123

 しばらくすると、お店はだんだんと混み始めてきた。

「恵。きたよ」

「おっす」

 そんなとき、約束していた通りに山吹絵里と、それからなぜか一緒に森野忍が、恵の働いてるケーキ屋さんにケーキを買いに来てくれた。

「結構忙しそうだね」動きっぱなしの恵を見て、絵里は言う。

「まあ、クリスマスイブだからね」恵は言う。

「……それよりも、あれあれ? もしかして、二人は付き合っているのかな?」にやにやしながら恵がそう言うと、二人は、

「付き合ってないわよ」

「付き合ってねえよ」

 と、同じタイミングで恵に言った。

「じゃあ、どうして?」と恵が聞くと、二人は幼馴染であり、たまたま二人とも暇だったので、一緒にケーキを買いに来たということだった。

 この二人が本当に告白をして付き合うようになるのは、このときからだいたい一年と少しの時間が経過した、高校を卒業するときだった。

 絵里と忍はモンブランのケーキを買うと、ちょうど席が一つ空いたので、そこで紅茶を頼み、買ったばかりのケーキを食べた。

「美味しい」絵里は言った。

「でしょ?」紅茶を注ぎながら、恵は言った。

 そのモンブランのケーキは葉月くんの手作りだった。だから、美味しくないわけはないのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る