は今日、もし葉月くんが自分と一緒に帰ってくれたら、その帰り道で葉月くんに恋の告白をするつもりだった。

 でも、結局、それは言えないままだった。

 恵は大きな交差点で立ち止まった。

 葉月くんも同じように立ち止まった。

「……それじゃあ」少しして葉月くんが言った。

「……うん」と恵は下を向いたまま、そう言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る