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「お疲れ様でした」
「おつか様です」
二人は深草さんと奥さんに挨拶をしてお店を出た。
外はすごく寒くて、もう真っ暗だったけど、空は満天の星空だった。
「綺麗だね」
恵は冬の星空を見ながらそう言った。
こんな星空の下をクリスマスイブの日に、葉月くんと一緒に歩けるなんて、まるで本当に夢のようだった。
「うん。そうだね」
葉月くんは一言だけそう言った。
それから二人は夜の街の中を歩いた。
会話はほとんど恵がしていた。
葉月くんは「うん」とか「そう」とか、相槌を打つだけで、自分から会話をほとんどしなかった。でも、それがいつもの葉月くんだった。
そのまま二人は、二人が別れる場所(つまり恵と葉月くんの帰る道が別々になる場所だ)にまで、やってきた。
そこは大きな交差点のある道の上だった。
「じゃあ、また明日も頑張ろうね、葉月くん」
そう言って恵は家に帰ろうとした。
そんな葉月くんが「ちょっといいかな?」と言って恵の足を止めた。
「なに?」
恵は笑顔になって(葉月くんから話しかけてくれて嬉しかった)葉月くんのところまで駆け寄っていった。
すると葉月くんは「僕は、……外国に行こうと思うんだ」と恵の目を見てはっきりとそう言った。
恵は最初、葉月くんがなにを言っているのか、よく理解することができなかった。
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